■米雇用統計で米ドル高。でも、北朝鮮のニュースで失速
先週(10月2日~)の米ドル/円やユーロ/米ドルなどの主要通貨は、方向感なく、もみ合いとなりました。
米ドル/円は10月6日(金)の米雇用統計まで、112.20円台~113.20円台と、約1円幅のレンジが続きました。
6日(金)の米雇用統計では、非農業部門雇用者が3.3万人の減少と、久しぶりに雇用者数がマイナスとなりました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)
本来は米ドル売りの材料ですが、これは、8月から9月に米国を襲ったハリケーンによる一時的な影響ということで、市場は材料視しませんでした。
【参考記事】
●今晩の米雇用統計は悲観しなくてよい!? よって、米ドル/円は75%の確率で上昇!?(10月6日、陳満咲杜)
●ハリケーンによる米国経済への影響は? 米雇用統計で米ドル下落なら買いたい!(10月2日、西原宏一&大橋ひろこ)
一方、失業率は4.2%へ改善し、平均時給は前年比で+2.9%と、こちらは市場予想よりも良い数字が出たことで、米ドルは買われ、米ドル/円は113.43円まで上昇しました。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利: 米国主要経済指標の推移)
しかし、北朝鮮が米国の西海岸に到達可能な長距離ミサイルを発射する計画があるという報道が流れ、米ドル/円は112円台へ押し戻されて先週(10月2日~)の取引が終わりました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
■米ドル/円は1~1.5円ほどの下げが買い場!
米ドル/円の日足のローソク足は、113円台はヒゲだけとなっており、上値の重い形となっています。
ただ、下がれば107円台から113円台までの上昇が速かったことによる買い遅れのオーダーや、米税制改革の実現を期待した買いもあり、底堅い展開が続いています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
本日、10月10日(火)は、北朝鮮の労働党創建記念日ということもあり、ミサイル発射の可能性が高まっています。
【参考記事】
●今週は北朝鮮情勢に絡むリスクに警戒! でも、無風で通過すれば米ドル買い再開か(10月9日、西原宏一&大橋ひろこ)
●11月のトランプ米大統領来日時は要注意!? 2度跳ね返された114円台で、ドル/円利食い(10月5日、今井雅人)
ミサイルが発射されると、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)は瞬間的には下がると思われますが、有事とならない限り、そこは押し目買いの場とされます。
最近の地政学リスクの傾向からは、米ドル/円は1~1.5円ほどの下げが買い場となっています。
■為替市場は次のテーマ待ち。考えられるのは?
主要通貨が膠着していることから、為替市場は次のテーマを待っている状況です。
今後のテーマとして考えられるのは、米国では税制改革の実現、次期FRB(米連邦準備制度理事会)議長の人事、年内利上げの有無、そして、日本は衆院選になります。
【参考記事】
●解散総選挙は「株高・円安」になりやすい! 米ドル/円、英ポンド/円は押し目買いか(9月26日、バカラ村)
日本の衆院選の投開票日は10月22日(日)ですが、それまでは、世論調査における自民党や希望の党などの支持率の動向で、日経平均や米ドル/円、クロス円に影響が出ます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
どこかの党が圧勝というような状況ではなさそうなので、22日(日)までは動きにくい状況だと思われます。
■米税制改革の実現は中長期的な米ドル高に
次期FRB議長の人事に関しては、元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏が選ばれるとタカ派との見方から米ドルが上昇し、現FRB理事のパウエル氏となれば、ハト派との見方から米ドルが下落すると思われます。
ただ、米国の金融政策の方向が変わるわけではないので、正式に議長が選ばれたときは米ドルに動きが出ますが、これは短期的な材料にされるだけだと考えています。
【参考記事】
●米ドル/円の今年のレンジはかなり狭い! 10年ごとに起こる金融ショックに警戒!?(10月3日、バカラ村)
次期FRB議長が選ばれるタイミングは、9月29日(金)にトランプ大統領が「2~3週間以内に決定する」と発言していることから、今週(10月9日~)か来週(10月16日~)には決まるのではないかと思われます。
これら、日本の衆院選やFRB議長の人事は、為替市場の大きな動きを作る材料ではないと考えています。
ですが、米税制改革に関しては、これが実現すれば、こちらは中長期的なトレンドを形成すると思われ、今後、米国株は上昇しやすく、米ドルも上昇しやすいのではないかと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 日足)
■ユーロ/米ドルは戻り売り、米ドル/円は中長期的に上昇へ
ユーロ/米ドルに関しては、スペイン・カタルーニャ自治州の独立に絡むデモで上値の重い状態が続いており、10月6日(金)の雇用統計後に米ドル高になったこともあって、1.1669ドルまで下がりました。
10月26日(木)のECB(欧州中央銀行)でテーパリング(※)の詳細が決定される可能性も出ていることから、ユーロが下落するとは思えないですが、ユーロ/米ドルはテクニカル的に1.1830ドルがレジスタンスとなっており、上値が重い形です。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
さらに、米系ファンドは11月末が決算のところも多く、満期のヘッジファンドを解約する場合は45日前までに通告しないといけないルール、いわゆる「45日ルール」の適用される期限が今週(10月9日~)となることから、今週は上値が重くなりやすいのではないかと考えています。
ユーロ/米ドルは1.1660ドルにサポートがあることから、今週(10月9日~)は1.1650ドル~1.1850ドルを想定した、戻り売りが良いと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
米ドル/円は、米長期金利が2.40%台のレジスタンスにさしかかっていることもあり、短期的には107円台からの上昇に対して調整すると考えていますが、前述した米税制改革への期待から、中長期的には上昇するのではないかと思います。
(出所:Bloomberg)
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