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ポール・サイ
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ドル・円・ユーロの明日はどっちだ!?

教えて、美子さん! 英ポンドはどう動くの?
1992年の屈辱を避ける利上げやるやる詐欺

2017年11月15日(水)12:02公開 (2017年11月15日(水)12:02更新)
ザイFX!編集部

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■2020年末までの利上げ予想はわずか2回

 焦点はむしろ、来年(2018年)以降も継続して利上げを行なうのかどうかだ。

 「同時に発表された『インフレレポート』では、『作成の基礎となった将来の金利水準は、3年後に1%水準となる』と明記されています。


 11月が0.25%の利上げで0.5%になりましたから、利上げ余地はあと0.5%。つまり、3年後までに0.25%の利上げが2回だけということになります」

英インフレレポートの内容から3年後までに0.25%の利上げが2回だけとの見方を示す松崎さん

 インフレレポートから予想される利上げ時期は、2018年第3四半期と2020年第3四半期。想定されるFRBの利上げペースと比べると、はるかに遅い……。

英政策金利の推移

■通貨安がインフレを加速させれば、利上げやるやる詐欺を!?

 「マーケットも利上げペースの遅さを失望して、英ポンドの実効レートは利上げにもかかわらず1.7%の急落となり、76ポイント台へ。

 昨年(2016年)10月には1980年以降で最低となる74割れを記録しましたが、このまま安値を更新するようだと、70ポイントまで下落する可能性もないとは言えないでしょう」

 そもそも利上げのきっかけとなったCPIの上昇は通貨安が原因だった。

英ポンドの実効為替レート

 「昨年(2016年)10月に実効レートが74ポイントを割った時のCPIは1%前後でした。それから1年、通貨安が輸入物価を押し上げたことでCPIは3%へと2%近くも急騰しています。

 今、再び通貨安が進み、CPIが上昇すればカーニーBOE総裁は厳しい立場になる。英ポンド安を食い止めるため、カーニー総裁は2014年から15年にかけて行なっていたような『利上げやるやる詐欺』を繰り返すかもしれませんね。

 『1992年の屈辱』のせいでBOEは為替介入は避けたいでしょうから」

英ポンド実効為替レート

■1日で政策金利を5%引き上げ!? 「1992年の屈辱」とは?

 「1992年の屈辱」とは、ジョージ・ソロスが仕掛けた英ポンド売りに対して、BOEが英ポンド買い介入で対抗した世紀の一戦

【参考記事】
ポンド危機:中央銀行がヘッジファンドに敗れポンドが暴落した「ブラックウェンズデー」

写真は1986年、55~56歳のころに撮影されたジョージ・ソロス氏。1992年、ソロス氏が仕掛けた英ポンド売りに対してBOEが英ポンド買い介入で対抗した世紀の一戦があった… (C)Ted Thai/Getty Images

写真は1986年、55~56歳のころに撮影されたジョージ・ソロス氏。1992年、ソロス氏が仕掛けた英ポンド売りに対してBOEが英ポンド買い介入で対抗した世紀の一戦があった (C)Ted Thai/Getty Images

 当時はバークレイズ銀行のディーリングルームで働いていた美子さん、この戦いを最前線で経験していた。

 「ソロスをはじめ、ヘッジファンドはどんどん売ってくる。それに対してBOEは介入で対抗しましたが、介入だけではどうにも太刀打ちできなくなり、とうとう利上げしか通貨防衛策がなくなってしまった。

 当時のラモント財務相がテレビに出て、『金利を引き上げます』と1時間ごとに繰り返して、1日で政策金利を5%も引き上げました

 しかし、ヘッジファンドの売りは止まず、BOEは通貨防衛を諦めざるを得なくなった。

 「マーケットから英ポンドのプライスが消えてしまったんです。2015年のスイスショックのようなことが英ポンドで起きたんです。

 この時にヘッジファンドに打ち負かされた屈辱は今でも英シティでは語り継がれていて、協調介入は別にして、BOEは介入を避けているんです」

【参考記事】
プライスが消えた…。現役インターバンクディーラーが語ったスイスショックの瞬間

 物価安定のために極端な英ポンド安を避けたいBOEに対して、今、もしヘッジファンドが英ポンド売りを仕掛けたらどうなるだろうか。

英ポンド/米ドル 日足(クリックで拡大)
英ポンド/米ドル 日足

(出所:MetaQuotes Software社のメタトレーダー)

■すでに利上げに悲鳴! 英国人が金利に敏感な理由とは?

 「1992年と同じようなことが起きないとも限りませんよね。それに景気が落ちこんで物価が上昇すれば生活だって苦しくなる。

 1992年当時も私たち、物価高と金利上昇での住宅ローン負担の重さに泣きながら暮らしていましたから…」

 日本では実感が湧きづらいけど、英国は金利上昇に敏感だそう。

 「英国は持ち家比率が高く、多くの世帯が住宅ローンを組んでいるためです。今回の利上げに対しても、すでに悲鳴が上がっているんです。これから冬、暖房費がかかるのに住宅ローン金利が高くなったら、暮らしていけない!と」

松崎さんいわく、今回のBOEの利上げに対しても、国民からすでに悲鳴が上がっているという。なんでも英国人は「借金体質」になっているようなのだが…

松崎さんいわく、今回のBOEの利上げに対しても、国民からすでに悲鳴が上がっているという。どうやら英国人は「借金体質」になっているようなのだが…

 BOEが利上げに動くのは2007年以来。低金利に浸りきっていたため、英国人は「借金体質」になっているそう。

 「低金利だからどんどん借りて、どんどん使う。その習慣をもとに戻すのは大変です。

 ただ、一部ではすでに支出引き締めの動きが見えていて、自動車の販売台数は低下しているし、BOEはクレジットカードなどの利用の引き締めへと動いています。

 個人支出の落ち込みが心配ですよね」

「欧州で懸念される『2つのドミノ』に警戒! 美子さんが注目している意外な通貨って…!?」へつづく)

(取材・文/ミドルマン・高城泰 撮影/和田佳久 編集担当/ザイFX!編集部・庄司正高) 

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