■連立暫定合意、議事録タカ派でユーロ/米ドルが高値更新
先週(1月8日~)の為替市場は動きましたね。
まずはユーロですが、ECB(欧州中央銀行)議事録の内容がタカ派寄りだったことに加えて、ドイツで連立政権樹立のメドが立ったことからユーロ高が進んでいます。
ユーロ/米ドルは、昨年(2017年)9月8日(金)につけてから4カ月間超えられなかった1.2095ドルの高値を抜けています。
(出所:Bloomberg)
ユーロは金融政策から見て上昇するだろうというのが今年(2018年)のコンセンサスですが、ドイツの政治不安があったことで伸び悩んでいました。
ECB議事録と連立政権の暫定合意がユーロ買いのきっかけを与えてくれたということでしょう。次のターゲットは200カ月移動平均線の位置する1.2400ドルから1.2500ドルあたりかなと考えています。
【参考記事】
●2018年初頭に注目したいのはユーロ/円! 米中間選挙に向けて米ドル/円は105円へ(2017年12月21日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
それとともに進んでいるのが円高。米ドル/円も111円を割ってきましたね。日銀が国債の買い入れ額を減額したことで、海外勢が出口を意識し始めたことが背景にあったようです。
(出所:Bloomberg)
■株高でも米金利上昇でも上がれなかった米ドル/円
先週(1月8日~)、中国が米国債への投資を控えるとの報道が流れたことによって米金利が急騰しましたが、米ドル/円は追随しませんでした。
年初から日経平均が1000円上がっても米ドル/円は追随しなかったことも加えて考えると、何があっても米ドル/円は上がらない。米ドル/円の上値は、相当重いですね。
【参考記事】
●米ドル/円、株や米長期金利の上昇に追随できず…。111円割れなら107円台も視野!(1月11日、西原宏一)
米ドル安と円高が共存していることで米ドル/円が下げているんですね。
今のところは昨年(2017年)末に報道されていたオープン外債(為替をヘッジせず、オープンで投資する外債)による生保系の買いが出ていますが、彼らは上値が重いようだとオーダーを引っ込めてしまう。
110円を割るようだと昨年(2017年)安値の107円台を目指す展開があるのかもしれません。
【参考記事】
●ドル/円は118円への上昇過程! 注目は…!? NZドルを反落させたネガティブ材料とは?(2017年10月26日、西原宏一)
(出所:Bloomberg)
そうなるとクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も上がりにくいですね。
今年(2018年)後半は、トランプ政権が通商問題に着手することによる円高を想定していましたが、先週(1月8日~)あたりから、NAFTA(北米自由貿易協定)関連の報道が増えてくるなど、思っていたよりも早く通商問題がテーマとなってきました。
トランプ米大統領が通商問題を持ち出せば米ドル安が意識されます。
■CRBインデックスは重要な節目に
米ドルの下落とともに金(ゴールド)が上昇し、コモディティ全体の値動きを示すCRBインデックスは何度も跳ね返されてきたレジスタンス直前まで上昇してきました。
株高とコモディティ高が並行していることを考えると、やはりインフレ傾向なんでしょうね。
(出所:Bloomberg)
そうですね。インフレだとすれば米国債が売られる動きとも合致します。日本を含め、世界景気は好調だということでしょう。
ただ、今年(2018年)の相場は、中国の米国債売却や通商問題もそうですが、政治が大きなテーマとなりそうです。
いくら金融政策が通貨高を示しても、政治は、一発でひっくり返せる力がある。国際政治学者のイアン・ブレマーも今年(2018年)の10大リスクの上位に中国やアクシデント的な紛争リスク、「テクノロジーの冷戦」など、政治がらみの項目を多く挙げています。
習近平が昨年末に9回目の暗殺未遂にショックを受けて緊急入院した、なんて報道も流れていますね。
■米ドル売り継続もIMMのユーロロングに要注意
今週(1月15日~)の戦略をまとめると、ひとつは米ドル/円の戻り売りでしょう。また、昨年(2017年)9月以来の高値を更新したユーロ/米ドルも押し目買いでついていくのがいいと思います。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
ただ、ユーロについてはIMM(国際通貨先物市場)を見るとロングがたまっていることもあり、警戒感も持っておきたいですね。
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
CRBインデックスがレジスタンスで跳ね返されるようなら、米ドル安の流れが反転する可能性も考慮に入れておきたいですね。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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