■円高トレンドの進行=米ドル/円底割れ、とは言えない
一方、クロス円のベアトレンドが、米ドル/円の「底割れ」を意味するかと聞かれると、答えに迷ってしまう。
前述のように、日本の政局不安、また、「森友問題」の進展次第で市況が大きく変わるので、油断できないだろう。
とはいえ、仮に「森友問題」がこれからさらに深刻化していくとしても、クロス円におけるベアトレンドの進行をすべて米ドル/円の「底割れ」につなげられるかというと、そうではないと思う。
もう1つ警戒すべき現象は、むしろ逆であろう。すなわち、「森友問題」がドロドロしている間に米ドル/円の「底割れ」がみられず、クロス円がベアトレンドを加速していくことだ。
もちろん、この場合は、米ドル全体切り返しの加速や、外貨安という局面であることが容易に推測される。
換言すれば、本コラムが強調してきたように、クロス円における下落トレンドの継続(円高の継続)は、従来の米ドル安・外貨高の市況から、徐々に米ドル高・外貨安(円を除き)の市況へ変化していく可能性があるから、円高トレンドの進行が続くといっても、必ずしもそれは米ドル/円の「底割れ」を意味しないのだ。
ユーロ/円をはじめ、これからの下落トレンド(円高トレンド)はむしろ外貨安が牽引していく公算が高い。
その兆しは、最近の市況に露呈している。米政権のゴタゴタや米国株の軟調があっても、ドルインデックスは割と底堅く推移しており、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルは、むしろ上昇モメンタムに欠けるようにみえる。
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 日足)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:豪ドル/米ドル 日足)
■しばらくクロス円は売り目線で臨むべき
さらに、昨日(3月15日)の米経済評論家のラリー・クドロー氏の発言が効いており、また、これからの米政策のヒントを示してくれているから、これは相場を左右する材料として見逃せない。
ラリー・クドロー氏は米国家経済会議(NEC)の次期委員長候補と見なされ、「強い米ドルは米国の国益」といった趣旨の発言を行い、「今よりもう少し強い米ドルを望む」と言い、「自分なら米ドル買い・金売りだね」とまで言い切ったのだ。
クドロー氏はすでにホワイトハウスの経済顧問になっており、トランプ大統領の側近と見なされるから、その発言には大きな影響があり、これから氏の手腕が期待されるだろう。
ラリー・クドロー氏は対中強硬派として知られ、これから対中「貿易戦争」を主導していくと想定される。なのに、氏が「強い米ドルは米国の国益」と主張していることに、市場は耳を傾けるべきだろう。けれど、ウォール街のコンセンサスは今のところ、あまり修正されていないようだ。
しかし、だからこそ、今後、ユーロ、英ポンドや豪ドルなどの外貨が、米ドルが切り返していく土台を作るのではないかと思う。そして、前述のように、クロス円の下落トレンド加速が、外貨安に一段とつながる可能性は大きい。
そのあたりの解釈はまた次回に譲るが、しばらくクロス円は売り目線で臨むべきであることを強調しておきたい。市況はいかに。
(14:00執筆)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)