■日米ともに政局不安で再び円高傾向に!
日米ともに政局不安がくすぶり、円高傾向が再度強まってきた。
トランプ米大統領による、ティラーソン米国務長官解任については、ティラーソン氏とトランプ氏が「犬猿の仲」だったことと、トランプ氏の性格からすれば、解任自体は必ずしもサプライズではないが、トランプ政権のゴタゴタに、マーケットは嫌気がさしたのも当然であった。
対して日本は、「森友問題」の進展がさらに混乱を招き、最悪の場合、安倍政権の退陣もあり得ると言われているだけに、米国より深刻かと思われる。
■安倍政権退陣なら米ドル/円は5円程度下落も!
ところで、「森友問題」で安倍政権が退陣するかどうかについて、政治評論家たちの予想はわかれているようだが、市場のコンセンサスはまだ定かではないようだ。
何しろ、円高傾向が強まってきたとはいえ、米ドル/円は3月2日(金)の安値を更新しておらず、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)もリバウンドの一服を確認した程度で、まだ安値更新を果たしていない。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
一般論として、安倍政権退陣までのリスクを織り込んでいるなら、米ドル/円はとっくに105円の節目割れを果たし、クロス円の多くも新たな安値を打診しているのではないかと思う。
その功罪はともかく、安倍政権が続いているからこそ、アベノミクスの後押しで日銀の量的緩和やマイナス金利政策が維持されてきたわけで、もしも、安倍内閣の退陣があれば、それこそ日銀政策の「出口戦略」が近いといった思惑を招くだろう。この場合、日経平均の暴落と共に大幅な円高の進行が考えられるから、日経平均は2000円程度、米ドル/円は5円程度の下落があってもおかしくなかろう。
政治の世界は、一寸先は闇と言われており、安倍内閣が安泰と言い切れない限り、日経平均暴落や円暴騰のリスクを当然警戒しておきたい。
■主要クロス円の多くが円高トレンドに復帰してきた
しかし、マーケットの値動きに照らして考えると、円高の進行があるとすれば、政局不安がもたらす要素よりも、クロス円が牽引する傾向の方がより気になり、また、ここに相場の内部構造が露呈されているのではないかと思う。
それはほかならぬ、主要クロス円の多くが一時的なリバウンドを終え、円高トレンドに復帰してきたことだ。
ユーロ/円のリバウンドは、3月13日(火)高値まで続いたが、2月高値を起点とした全下落幅の38.2%反騰位置前後に留まり、再度下落してきた構図は鮮明である。
(出所:IG証券)
英ポンド/円も3月13日(火)高値まで一時反発したが、その高値は2016年安値から引かれた元サポートラインの延長線に合致した。そして、そこから再度反落してきたことで、同ラインが今はレジスタンスになっていることを証明した。
(出所:IG証券)
豪ドル/円に至っては、3月13日(火)高値までの一時的なスピード調整(リバウンド)が、同じく1月高値を起点とした全下落幅の38.2%反騰位置に留まったほか、2017年5月高値や同11月安値で形成されたゾーンに頭を抑えられ、同水準はレジスタンスゾーンと化していたことを証左。
さらに、下のチャートに表示しているように、2017年9月高値を「ヘッド」とする「ヘッド&ショルダーズ・トップ」というフォーメーションの形成もあり得るから、ここからさらに下値余地を拡大する公算が高いだろう。
(※編集部注:「ヘッド&ショルダーズ・トップ」とはチャートのパターンの1つで、天井を示す典型的な形とされている。「三尊天井」とも呼ばれる。)
(出所:IG証券)
結論から申し上げると、筆者はクロス円の大逆転を主張してきただけに、近々安値更新ありという見方は変わらず、3月13日(火)高値までのスピード調整があったからこそ、主要クロス円における下落トレンドはより健全化されたとみる。
ゆえに、ここからより長いベア(下落)トレンドの継続を有力視しており、目先はまだまだ途中であろうと思う。
■円高トレンドの進行=米ドル/円底割れ、とは言えない
一方、クロス円のベアトレンドが、米ドル/円の「底割れ」を意味するかと聞かれると、答えに迷ってしまう。
前述のように、日本の政局不安、また、「森友問題」の進展次第で市況が大きく変わるので、油断できないだろう。
とはいえ、仮に「森友問題」がこれからさらに深刻化していくとしても、クロス円におけるベアトレンドの進行をすべて米ドル/円の「底割れ」につなげられるかというと、そうではないと思う。
もう1つ警戒すべき現象は、むしろ逆であろう。すなわち、「森友問題」がドロドロしている間に米ドル/円の「底割れ」がみられず、クロス円がベアトレンドを加速していくことだ。
もちろん、この場合は、米ドル全体切り返しの加速や、外貨安という局面であることが容易に推測される。
換言すれば、本コラムが強調してきたように、クロス円における下落トレンドの継続(円高の継続)は、従来の米ドル安・外貨高の市況から、徐々に米ドル高・外貨安(円を除き)の市況へ変化していく可能性があるから、円高トレンドの進行が続くといっても、必ずしもそれは米ドル/円の「底割れ」を意味しないのだ。
ユーロ/円をはじめ、これからの下落トレンド(円高トレンド)はむしろ外貨安が牽引していく公算が高い。
その兆しは、最近の市況に露呈している。米政権のゴタゴタや米国株の軟調があっても、ドルインデックスは割と底堅く推移しており、ユーロ/米ドルや英ポンド/米ドル、豪ドル/米ドルは、むしろ上昇モメンタムに欠けるようにみえる。

(出所:Bloomberg)

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■しばらくクロス円は売り目線で臨むべき
さらに、昨日(3月15日)の米経済評論家のラリー・クドロー氏の発言が効いており、また、これからの米政策のヒントを示してくれているから、これは相場を左右する材料として見逃せない。
ラリー・クドロー氏は米国家経済会議(NEC)の次期委員長候補と見なされ、「強い米ドルは米国の国益」といった趣旨の発言を行い、「今よりもう少し強い米ドルを望む」と言い、「自分なら米ドル買い・金売りだね」とまで言い切ったのだ。
クドロー氏はすでにホワイトハウスの経済顧問になっており、トランプ大統領の側近と見なされるから、その発言には大きな影響があり、これから氏の手腕が期待されるだろう。
ラリー・クドロー氏は対中強硬派として知られ、これから対中「貿易戦争」を主導していくと想定される。なのに、氏が「強い米ドルは米国の国益」と主張していることに、市場は耳を傾けるべきだろう。けれど、ウォール街のコンセンサスは今のところ、あまり修正されていないようだ。
しかし、だからこそ、今後、ユーロ、英ポンドや豪ドルなどの外貨が、米ドルが切り返していく土台を作るのではないかと思う。そして、前述のように、クロス円の下落トレンド加速が、外貨安に一段とつながる可能性は大きい。
そのあたりの解釈はまた次回に譲るが、しばらくクロス円は売り目線で臨むべきであることを強調しておきたい。市況はいかに。
(14:00執筆)
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