■米ドル/円が大底を付けたと考えない理由は?
3月26日(月)に、米ドル/円は104.63円まで下がりましたが、米国と中国の高官による、水面下での貿易戦争回避に向けた協議が行われているということから、リスク回避の動きがやわらぎました。
さらに、森友学園問題に関する佐川氏の証人喚問で何も出なかったこと、先週末のイースター休暇(3月30日~)前のポジション調整も重なって、米ドル/円はショートカバーで107.01円まで上昇しました。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 4時間足)
105円以下が底堅かったことや、ショートカバーもあって、一見、流れが変わったかのように思えなくもないですが、期末の動きが影響したと考えています。
市場参加者がテーマにしている貿易戦争に関しては、何も変わっていないため、米ドル/円が大底を付けたとは考えておらず、まだ長期的には下降トレンドのままだと考えています。
【参考記事】
●森友問題くすぶり、アベグジットの思惑も…。ただ、市場の最大のテーマは貿易戦争!(3月20日、バカラ村)
●本丸は貿易戦争! 北朝鮮リスクの後退は格好のポジション調整材料になっただけ!?(3月29日、今井雅人)
■米中貿易戦争はまだ続く。円安への期待も薄い
米中の水面下での協議という報道が、貿易戦争終了の端緒という見方もできなくはないですが、トランプ大統領は11月の中間選挙に向けて貿易不均衡を解消したいと考えているため、すぐ合意にはたどりつけないと思います。
中国は輸入関税の対抗策として、米国に対して豚肉などに25%の関税をかけることを検討していましたが、4月2日(月)にこれを導入したことを発表しました。中国がすぐに歩み寄ることはなく、今後も米国へ対抗していくように思います。
そのため、米国と中国の貿易戦争は、まだ続くように思います。
【参考記事】
●米中の貿易問題はチキンレースの様相へ! 米ドル安続きそうだが新年度入りには注意(3月27日、バカラ村)
日本に関しても、鉄鋼・アルミニウム製品の輸入関税の対象国とされていることから、今後も円高になりやすい環境だといえます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
4月17日(火)~18日(水)には日米首脳会談があり、貿易不均衡に関しても話し合われることになると思いますが、北朝鮮問題がメインテーマになるようで、円安への期待は薄いように思います。
■米ドル/円は株高で上昇しても長続きしない!?
昨日(4月2日)は、日本の新年度入り初日でしたが、FAANG(※)を筆頭に米国株が崩れたことから、米ドル/円も105.65円まで下がりました。
(※編集部注:「FAANG」とは、米国の巨大ネット企業群、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム、アップル、ネットフリックス、グーグル(現・アルファベット)の頭文字を取った造語。アップルを含まず「FANG」とすることもある。読み方はどちらも「ファング」)
(出所:Bloomberg)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 1時間足)
円を積極的に売るような状況ではなく、また、日銀短観における大企業・製造業の2018年度の想定為替レートが109.66円で、現在の水準は4円ほどの円高水準であることから、米ドル/円が上昇した際は、売り圧力がかかると考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドル/円 日足)
新年度入りしたことで、日経平均の上昇に連れて、米ドル/円も一時的に上昇する局面はあるかもしれませんが、それが長続きすることはないと考えています。
【参考記事】
●新年度入りでニューマネーの流入に期待! 米ドル/円はどこまで戻すか慎重に見極め(4月2日、西原宏一&大橋ひろこ)
●Facebookに続きAmazonも…! 米ハイテク株反落とトランプ政権の通商政策で円高継続(3月29日、西原宏一)
■長期の相場観は変わらず。米中間選挙に向けて下げ継続
今年(2018年)の第一四半期(1~3月)の米ドル/円の動きを見ると、1月から約9円下落しましたが、2月中旬からは1カ月半ほど、3円ほどのもみ合いが継続しました。
(出所:Bloomberg)
下げ止まってはいますが、まだ下降トレンドは継続している状態です。基本的には売り方向で見ていますが、もみ合いは今週(4月2日~)もまだ継続するのではないかと考えています。
新年度入りしましたが、4月6日(金)には米雇用統計もあり、動きにくい展開になるのではないかと考えています。
長期的な米ドル/円の相場観は変わらず、下降トレンドのままで、11月の米中間選挙に向けて、下げが続くのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円だけでなく、豪ドル/円も弱い状態が続くか
米ドル/円よりも、ユーロ/米ドルの方が膠着しています。ユーロ圏の経済指標に弱いものが続いていることもあり、上昇しにくく、そのため米ドル安にも動きにくい状況です。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足)
そのことが、米ドル/円の下げの勢いをなくしていますが、円高の動きはまだあるため、米ドル/円は反発したとしても、そこは売り場になるのではないかと考えています。
また、米中貿易戦争もあって、米ドル/円だけでなく、豪ドル/円も弱い状態が続くのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)