■米ドル/円の下値不安は一時的に解消
前回のコラムでご紹介しましたが、4月13日(金)に米財務省が公表した為替報告書では、円の実質実効レートが、過去20年間の平均と比較すると25%の円安水準で、また、日米間の貿易不均衡を懸念していることが指摘されていました。
【参考記事】
●108円を超えるか超えないかが米ドル/円の運命の分かれ道もまだ下落の可能性高い(4月17日、バカラ村)
これもあって、4月17日(火)~18日(水)に開催された日米首脳会談が注目され、円高になるリスクが高い状態でした。
ただ、結果は会談に目立った内容はなく、無難に終わりました。
今後に関しては、「自由で公正かつ相互的な貿易取引のための協議」を続けることで合意しました。米国が2国間での交渉を望んでいることもあり、今後も、貿易不均衡の是正に向けた協議が続くことになります。
日米首脳会談は目立った内容もなく無難に終了した。しかし、米国が2国間での交渉を望んでいることもあり、今後も貿易不均衡の是正に向けた協議が続くことになりそうだ… (C)Joe Raedle/Getty Images
長期的には、まだ円高になるリスクが残ったままですが、目先は、貿易不均衡問題での円高圧力が軽減していることや、4月21日(土)に北朝鮮が「核実験、大陸間弾道ミサイル発射の中止」と発表したこともあり、米ドル/円は下値不安が一時的に解消されています。
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■買収決まれば、英ポンド/円はかなりの上昇に!?
武田薬品が、6兆円を越える金額でアイルランドの製薬会社シャイアーを買収するという報道が、今月(4月)に入ってから続いています。
4月19日(木)に、シャイアー側が買収金額を理由に提案を拒否したことで、英ポンド/円は下落。さらに、カーニーBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])総裁が、5月の利上げに関して曖昧な発言をしたことも加わり、英ポンド/円は一時、151円割れまで下落しました。
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武田薬品の買収案件は、まだ不透明な状態ですが、4月25日(水)をメドに、正式な決定を公表する予定になっています。
2016年にソフトバンクが英国の半導体設計会社を3.3兆円規模で買収しましたが、そのときの英ポンド/円の上昇は顕著でした。もし、武田薬品が買収を決定するとなると、今回はそれ以上の金額になるため、英ポンド/円は、かなりの上昇が期待できます。
【参考記事】
●孫社長の3.3兆円買収でトレンドが反転!? 米ドル/円は日銀会合に向けて110円へ(2016年7月21日、西原宏一)
これは英ポンド/円だけでなく、為替市場全体に影響が出てくると思われ、米ドル/円や他のクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も上昇するのではないかと思います。
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■米ドル/円は想定レンジの上限へ。その後は再度下落を予想
日米首脳会談が終わり、材料が乏しい展開となっているときに、米長期金利が2.99%台まで上昇してきたこともあり、これが米ドル高に影響しています。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円は、4月23日(月)に108.00円のレジスタンスも越えてきており、上値をトライする動きとなっています。
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ただ、貿易不均衡の是正に向けて、今後も米国から圧力がかかること、米長期金利が上昇しすぎると、株式市場にとってはマイナスであること、本邦輸出勢の売りもあることから、上昇が続くようにも思えないです。
以前のコラムでご紹介したように、米ドル/円の4~5月のレンジ幅は105~110円を予想しており、今は、このレンジ上限に向かって上昇している段階だと考えています。
【参考記事】
●膠着相場が続く中、典型的な教科書通りのヘッド&ショルダーを形成した通貨ペア発見(4月10日、バカラ村)
その後は、11月の米中間選挙に向かって、季節性もあり、米ドル/円は再度、下降トレンドになるのではないかと考えています。
■ユーロ/米ドルはもみ合いを抜けて1.20ドル割れ!?
ユーロ/米ドルは、1.2150~1.2550ドルのレンジが、3カ月以上続いています。
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今週(4月23日~)は、26日(木)にECB(欧州中央銀行)理事会があります。金融政策は現状維持だと考えていますが、ドラギ総裁の会見が注目されます。
直近のユーロ圏の経済指標には弱いものが多く、貿易戦争への懸念もあるため、ドラギ総裁からはユーロを上昇させるような発言よりは、下がる発言が出るのではないかと考えています。
メルマガ「バカラ村のFXトレード日報!」で配信しましたが、4月18日(水)にドルストレート(米ドルが絡んだ通貨ペアのこと)では、米ドル高になる兆しが出ていました。
その翌日(19日)に、ユーロ/米ドルや豪ドル/米ドルなどは、米ドル高へと推移してきました。ユーロ/米ドルで売りポジションを持ち、現在はレンジ下限まで下がってきました。
ユーロ/米ドルは、まだもみ合いの中で推移しており、通常なら手仕舞いしてもいいような位置ですが、ここを抜けて1.20ドル台まで下がる可能性があるのではないかと考えています。
(出所:Bloomberg)
もみ合いが長かった分、ブレイクすると1.20ドルを下抜ける可能性もあります。しかし、ECBは出口に向かっており、米国は米ドル安政策をとっているということもあって、長期的にはユーロ/米ドルは上昇するのではないかと考えています。
ただ、今はレンジ下限をトライする動きとなっています。
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