■ドルインデックスが200日線を上抜けし、米ドル安局面終焉
米ドル全面高が続いている。ドルインデックスは200日移動平均線(200日線)をブレイクしたが、これは昨年(2017年)4月以来初めてのことで、昨年(2017年)年初から一貫して展開された米ドル安局面の終焉を示している上、4月20日(金)に本コラムが指摘したように、今回の米ドル高はホンモノであることが証左されている。
【参考記事】
●このままなら民主主義は全体主義に敗北の運命!? ドルは既に底打ったか底打ちが近い(2018年4月20日、陳満咲杜)
(出所:IG証券)
■ユーロ/米ドルは200日線割れで、ユーロ高終焉
対極として位置づけられるユーロ/米ドルの200日線割れも昨年(2017年)4月以来の出来事であり、これが2017年4月安値から引かれたメインサポートラインを割り込んだのに続いて起こったことから考えて、ユーロ高はすでに終焉、ここからはしばらく下落していくだろうと推測される。
(出所:IG証券)
■英ポンド/米ドルのダブル・トップ完成が、米ドル底打ちを証左
「米ドル全面高」という言い方のとおり、米ドルの反騰は、対円、対英ポンド、対豪ドルなど、主要外貨に対して、すべて確認されており、大きなポイントとなっている。
対円で110円の心理的大台に接近したほか、対英ポンドや対豪ドルの「ダブル・トップ」というフォーメーションの形成や下放れの確認は印象的で、また、重要なサインを灯していると思う。
英ポンド/米ドルも同じく、まずは2017年3月安値から引かれたメインサポートラインを割り込み、目先200日線の割り込みをもって英ポンド高の終焉、また、これから反落変動が継続することを示している。
(出所:IG証券)
日足における「ダブル・トップ」のパターンが、3月安値の割り込みで確認された以上、ごくシンプルな見方でこれから「倍返し」目標の1.3ドルの大台打診にトライしやすいだろう。
もちろん目先を含め、途中ではスピード調整があると思うが、メイントレンドが確認された以上、戻りがあればむしろ売りの好機と捉えるべきであろう。
ちなみに、英ポンドは主要外貨のうち、4月に入って高値をいったん更新した通貨なので、4月20日(金)コラムの指摘どおり、英ポンド/米ドルの「ダブル・トップ」の構造、そして下放れを果たしたことは、米ドル高の可能性を証左、米ドルの底打ちがすでに完了したと言える根拠でもある。
【参考記事】
●このままなら民主主義は全体主義に敗北の運命!? ドルは既に底打ったか底打ちが近い(2018年4月20日、陳満咲杜)
■最も弱かったのは豪ドル、ここから大幅に下落か
主要外貨のうち、最も弱かったのは豪ドルである。今年(2018年)1月高値と昨年(2017年)9月高値で形成された大型「ダブル・トップ」は、昨年(2017年)12月安値の割り込みをもって確立され、ここから大幅に下落余地を拡大するだろう。
(出所:IG証券)
途中のリバウンドは、4月高値を形成したが、これが200日線に制限されていたことに注目すれば、ここからベア(下落)トレンドを修正するにはハードルがかなり高いと言える。
もちろん、足元では200日線とかなり離れているから、近々いったんスピード調整(切り返し)があってもおかしくないが、米ドル全面高の基調が確認された以上、戻りがあれば、戻り売りの好機と見なすのも自然な成り行きだ。
■「米長期金利3%超えで米国株下落」は都市伝説!?
目先の米ドル全面高、そしてまた、これから米ドル全面高が継続していく理由について、テクニカルのみでなく、ファンダメンタルズ上の根拠も重要であろう。米金利高に連動といった解釈は間違いではないが、歴史を調べればわかるように、米金利高=米ドル高といった構図は存在しない。米ドルの高安は、基軸通貨であるだけに、諸要素が総合的に作用するため、単純に米金利の高安で片付けられないから、一概には言えないのが真実である。
同じ視点では、米長期金利(米10年物国債の利回り)が3%を超えると米国株が落ちるといった「俗説」にもご用心。このような大雑把な言い方は、特定の市況を通説のように仕上げた「都市伝説」とも言えるから、あまり流されない方がよいかと思う。
とはいえ、最近の米ドルの反騰が、米金利の上昇を反映しているのは間違いない。ただし、4月初頭まで米金利の上昇とダイバージェンス的な値動きを見せた米ドルが、やっと「通常」の関係に戻っただけで、あまり大げさに取り上げなくてもよいかとも思う。
■米中貿易戦争の激化も米ドル高につながったのではないか
最近の米ドル高について、見逃しがちなファンダメンタルズは米中貿易戦争の行方だ。おもしろいのは、米ドルが落ちているうちは、米中貿易摩擦拡大の懸念云々で米ドル安と解釈されていたが、米ドルが上がってくると、まるで米中貿易摩擦がなくなったかのように、それが解釈の根拠として語られなくなってきたことだ。
しかし、現状はむしろ逆だ。米中貿易戦争は緩和どころか、むしろ激化している。象徴的な出来事は、中国通信機器大手ZTEに対する米制裁であった。
結論から申し上げると、今回の米制裁によってマーケットは以下のことを確信し、トランプ政権の「権威」に再び敬意を払うことになった結果、米ドル高になったのである。
まず、マーケットは対中競争に勝つというトランプ政権の本気を感じ、米中貿易戦争の本質に気づいている。
次に、米中戦争における米国の敗北といった意見が多い中、中国ZTE社への制裁によって中国のもろさが浮き彫りになり、米国の圧倒的な優位性が市場関係者に再び認識されたと思う。
最後に、対中競争における優位性の結果、米ドルは割高ではなく、むしろ割安なのでは…と市場が気づき、米ドルのショートポジションを買い戻して、米ドル高のシナリオに傾くようになっているとみる。
このあたりの詳説は、また次回に譲らなければならないが、今回の米ドル高はホンモノで、また、雄大なトレンドを作っていくから、足元まだまだ初歩段階にあることを強調しておきたい。
人民元は管理されている通貨なので論外だが、過大評価されすぎたユーロの落ち目は明らかで、これからユーロの長期下落、また、今度こそ「パリティ」割れを覚悟しておきたい。

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(14:00執筆)
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