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今井雅人の「どうする? どうなる? 日本経済、世界経済」

政治リスク早期収束で注目は金融政策へ!
ECBテーパリング開始ならユーロ/円に妙味

2018年06月07日(木)17:12公開 (2018年06月07日(木)17:12更新)
今井雅人

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■懸念材料のほとんどが短期間で解決

前回のコラムで、さまざまな政治的な懸念材料を列挙しましたが、そのほとんどが短期間で解決してしまいました。

【参考記事】
5つの政治的リスク噴出でリスクオフに! でも、大きな円高局面は円売りチャンス!?(5月31日、今井雅人)

 一時は中止かと心配された米朝首脳会談ですが、紆余曲折がありながらも、予定どおり6月12日(火)に、シンガポールで開催される見込みとなりました。

 会談の中身は、まだ不明ではありますが、トランプ米大統領も即時の非核化までは求めないと述べており、一応の合意をみることは確実になってきています。

■市場はリスクオフからリスクオンへ転換!

欧州の政治混乱も、ユーロの急落などを招きましたが、こちらもすぐに収束しました

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:ユーロ/米ドル 日足

 イタリアでは、何とか連立政権が成立し、事なきを得ました。スペインでは、内閣不信任が可決されたものの、政権交代だけということで、こちらも落ち着きを見せています。

【参考記事】
ユーロ急落の主犯は日本の機関投資家? 米欧貿易戦争の激化による円高に警戒!(6月4日、西原宏一&大橋ひろこ)

 トランプ米大統領が、中国や日本に対して、厳しい通商交渉の姿勢を見せているものの、NAFTA(北米自由貿易協定)や米韓FTA(自由貿易協定)の見直し交渉を見ても、トランプ大統領自身が、どこかに落としどころを持って交渉を仕掛けてきている様子も見られます。

 そのため、今後、致命的な決裂は避けられる可能性は十分あると、市場も認識してきているようです。

 これらの政治リスクが意外に早く一服したため、市場も一時のリスクオフの状態から、リスクオンの状態に転換してきています。

世界の通貨VS円 日足
世界の通貨VS円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足

NYダウ 日足
NYダウ 日足

(出所:Bloomberg)

■FOMCの利上げは中期的な米ドル高要因!?

 その上で注目したいのが、各国の金融政策です。

 米国では、6月12日(火)、13日(水)の日程で、FOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されますが、今回は、0.25%の利上げが確実視されています。

【参考記事】
FOMCで利上げした後はドル/円が下がりやすい。ユーロ/ドルは下ヒゲ長く反発示唆(6月5日、バカラ村)

 市場への短期的な影響はないという気もしますが、米国の短期金利が上昇するということは、やはり、中期的な米ドル高の流れを作るのではないかと考えています。

米2年物国債利回り(左軸)とドルインデックス(右軸)の推移
米2年物国債利回り(左軸)とドルインデックス(右軸)の推移

(出所:Bloomberg)

■新興国通貨に手を出すのはまだNG!

心配なのは、新興国通貨です。

 米国の短期金利が上昇すると、新興国から米国への資金シフトをもたらすと言われています。

 実際に、トルコリラなどは、非常に不安的な動きとなってきました。

トルコリラ/円 日足
トルコリラ/円 日足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足

新興国通貨には、まだ手を出さない方がいいでしょう。

【参考記事】
利上げしたのにまた別の金利を利上げ!? 3種類?4種類? 複雑なトルコ政策金利を解説
【謎】トルコリラが半年間に2回も朝7時すぎ~7時10分すぎに急落したのはなぜか?

■ECBの政策転換は間近!?

 もう1つの注目材料が、ECB(欧州中央銀行)の定例理事会です。

 6月6日(水)に、ECBのチーフエコノミストであるプラート専務理事は、「債券購入を停止する時期を巡る政策委員での最初の公式協議が、目前に迫ってきている」との認識を示しました。

 つまり、2015年以降、継続してきた、債券購入という量的緩和策を終了していくプロセスが始まるということを意味しています。

 いよいよ、FRB(米連邦準備制度理事会)に続いて、ECBも政策を転換することになります。ちなみに、次回のECB理事会は、6月14日(木)に開催される予定です。 

■テーパリング決定ならユーロ/円に買い妙味

 ECB理事会で、正式にテーパリング(※)の開始が決定されれば、ユーロに上昇圧力がかかってくるでしょう。

(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)

 そうなると、難しいのはユーロ/米ドルです。ユーロの上昇圧力と米ドル高圧力が、綱引きを起こす可能性があります。

 どちらかと言えば、ECBの決定の方が、インパクトは大きいと思われるので、多少のユーロ高にはなるかもしれません

ユーロ/米ドル 日足
ユーロ/米ドル 日足

(出所:Bloomberg)

 また、米ドル/円は、緩やかな上昇をイメージしていて、当面は、111円程度がターゲットとなるのではないでしょうか。

米ドル/円 日足
米ドル/円 日足

(出所:Bloomberg)

 個人的には、ユーロ/円を買ってみるのが、おもしろいのではないかと考えています。

ユーロ/円 日足
ユーロ/円 日足

(出所:Bloomberg)


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松崎美子