■仮想通貨業界への規制をホリエモンはどう見ているか?
ここで話は変わって、仮想通貨の規制の話題。
2018年6月22日(金)、金融庁は業界最大手のビットフライヤーを含む仮想通貨交換業者6社に対し、業務改善命令を出し、仮想通貨界にはかなりの動揺が広がった。
【参考記事】
●業界激震! bitFlyerなど6社に業務改善命令。ザイFX!が発見した6社の共通点とは?
しかし、これについて堀江さんは「結構、楽観視している」と話していた。FX業界でかつて起こったことと同じだというのだ。
堀江さんはかつてライブドア証券でライブドアFXを運営しており、FX業界の動きを身をもって感じていた人でもあった。
「FX業界もそうでしたが、業界の黎明期にはこういうことが乱発されるんですよ。その頃のFX業界では業務改善命令を受ける会社はたくさんあった。
今の仮想通貨取引所もそれと似たような感じなんじゃないかなと。だから、そんなに気にする必要はないと思う」
黎明期のFX業界では、FX会社が金融庁の指導を受けるようなことがよくあったが、そういったことを乗り越え、FX業界はこれまで大きく発展してきた。仮想通貨業界もそうなるだろう、というのが堀江さんの見立てだ。
ただ、平野さんは中期的、長期的には気にしていないとしつつも、金融当局の規制について、次のような問題があると話していた。
「直近で自分たちも問題だなといろんな場所で言っているのが、暗号通貨って金融商品的な側面もあるんですが、その一方で、ただの金融商品じゃないじゃないですか。
暗号通貨を使ったアプリケーションがいろいろあるわけですね。そして、アプリ-ケーションの中で暗号通貨をちょっとでも交換させたら交換業の登録が必要になっちゃうんですね。
つまり、仮想通貨取引所を運営する金融のプレイヤーとアプリを提供するプレイヤーが同じ登録を要求されている。それはアプリを提供するプレイヤーにとってはコストが重すぎることで、開発が止まっている面があるんです」

古参のビットコイナーとして有名な平野淳也氏。金融当局の規制について、仮想通貨取引所を運営する業者と仮想通貨関連のアプリを開発する業者に、同じ仮想通貨交換業登録が要求されている現状に疑問を投げかける
けれど、これに対し、堀江さんは「そういうことはやってほしくない」というのが金融庁の考えではないかと話していた。
確かに当局の規制によって、仮想通貨の交換を絡めたアプリの開発が自由にできなくなっているのならば残念な感じがする。しかし、アプリにちょっとした仮想通貨交換機能がついていたとして、いくらまでだったらOKなどと線引きするのは難しそうにも思える。仮想通貨交換業の抜け穴ができてしまったら、金融当局としてもまずいのだろう。
■人類がもっとも信じている共同幻想、それが通貨だ
「このセミナーに来るなら、先にこの本を読めよ」
とセミナーの中で堀江さんが言っていたのが『サピエンス全史』(ユヴァル・ノア・ハラリ著、河出書房新社)。この本を読むと、仮想通貨がなぜ成立しているのか、という理由がわかるという。

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この本の中から、仮想通貨に関係する部分をかいつまんで堀江さんが説明してくれた。
「ホモ・サピエンス・サピエンス(現在の人類)だけが持っているのが『共同幻想を信じることができる』こと。
そして、僕らは当たり前のように国家を信じているが、世界で一番信じられている共同幻想は国家ではない。
たとえば、インドネシアの名もなき島に行って、『あなた、インドネシア人ですよね?』と言っても、国民国家とは何かという教育を受けていなければ、ピンとこないでしょう。
それより、世界中のどこへ行ってもあるもの、信じられているものは『通貨』なんです。通貨は信用されてナンボのもの。通貨は人気投票なんです。
よく、ビットコインはあまり決済に使えないよね、という人がいるけれど、一番重要なのは流動性。僕は取引高が増えるほどよいと思っています」
1万円札には複雑な絵柄が描かれているものの、所詮は紙切れにすぎない。しかし、それは1万円の価値を持っており、そのことを我々は通常、いちいち疑うことがない。
しかし、仮想通貨が存在することで、我々が普段意識することがない共同幻想が浮き彫りになってくる。そんな仮想通貨の持つおもしろさを堀江さんはわかりやすく解説してくれたのだった。
■「ビットコインはあまり決済に使えない」への反論
さらに流動性に関しては、「昔から投機はあった」と堀江さんの話はなんと江戸時代の大岡越前守にまで発展。
米の先物取引を行っていた堂島米会所に関して、日計り取引(デイトレード)には幕府内にも批判的な向きが多かったが、大岡越前守が「流動性が大切だから」ということで、それを抑え込んだということがあったのだそうだ。

まさか、大岡越前守の話まで出てくるなんて! その昔、幕府内では、堂島米会所で行われていたデイトレードに対して否定的な意見もあったのだが、「流動性は大事!」と大岡越前守が、そうした反対意見を抑え込んだことがあったそうな
また、「ビットコインはあまり決済に使えない」ということに関しては、大石さんからこんな興味深い意見が…。
「アルトコインを買うときにビットコインはよく使われている。ビットコインは仮想通貨界の中では『通貨』として機能し、すごく使われているんです。実需があるんです。
僕は“パラレルワールド”と言っているんですが、今までの世界の中に仮想通貨があると考えるからわからなくなる。
今までの経済圏とはまったく違うところに、ゼロから並行して仮想通貨の経済圏ができている。パラレルワールドになっているんです。そして、そちらの新しい経済圏がすごく大きくなっているのが今の状況なんです」
この大石さんの“仮想通貨パラレルワールド論”には堀江さんも賛同していた。
(「ホリエモン仮想通貨祭(3) カギはあぶく銭&QRコード決済。堀江貴文の仮想通貨大予言とは?」へつづく)
(編集担当:向井友代[ザイFX!副編集長] 撮影:和田佳久)
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