■利上げできること自体が力強い経済成長の証
もっとも、米長期金利の上昇は当然である。なにしろ、最近、米経済指標の好調が目立つし、今晩(10月5日)発表される雇用統計も、再度、米景気の堅調さを証左する数字になるかと思われる。
ゆえに、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長は「中立金利水準を超えて利上げを進める可能性がある」と示唆し、米ドル高について特に懸念していない態度も表明した。
要するに、米利上げ自体が米景気堅調の結果であり、米経済成長のあとを追う形なら、利上げサイクルは当面続くものと認識すべきだ。
本コラムでも繰り返し指摘してきたように、米国株は大型ブルラリーの途中であり、本格的な頭打ち、また、下落に転じてくる局面があっても、当面先であろうと思う。
【参考記事】
●マスコミが「次回の大暴落は必至」と断言している間は安泰。円安・株高はまだ進む!(2018年9月28日、陳満咲杜)
●米ドル/円の押し目買いスタンスは不変! ユーロ/米ドルは1.18ドル台後半にトライも!?(2018年9月14日、陳満咲杜)
●トランプならやりかねない。米政府がドル売りの為替介入!? その時はドル買いの好機だ!(2018年8月31日、陳満咲杜)
●米国株の強気相場史上最長がリスクオンを裏付け! 「8月の円高」はもう終わったか(2018年8月24日、陳満咲杜)
(出所:Bloomberg)
なぜなら、利上げできること自体が経済成長の力強さの証であり、米利上げ途上における米国株の基調転換は稀で、利上げサイクルの終盤に入ってこないと米国株の本格的な調整が発生しにくいから、目先はこのような観測が浮上する環境ではない。
■米国株はスピード調整しても本格的な頭打ちにはなりにくい
足元は、利上げサイクル自体がどれぐらい延びるか、読めない段階なので、米国株のスピード調整があっても、米国株の本格的な頭打ちにはなりにくい。
したがって、米ドル全体がすでにブルトレンドへ復帰したにも関わらず、クロス円全般における円の全面高が確認されないのも、当然の結果だと思われる。
米国株の波乱があっても、ブルラリー途中のスピード調整と位置づけるなら本格的なリスクオフになりにくく、円全面高にもなれない。
もちろん、ここでも因果関係が必ずしも明白ではないことに注意していただきたい。換言すれば、リスクオフではないから円全面高になれないと言える一方、円全面高ではないからリスクオフになれないとも言える。
市場の内部構造自体がいわゆるファンダメンタルズ上の可能性を決定してしまうから、相場の理は往々にして単純に片づけられないものである。
■今後の相場の見通しもリスクオン・オフの視点で測れる
これからの相場の見通しは、やはりリスクオン・オフの視点抜きでは語れない。前述のように、我々が円全面高の有無をもってリスクオン・オフの有無を観察できるとするなら、これからも通用するだろう。
米利上げサイクルの途中において、利上げ自体がリスクオンの要素であることを認識できれば、「円全面高のリスクは小さい。また、そのリスクがあっても限定的で、さらに一時的な円高があっても、いずれ円安の方向に振れる」といった大まかな結論が得られるだろう。
■ユーロ/円は弱くても大型の保ち合いを維持できるだろう
となると、前回指摘していたように、ユーロ/米ドルのベアトレンドへの復帰があっても、ユーロ/円がベアトレンドに復帰するとは限らない。米ドル/円の上昇とユーロ/米ドルの下落は、方向が違うがスピードやモメンタムの差でユーロ/円の市況を決定するだろう。
【参考記事】
●日経平均は年内の2万5000円打診が確実! ドル/円は115.65円めざす? 一方クロス円は…(陳満咲杜、2018年9月28日)
米ドル/円の上昇モメンタムがユーロ/米ドルの下落モメンタムより強ければ、ユーロ/円も上昇するが、逆の場合はユーロ/円は反落するだろう。が、米ドル/円のブルトレンドがすでに確認された以上、仮に反落する場合でもベアトレンドへの復帰を回避できるから、ユーロ/円は弱くても大型の保ち合い、という局面を維持できるだろう。
(出所:IG証券)
ここでも、因果関係が必ずしも明白ではないことを再度強調しておきたい。
ユーロ/円自体がインターバンクにおいて直接取引されるから、ユーロ/円の値動きは、単純に米ドル/円とユーロ/米ドルの値動きで決定されるのではなく、両主要通貨ペアの値動きにも影響を及ぼす。だから、リスクオン・オフを測る上で、これからユーロ/円の値動きがより重要になってくるだろう。
筆者は、ユーロ/円はこれから135円の節目打診があり得ると思っているから、引き続きリスクオンの継続を有力視し、メイントレンドとして株高・円安の見通しは不変。このあたりの検証はまた次回、市況はいかに。
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