先週の金曜日はアメリカの雇用統計だった。すでに米長期金利が上昇してきており、それが市場のリスク負担を増大させるものとの懸念が先行していた。あまり雇用関連のデータが良いようだったら、それはさらなる金利上昇を促し、それが企業コストの増大となる。米国株は下落に向かい、リスクオフとなるのである。
雇用統計の結果は、就業者数が13万人台の増加となって、かなり市場予想を下回った。まずはこれに市場が反応し、ドル安、株安が進んだ。しかし賃金上昇はプラス0.3%で予想と同じであり、インフレは心配いらず。そして失業率も3.7%となって、これは予想よりも良かった。
相場はすぐに反転し、ドル高・株高の様相。どっちつかずの結果に出てしまった雇用統計に対しても、注目されていた長期金利が再び上昇を始めると、それが市場のリスク回避を誘った。リスクオフの成分が余計に出てきて、ドル円やユーロ円は垂れ込んできた。
昨日は中国市場で1週間ぶりのマーケットが開いたので、その間の1週間分のリスクオフが大きく表に現われた。開始直後から中国株は大幅安に。これは海外で取引されている中国株の先物などを見ていれば当たり前のことだが、現物株で大幅安となるとセンチメントが悪化せざるを得ない。
問題は週末に行った金融緩和の手段の一つである預金準備率の引き下げが、まったく効かなかったことだ。今さらリザーブ率を1%ポイント下げても、焼け石に水なのは明らかである。
実際にはこれがどのくらいまでアナウンスメント効果があるかということくらいしか期待されていなかったのも事実だ。ドル円はアジア時間で114円台乗せを狙ったが、中国株が戻っていかないことが判明すると、すぐに売りものに押される形となった。
また欧州時間ではイタリア問題が紛糾。EU側とイタリア政府との間で、財政問題のあり方について欧州が続いたのだ。それで欧州株も下落。アメリカでも米中の外相会談では非難合戦に終始したことによって、市場には不安材料は拭い去れなかった。
米国株が下げ幅を拡大する中、マーケット全体のリスク許容度も低下したようで、クロス円が安い。ドル円もアジア時間からの重さを引きづってズルズルと113円台の前半まで押された。夜中に米中外相会談では非難の応酬のみだったということも報じられて、いっそうのリスクオフ。それでドル円も112円台に突入している。
本日は日米ともに連休明けなのだが、市場の材料がほとんどない。だから相場を左右するのは、昨日と同じでリスクがどうなるかだろう。イタリア問題はまだ紛糾しているようだし、トルコもサウジのジャーナリストの殺害が問題を複雑にしそうだ。首脳クラスの発言には要注意だろう。
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