■市場心理の変化に応じた値動きを見せたのは株式市場
さらに注目すべきなのは、米早期利上げ打ち止め観測が強まる今、市場における値動き自体が示すメッセージだ。
米早期利上げ打ち止め観測が広がっている中、執筆中の現時点では、ドルインデックスはなお96後半に位置し、米ドル/円も113円台半ばをキープしているから、市場センチメントの急変に応じた為替レートの変動が見られたとは言い切れない。
(出所:Bloomberg)
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市場センチメントの変化に応じた値動きを見せたのは、株式市場だ。NYダウの2万5500ドル手前への急伸、また、日経平均の200日移動平均線(=2万2300円)乗せがその表れであるが、株式市場の回復自体をリスクオンの流れの結果と見なす場合、それは米ドル/円にとってむしろ支援材料になることも見逃せない。
(出所:Bloomberg)
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つまるところ、相場は自らの「ニーズ」をもって米利上げ見通しを解釈してきた側面が大きく、異なる市場において、異なる値動きを形成していくのも納得できるほどだ。
■為替市場の値動きが限定的なのは外貨サイドの事情も大きい
為替市場における限定的な値動きは、相場自体の構造を示唆する上、外貨サイドの事情による側面も大きいかと思われる。
円は緩和政策の当面維持、ユーロは最近のイタリア財政問題でも見られた構造上の欠点、英ポンドはEU(欧州連合)離脱のハードランディング懸念というように、主要外貨サイドがそれぞれの「マイナス材料」を抱え、米早期利上げ打ち止め観測が強まっても素直に反応しきれない可能性が大きい。
現時点で一番警戒されるのは英国のEU離脱問題だろう。英中銀総裁が表明したように、仮にハードランディングが発生した場合、英ポンドは25%の急落があってもおかしくないから、情勢を楽観視できる段階にはほど遠い。
ゆえに、仮に米早期利上げ打ち止めがあっても、たちまち外貨の上昇局面になるとは限らない。もっとも前述のように、米早期利上げ打ち止め観測自体が先走った憶測にすぎず、米ドル高のトレンドが安易に修正されない公算も高い。
これから米早期利上げ打ち止め観測が一段と強まってもおかしくないが、その「恩恵」は引き続き株式市場にて確認されやすく、為替市場において同材料は「二の次」であろう。
米ドル全体の修正があっても限定的で、米ドル/円に限っては、2018年年内115円の節目トライありという見方を、なお維持しておきたい。市況はいかに。
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