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エミン・ユルマズの「トルコリラ相場の明日は天国か? 地獄か?」

トランプ大統領の過激ツイートにも反応薄。
エルドアン大統領はトルコリラ安を超警戒!?

2019年01月16日(水)14:38公開 (2019年01月16日(水)14:38更新)
エミン・ユルマズ

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■今週もシリア情勢が大きな関心事に

前回のコラムでシリア問題について書きましたが、やはり今週(1月14日~)もシリア情勢は、大きな関心事になっています。

【参考記事】
2019年年初からシリア問題が大きな話題! トルコリラ/円は乱高下…再び売りが優勢に(1月9日、エミン・ユルマズ)

 トランプ大統領は、1月13日(日)に、「米軍はシリアから撤退するけど、トルコ軍がクルドを攻めたらトルコを経済的に破滅させる。クルドもトルコを刺激すべきではない」という内容のツイートをしました。

 私はこのツイートを見て、自身のツイッターで、「トルコ政府の反応にもよるけど、基本的にこれはトルコリラ安要因である」というコメントをしました。

 その直後に、トルコのカルン大統領補佐官、翌日(1月14日)にチャウショール外相から厳しい内容の返事がありましたが、肝心のエルドアン大統領からはコメントがありませんでした

 トルコ外務省が早急に首脳同士の電話会談をセットしたのが伝わり、状況が落ち着きました。

■3月の地方選挙を前にトルコリラ安を警戒

 今回、事態が早く収束した理由は2つあります。まず、トルコ政府は3月に地方選挙を控える中、トルコリラ安を相当警戒していると推測されます。

トルコリラ/円 週足
トルコリラ/円 週足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 週足

 通常でしたら、トランプ大統領の脅迫と言われてもおかしくない内容のツイートに対して、エルドアン大統領からも同じ厳しさの返事が来て、それで国内の世論も味方にしますが、今回、国内のポイント稼ぎよりもトルコリラ安の方が重要であると判断しています。

トランプ大統領のツイートに対してコメントを出さなかったエルドアン大統領。これは国内でのポイント稼ぎよりも、トルコリラ安を警戒したというのがエミンさんの見解だ。(C)Anadolu Agency/Getty Images

トランプ大統領のツイートに対してコメントを出さなかったエルドアン大統領。これは国内でのポイント稼ぎよりも、トルコリラ安を重要視したというのがエミンさんの見解だ (C)Anadolu Agency/Getty Images

 トルコは経常赤字が改善傾向にあり、インフレ上昇圧力も弱まっています。牧師解放で、せっかく改善していた両国の関係が再び悪化して、トルコリラが大きく売られることだけは避けたいです。

【参考記事】
経常収支の大幅改善はトルコリラに追い風! でも、22円超えが難しいと見るワケは…!?(2018年12月12日、エミン・ユルマズ)

 2つ目の理由ですが、表面上の言葉とは裏腹に、実はトランプ大統領のツイートはトルコに好意的ではないかとの話です。

 トルコの外務省に詳しい現地の友人によれば、トルコ外務省はこのツイートを見て大喜びだったそうです。

 その理由は、トランプ大統領が提案している20マイルの安全地帯の話です。これは、トルコはシリアの北部に国境から20マイルのバッファーゾーンを設けて、シリアのクルド勢力とトルコのクルド武装組織を引き離すことを意味しています。

 トルコはずっとこれを提案していたが、今まで米国に受け入れてもらえませんでした。

トランプ大統領が安全地帯の設置を認めたことは、トルコにとって願ってもない話です。

■トルコリラ/円は20円の大台を割れたまま…

 トルコリラの方ですが、トランプ大統領のツイートを受けて一時的に下がったものの、両国首脳の電話会談のニュースが伝わると、再び前の位置に戻りました。

 しかし、依然として対円で20円を割ったままで力強い上昇は見られません。

トルコリラ/円 4時間足
トルコリラ/円 4時間足

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足

 市場では、利下げや地方選挙前の景気刺激策への警戒感が強く、トルコ経済のファンダメンタルが改善しても、積極的な買いが入りづらい状況です。

■トルコ中銀会合は現状維持がコンセンサスだが要警戒

 トルコ中銀の今年(2019年)初となる政策会合は、本日1月16日(水)夜に行われます。市場のコンセンサスは現状維持で、個人的にも利下げの可能性は低いと考えます。

 トランプ大統領のツイートに対する反応を見れば、トルコ政府のトルコリラ安警戒度が高いことがわかります。

 せっかくインフレの上昇が収まってトルコリラも安定してきたのに、再びトルコリラが大きく売られるような状況は作りたくないはずです。

 一方で、現政権の支持基盤である建設・不動産セクターから利下げへの強い圧力があるのも事実で、利下げの可能性もゼロではありません

 今週(1月14日~)の政策会合は要注意と考えます。

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