■エルドアン大統領がプーチン大統領と首脳会談
エルドアン大統領はチャウショール外相とともに、1月23日(水)にモスクワを訪問し、プーチン大統領との首脳会談を行いました。
ロシア訪問の目的は、トルコのシリア政策にロシアの支援を取り付けることです。トランプ大統領の1月13日(日)のツイートで提案されてから、トルコはシリアの北部に20マイルの安全地帯を設置するために動き出しました。
【参考記事】
●原油価格の反発がトルコの懸念材料に…。トルコリラ/円の22円超えは難しいのか?(1月23日、エミン・ユルマズ)
安全地帯とは、トルコがシリアの北部に、トルコ国境から20マイルのバッファーゾーンを設けることです。
このおかげで、シリアのクルド勢力とトルコのクルド武装組織を引き離すことができる上に、トルコにいるシリアの難民の一部をここに移住させることもできます。
トルコには300万人以上のシリア難民が住んでいて、トルコは内戦が始まった直後から安全地帯の設置を提案しています。
先週(1月21日~)のロシア訪問の目的も、この安全地帯の設置にあたってロシアの理解と支援を得ることでした。
1月23日にモスクワを訪問したエルドアン大統領。シリアに関するプーチン大統領との首脳会談の結果は、トルコとロシアのメディアで報道のされ方に違いがあるようで… (C)Anadolu Agency/Getty Images
■トルコメディアとロシアメディアで報道に違いが…
トルコメディアでは、首脳会談の結果はポジティブで、両国がシリアで新しいロードマップを作るというヘッドラインで伝えられています。同じく、トルコメディアは、プーチン大統領は安全地帯に反対していないと伝えています。
しかし、ロシアメディアの報道は少し違っていて、プーチン大統領が安全地帯を受け入れたとのコメントやニュースはほとんど見られません。
むしろ、ロシアメディアのトーンはネガティブで、トルコが直近、米国に接近していることに対する警戒感が強いと感じます。
いずれにしても、米軍がシリアから撤退することによって、ロシアのシリアにおける影響力が以前よりも大きくなることは確実です。
【参考記事】
●トランプ大統領が米軍のシリア撤退表明! 2019年のトルコリラは地政学リスクが鍵に(2018年12月26日、エミン・ユルマズ)
■今年もシリア問題がトルコの大きな懸念材料に…
ロシアとトルコとイランの3カ国は、昨年(2018年)3月にカザフスタンのアスタナでシリアサミットを行い、シリア問題で連携することを決めましたが、その後、あまり進展が見られませんでした。
写真は2018年9月にイランの首都、テヘランで開催されたトルコ、ロシア、イランによる3カ国会談のもの。シリア問題については、2018年3月以降、あまり進展がないそうだ… (C)Anadolu Agency/Getty Images
3カ国は、来月(2月)もう一度サミットを行い、米軍が撤退したあとの情勢について協議を行う予定です。
シリア問題は、今年(2019年)もトルコにとって大きな地政学リスクとして残ることが確実で、トルコ経済にも影響を与え続けます。
■3月の地方選挙までトルコリラの堅調予想は変わらず
トルコリラの方ですが、対円では堅調に推移していて、21円手前まで接近する場面もありました。
足元で新興国通貨のインプライド・ボラティリティ(予想変動率)は下がっていて、トルコリラも半年ぶりの低水準です。
昨年(2018年)8月のトルコショックの時に45を超えていたトルコリラの3カ月インプライド・ボラティリティは、17まで低下しました。
(出所:Bloomberg)
この動きは、トルコリラを中心に新興国通貨に対するセンチメントの改善を表しています。
私は、以前から指摘するように、トルコリラは3月31日(日)に行われる地方選挙が終わるまで堅調に推移すると考えます。
【参考記事】
●トルコリラは、2019年3月まで堅調と予想。だけど…2つのリスク要因には警戒を!(2018年11月21日、エミン・ユルマズ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
3カ月インプライド・ボラティリティの低下は、世界の投資家も私と同意見だということを示しています。
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