■経常収支は4カ月連続の黒字
2019年1月11日(金)に、トルコの2018年11月の経常収支が発表されました。
11月は4カ月連続の黒字で、9.9億ドルの黒字となりました。
(出所:Bloomberg)
昨年(2018年)のトルコは、年初来で経常赤字であることに代わりはなく、2018年1月から11月までの経常赤字は260億ドルを超えていますが、一昨年(2017年)の11月は450億ドルの経常赤字だったことを考えると、昨年(2018年)は、いかに改善したかがわかります。
トルコの経常赤字は対GDP比で約5.5%ですが、その中身はほとんど原油です。足元で経常収支が大きく改善している最大の理由は、原油価格の下落です。
【参考記事】
●原油が弱気継続ならトルコリラも上昇継続!でも、ハルクバンクの罰金次第で20円割れも(2018年11月14日、エミン・ユルマズ)
しかし、原油価格もWTIで1バレル=42ドル台まで下がった後に反発しました。トルコにとって一番大きな懸念は、原油価格がどこまで戻るかです。
(出所:Bloomberg)
個人的には、原油価格はしばらく45ドルから55ドルのレンジで推移すると予想しています。サウジアラビアを中心に産油国の減産が効いてきますが、原油価格が70ドルまで戻る可能性は低いと考えます。
■産油国が減産しても、原油価格は70ドルに戻せない
原油価格が上昇した背景に、サウジアラビアのサルマン国王体制とトランプ政権の連携がありました。
トランプ大統領は2017年5月に、大統領就任後初の外遊でサウジアラビアを訪問し、米国史上最高額となる軍事機器販売契約を締結しました。
同時に両国は、原油価格を上昇させることでも一致しました。しかし、昨年(2018年)起きたジャーナリストのカショギ氏殺害事件で米国とサウジアラビアの連携が崩れました。
【参考記事】
●エミン氏が緊急生出演! サウジ殺害疑惑をワールドビジネスサテライト(WBS)で解説
サウジアラビアのモハマド・ビン・サルマンが、本当に次期国王になれるかどうかも危うくなってきています。
エミンさんは、サルマン皇太子が次期国王になれるかも危うくなってきたとの見方を示している (C)Anadolu Agency/Getty Images
マクロ環境から見ても、中国の景気減速懸念が大きな話題となっていて、原油の本格的な需要増加が見込めない状況です。
産油国が減産したとしても、原油価格を70ドルに戻すことはできないのではないかと考えます。
(出所:Bloomberg)
■トルコリラ/円の22円超えは難しいと予想
トルコリラの方ですが、先週(1月14日~)のトルコ中銀の政策会合で政策金利が据え置かれたのはポジティブに捉えられて、対円で20円を超えました。しかし、その後は大きな動きがなく、20円台で推移しています。
原油価格が再び45ドルまで下がれば、トルコリラも22円まで上昇すると考えますが、地方選挙前のバラマキに対する警戒感が強く、22円を超えるのは難しいと予想しています。
【参考記事】
●トランプ大統領の過激ツイートにも反応薄。エルドアン大統領はトルコリラ安を超警戒!?(1月16日、エミン・ユルマズ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
実は、国営銀行が次々に新たなローンキャンペーンを打ち出したりしているのが気になります。
例えば、トルコ5大銀行の1つで国営銀行であるワクフバンク(Vakifbank)は、直近で3つのキャンペーンを打ち出しています。
それらは他社クレジットカードの債務者に対する24カ月から60カ月の新規ローンの設定、自社ローンのリファイナンス、不良債権に陥ったローンに対して金利をゼロにした新たな返済キャンペーンなどです。
これらはバラマキではないものの、間接的な金融緩和と言えるし、基本的にインフレを上昇させる要因です。2月4日(月)に発表される1月の消費者物価指数は注目すべきです。
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