■英離脱延期案は否決! 期待で買われた英ポンドは…?
1月29日(火)に、英議会でEU(欧州連合)離脱修正案の採決が行われました。
3月末が離脱期限で、時間が迫っていることから、離脱延期の思惑が高まっていましたが、この採決では、離脱延期の案が否決されました。
そして、メイ英首相がEU側へ、バックストップ(※)を含む離脱協定の再交渉を求める案が可決されました。ただ、EU側は再交渉はしないと、これを拒否しています。
(※編集部注:「バックストップ」とは、英国がEUを離脱したあとも、英国領の北アイルランドと隣国のアイルランドとの国境を開放しておき、北アイルランドをEU関税同盟に留めること)
いまだに混沌とした状況が続いており、合意なき離脱(※)の可能性もやや、高まってきています。
(※編集部注:「合意なき離脱」とは、2年間の交渉で合意に至らず、何の取り決めもないまま、英国がEUを離脱すること)
英ポンドは、1月29日(火)の採決に向けて、離脱延期の思惑が高まっていたことから上昇してきましたが、それが否定されたため、しばらくは、方向感なく推移することとなりそうです。
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■当面、米ドルは買いにくい状況へ
1月30日(水)には、FOMC(米連邦公開市場委員会)の結果公表がありました。
声明文から「さらなる緩やかな利上げが適切」との文言が削除され、「忍耐強く判断する」と、利上げの一時休止が示唆されました。
そして、保有資産の縮小については、「修正する用意がある」と発表されました。昨年(2018年)12月の時点で、パウエルFRB(米連邦準備制度理事会)は「見直す予定はない」と述べていたことから、ハト派な内容に変わってきています。
これを受けて、米ドル安となり、米ドル/円は108.49円まで、ユーロ/米ドルは1.1514ドルまで、米ドル安が進みました。
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ここまでの利上げサイクルや、バランスシートなどに関する金融政策の方向性が変化しており、米ドルは当面、買いにくい状況になるのではないかと思います。
【参考記事】
●FOMCのハト派的な内容に市場は驚き!? 米ドル/円は104円に向けて下落再開へ(1月31日、西原宏一)
●利上げ方針変更のFOMCで米ドル全面安! でも、米ドル安は長く続かないかも…?(1月31日、今井雅人)
●「米利上げ継続でも円高、米利上げ停止でも円高」というのはロジック的に矛盾している?(2月1日、陳満咲杜)
■ハト派FOMCと好調な経済指標で株価は上昇
そして、2月1日(金)の米雇用統計やISM製造業景気指数などの経済指標は、良い数字が出ました。
FOMCはハト派、経済指標は好調、ということから、米国株は上昇してきています。
(出所:Bloomberg)
■米ドル/円は110円台まで上昇したけれど…
米ドル/円は、FOMCを受けて米ドル安に推移したものの、株式市場が堅調となっていることもあり、昨日(2月5日)は110.15円まで上昇しました。
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FOMCの影響で米ドルは弱く、円は今の時期は円転もあって、買われることになりますが、株式市場が堅調なため、円も弱くなってきています。
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米ドル/円はまだ、方向感なく推移する動きが続くのではないかと考えています。
【参考記事】
●英ポンドの底堅さが続くと考える理由は? 米ドル/円は、しばらく108~110円で推移か(1月29日、バカラ村)
●米ドル/円暴落は「上海ショック」と似ている!? 円高リスク緩和。目先は110円台へ反発か(1月8日、バカラ村)
■ユーロは売り方向でトレード
ユーロ/米ドルは、FOMCを受けて1.1514ドルまで上昇しましたが、ユーロも基本的に、売り方向の通貨だと考えています。
中国の景気が悪化している影響から、ユーロ圏の景況感は悪く、イタリアはリセッション(景気後退)入りとなっています。
ユーロ/米ドルは、1.13~1.15ドルを中心とした横ばいが続いていますが、米ドルも売り方向、ユーロも売り方向のため、まだ、横ばいの動きが継続するのではないかと考えています。
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ただ、横ばいですが、トレードとしては売り方向を考えています。
1.15ドル前後では売り、1.13ドル台で買い戻すのが良いのではないかと考えています。
■一般教書演説で非常事態宣言が発動される!?
本日(2月5日)は、トランプ大統領の一般教書演説があります。
今回の一般教書演説では、メキシコとの国境の壁について、非常事態宣言が発動される可能性があり、注目が集まっています。
メキシコとの壁はトランプ大統領の選挙公約の1つで、建設を目指しているものの、これを巡って、一部政府機関が過去最長の閉鎖となりました。
そして、壁の建設費をねん出するために、トランプ大統領は、非常事態宣言を出す可能性があると発言しています。
非常事態宣言が発動されると、他の財源であっても、別のことへ利用することができるようになります。
ただ、非常事態宣言は、基本的に議会の承認が必要となるため、市場では今回の一般教書演説に、それが盛り込まれるのかに注目が集まっています。
積極的に米ドルを買う状況ではないですが、ユーロも円も買えるような材料がないため、まだ当面は、横ばいが継続するのではないかと思います。
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