■トルコの第4四半期GDPはマイナス成長に…
今週(3月11日~)発表された、トルコの2018年第4四半期のGDP成長率はマイナス3%となりました。
(出所:Bloomberg)
この結果を受けて、2018年通期でプラス2.6%の成長率に着地しました。
第4四半期の結果は、私の予想よりはるかに悪い結果です。数字の中身を見ますと、セクター別で産業は6.4%、建設・住宅は8.7%縮小し、GDPへのマイナスの影響がもっとも大きかったです。
また、農業とサービスは、それぞれ0.5%と0.3%の縮小となっていて、こちらも決して大丈夫とは言えない状況です。
トルコ経済は、2019年の第1四半期もマイナス成長になることが、ほぼ市場コンセンサスとなっています。
そして、2四半期連続のマイナス成長はリセッション、つまり景気後退を意味するので、今年(2019年)中にトルコのリセッション入りは、ほぼ確実となりました。
2018年はトルコの1人当たりのGDPが9632ドルに下がって、久々に1万ドルを下回ったのも、象徴的な出来事だと考えます。
■トルコが陥る「スランプフレーション」とは?
トルコの状況は、単純なリセッションではなく特殊なケースです。インフレ率が上昇しているのにGDPが縮小することを経済学で「スランプフレーション」と言います。
【参考記事】
●トルコの個人投資家センチメントが悪化中!? 地方選挙までトルコリラの動きは限定的か(3月6日、エミン・ユルマズ)
(出所:Bloomberg)
この現象は、GDPが停滞しているのにインフレが起きている「スタグフレーション」よりも解決が難しいですが、トルコのような新興国は危機時によく直面します。
トルコ経済の縮小は、ある程度予想されていたもので、短期的にはトルコリラの動きに大きな影響を与えないと思います。むしろトルコリラは、しばらく地政学的なリスクの高まりで乱高下する可能性が高いと考えます。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
●トルコの個人投資家センチメントが悪化中!? 地方選挙までトルコリラの動きは限定的か(3月6日、エミン・ユルマズ)
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
■S-400ミサイル問題が引き続き最大の地政学リスク
地政学リスクの中で最大なのは、このコラムでも再三お伝えしているS-400問題です。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
エルドアン大統領は、3月7日(木)に行った選挙演説で「S-400ミサイルの購入は終わった話だ。7月に最初のパーツがトルコに届けられる。将来はロシアとS-500の生産もやりたい」と発言しています。
エルドアン大統領は、将来はロシアとS-500の生産もしたいと発言。米国からの圧力に屈しないとアピールしているが、これはどこまで本音なのか… (C)Anadolu Agency/Getty Images
エルドアン政権は、S-400の購入はすでに決定済みなので、米国からの圧力に屈しないとアピールしています。
しかし、この姿勢はどこまで本音で、どこまで地方選挙前の政治アピールなのか現時点でわかりません。
エルドアン大統領は、地方選挙でトルコの民族主義者の票を獲得したい狙いなので、意図的に欧米との対立姿勢を強めている可能性があります。
選挙が終わったら、意外にあっさりS-400の購入を諦めるのではないかと考えます。
■トルコ中銀が現状の姿勢維持なら、トルコリラの下値は限定的
今週(3月11日~)のトルコリラは、対円で20円台前半で上値が重いですが、これもトルコのGDPの結果が原因ではありません。S-400ミサイルの購入をめぐって米国と高まっているテンションが原因だと考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
トルコ中銀は、3月6日(水)の政策会合で政策金利を据え置きました。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
同日(3月6日)に公表された声明によると、トルコ中銀はトルコの経常収支の改善は今後も継続すると考えていますが、必要であれば追加の金融引き締めをする準備があると強調しています。
つまり、トルコ中銀はしばらく利下げする予定がなく、むしろ必要であれば利上げすると自ら言っています。この姿勢が継続する限り、トルコリラの下値は限定的だと考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
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