■食料品のインフレはまだ止まっていない
今週(3月4日~)発表された、2月のトルコCPIは前月比でプラス0.16%となりました。この結果を受け、年間インフレ率はプラス19.67%に下がっています。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
この結果は、一見、ポジティブですが、中身を見ますと食料品価格は引き続き1%の上昇を見せています。
政府は大型の値下げキャンペーンをやったり、卸売業者や小売業者に圧力かけていますが、食料品のインフレが止まっていません。
【参考記事】
●懸念すべきは、トルコ政府の景気刺激策。価格高騰でトルコ「タマネギ騒動」勃発か!?(2018年12月5日、エミン・ユルマズ)
政府が直近で大都市を中心に、野菜の安売り販売所を設けています。これらの販売所の前に長蛇の列ができているのは、国民がいかに高インフレに苦しめられているのかの象徴でもあります。
トルコ政府は地方選挙前に、いろいろな対策を打ってトルコリラを安定させていますので、通貨は底堅く推移しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
しかし、現地メディアの報道によれば、通貨安定政策のしっぺ返しが選挙後に来るというのは、トルコでコンセンサスになっているそうです。
このせいもあって、資産のある人は米ドルのまま、投資やビジネスに利用せずにずっと待っていて、これが経済の停滞をもたらしていると指摘されています。
トルコの個人投資家の通貨見通しは、必ずしも当たるわけではないので、個人的にはあまり重要視していませんが、センチメントが悪化しているのは明らかです。
■インドとトルコの貿易優遇措置廃止のワケとは?
今週(3月4日~)、もうひとつ重要な動きがありました。3月4日(月)にトランプ米大統領は、インドとトルコの優遇措置を廃止することを決定しました。
米通商代表局が、「法定の適格基準に適合しなくなったため、インドとトルコの受益国としての選好をGSPプログラムの下で廃止する意向である」と述べたことがきっかけです。
このGSPプログラムは、120カ国をカバーする米国最大の貿易優先プログラムです。
今回、インドが外された理由は、プログラムが必要とする市場アクセスを提供していないからです。トルコに関しては、もうすでに十分発展しているので、GSPは卒業していいとの理由です。
個人的には、両国がGSPから外された背景には、表の理由以外に別の理由があると考えています。
それは先週、2月27日(水)のコラムでも書いた、S-400というロシアのミサイルシステムです。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2月27日、エミン・ユルマズ)
インドもトルコ同様にS-400の購入を決めいていて、2020年にミサイルシステムがロシアから届くことになっています。
インドのS-400購入に米国は反発していて、インドに対する経済制裁まで検討していると言われています。
■地方選挙までトルコリラの動きは期待できず…
今週(3月4日~)のトルコリラですが、インフレ率が下がったことに対する反応は限定的で、21円を割ったままとなっております。
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個人的に心配しているのは、トルコのCDS(クレジットデフォルトスワップ)が、2月に入ってから上昇傾向にあることです。
(出所:Bloomberg)
地方選挙まで、トルコリラの下値は限定的になると考えますが、逆に、上値もあまり期待できません。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
CDSが上昇している背景には、原油価格の上昇による部分もあると考えます。
(出所:Bloomberg)
原油価格は42ドルから足元で55ドルまで反発してきているので、縮小していたトルコの経常赤字が再び拡大中です。
【参考記事】
●原油価格の反発がトルコの懸念材料に…。トルコリラ/円の22円超えは難しいのか?(1月23日、エミン・ユルマズ)
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