昨日のアメリカの経済指標は、株価にとって好材料のものとなった。インフレ指標が予想以下となって、生産関連の耐久財受注のデータがとても強めに出たからだ。「インフレなき経済成長」は多くの人が望んでいる理想の姿。そういうわけで米国株も利食い売り優勢から上昇に転じた。
ドル円は動かないながらも、堅調な地合いをキープ。欧州通貨が上がり気味なので、クロス円も強い。マーケット全体がリスクテークに傾いているので、円の全面安の展開となるのはやむをえないことだ。それでもドル円は朝から通じても15ポイントほどしか動いていない。
昨日はイギリス議会で2回目の採決だった。メイ首相のEU離脱関連法案が却下された後の、「合意なき離脱」を認めるかどうかの問題であった。いうまでもなくこの議案は否定されるものされていた。誰もが合意のない離脱は望んでいないからだ。
そして結果もその通りになったが、それでいちおうの目先の安心感を得た市場は、ポンド高に向かった。それにつれてリスクテークも再開。米国株は今年の最高値を更新してきて、次のEU離脱の延期法案の採決に向かう。
今夜の英議会での延期法案も可決されるだろうと見込まれている。問題となるのは時間軸だ。欧州議会が一段落する5月の後ということで6月末まで延期するのが妥当とされている。
しかし3ヶ月ほどだけ延期しても、問題の根本は解消されない。今、混乱しているものが3ヶ月後には決着がつくと考える方が不自然だからだ。だからといって国民投票をもう一度やり直すかというのも問題が残る。
これで違う結果が出たら、つまり離脱しない方の結果が出たならば、今は良いかもしれないが、今後は政治が求めている結果が出るまで何度も投票をやり直すことにつながるからだ。出された結果を受け入れない風習が醸し出されることになり、民主主義の名の下に、国民投票を政治利用する端緒を開いてしまうからだ。
では解散・総選挙だろうか。これも厳しい。欧州では首相権限による下院の解散は法律によって禁止される傾向が強まっているからだ。「解散は首相の専権事項」などと言っていられる時勢ではないのだ。不信任案が通ったときのみしか解散できないのが実情である。
よって残る選択肢は内閣の総辞職ということになるが、先行きが半年前からもわかっていたのに、なんで今まで総辞職もしなかったのか。チャンスはいくらでもあったのにという疑念が残る。延期が予想通りに可決しても、延期されて良かった以上に問題の根本にあるものは根深いように思う。
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