■「FTSE100証拠金取引」とFTSE100の乖離率が10%へ拡大!
そんな「FTSE100証拠金取引」の買気配とFTSE100の乖離率は2018年2月に上下したわけですが、2018年中盤は0%前後に落ち着きました。
けれど、以下の図の赤い点線で囲んだように、2018年終盤にかけては乖離率がどんどん拡大していったのでした。
※岡三オンライン証券[くりっく株365]とBloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成
東京金融取引所は2017年12月に「金利相当額」の適用金利を円金利から外貨金利に変更し、2018年2月に証拠金基準額を大幅に引き上げるという対策を打ったにもかかわらず、2018年終盤に乖離率は一時10%に迫ったのです。
10%近い乖離率というのは、これまで見てきたくりっく株365の各銘柄と対象株価指数の乖離率のなかで最大の数値となっています。
2018年終盤といえば世界的に株価が暴落した時期で、FTSE100も以下のチャートのように下落したわけですが、この時期の「FTSE100証拠金取引」の買気配はFTSE100より10%ほど高い時があったということになります。
(出所:Bloomberg)
■「FTSE100証拠金取引」の需給は買いに偏っている
「FTSE100証拠金取引」の買気配とFTSE100の乖離率が10%ほどとなった2018年終盤にかけて、需給の偏りはどうなっていたのでしょうか。
※東京金融取引所「くりっく株365 売買別建玉数量」を基にザイFX!編集部が作成
「FTSE100証拠金取引」の需給は基本的に買いに偏っており、2018年終盤にかけては1万3000枚前後から2万枚近くまで買いの偏りが増大しました。
これは「FTSE100証拠金取引」の価格とFTSE100の乖離率が10%を超えたタイミングと一致しており、乖離率拡大の背景には需給の偏りがあったと言えそうです。
■「日経225証拠金取引」と日経平均、最近はあまり乖離せず
最後に、「日経225証拠金取引」の価格と日経平均の価格差はどれくらいあるのでしょうか。
「DAX証拠金取引」の買気配とDAXの乖離率と同様に、データ取得の都合上、「日経225証拠金取引」の買気配と日経平均の乖離率は2019年4月末から6月末までの期間しか算出できなかったのですが、プラスマイナス0.5%以内であることがほとんどで、最近はあまり乖離していない、という結果となりました。
■抜本的な対策、それが現行商品の上場廃止と新商品の上場
ここまで、くりっく株365の各銘柄の買気配と対象株価指数の価格差を見てきましたが、最近は価格差がそこまで拡大していません。
けれど、東京金融取引所はくりっく株365の各銘柄と対象株価指数の結びつきを強化するため、抜本的な対策を講じることに踏み切りました。
それが、東京金融取引所が2019年5月24日(金)に発表した、2021年3月のくりっく株365現行商品上場廃止と、それに先立つ2020年9月の新商品上場だったのです。ここでやっと本記事冒頭で紹介したトピックに話が戻ってきました。
東京金融取引所はくりっく株365の新商品が上場する2020年9月と、現行商品が上場廃止となる2021年3月という時期は予定であり、詳細は改めて発表するとしていますが、東京金融取引所がイメージしている予定は以下になります。
くりっく株365の現行商品が通常どおり取引できる2020年9月に新商品が上場し、2020年9月から現行商品が上場廃止となる2021年3月までが現行商品から新商品へのロールオーバー(※)が可能な期間となります。
(※ロールオーバーとはポジションをいったん決済して新たに立て直す作業のこと)
くりっく株365の新商品は最長で1年強という取引期限付きの商品で、この新商品の取引期限が来る前に再び新商品が上場して、先ほどと同様にロールオーバーが可能な期間が設けられることになります。
今回の決定により、くりっく株365の現行商品も新商品も最終決済日にはすべてのポジションが決済されることになりました。
たとえ需給が買いに偏り過ぎた状況になったとしても、最終決済日にはその状況がすべて解消されるのです。このことが今回の決定を抜本的対策と呼べる点でしょう。
もっとも、くりっく株365の現行商品と新商品が取引期限付きの商品となること以外に変更される点はありません。
くりっく株365の各銘柄は円建ての商品であること、「日経225証拠金取引」の「金利相当額」には円金利、「日経225証拠金取引」以外の銘柄の「金利相当額」には外貨金利が適用されること、「DAX証拠金取引」以外の銘柄には「配当相当額」「配当落ち」があることなどに変わりはありません。
■現行商品の含み損は新商品で引き継げない
また、東京金融取引所は今回の発表とともに「『くりっく株365』商品性見直し等に係るQ&A」を公表しました。
そのQ&Aのなかで、くりっく株365の現行商品が取引期限なしの商品から取引期限ありの商品に変わることについて、以下のような質問や要望がありました。
・長期保有を目的とした取引をしていました。取り消し、もしくは買い戻してもらえないでしょうか?
・現在、抱えている含み損を上場廃止により実現することは受け入れがたい。新商品で含み損を引き継げるようにしてください。
東京金融取引所はこれらの質問や要望に対して、現行商品の上場廃止予定まで1年半という十分な期間を設けたことを挙げ、相場動向を見ながら1年半の間に保有ポジションを決済するよう勧めています。
■「最終決済価格」は先物取引の「最終清算数値」とほぼ同じ
それでもトレーダーがくりっく株365の現行商品のポジションを2021年3月の上場廃止時まで保有していた場合、そのポジションは東京金融取引所が算出する「最終決済価格」で自動的に決済されることになります。
その「最終決済価格」の計算式は以下のとおりです。
「最終決済価格」=「上場廃止日の最終清算数値」×(1+公表日(2019年5月24日)前の平均乖離率-公表日(2019年5月24日)後の平均乖離率)
「上場廃止日の最終清算数値」というのは「くりっく株365の対象株価指数を原資産とする先物取引の最終清算数値」を指すのですが、具体的に「NYダウ証拠金取引」で考えると、「NYダウ先物取引の最終清算数値」ということになります。
くりっく株365の各銘柄は株価指数を対象としているとくりっく株365公式サイトで明示されています。
けれど、株価指数の終値ではなく、株価指数先物取引の「最終清算数値」がくりっく株365の現行商品の「最終決済価格」に使われるのは一見、奇妙なことのようにも見えますが、これはなぜなのでしょうか?
そのことについて東京金融取引所は「株価指数先物取引の『最終清算数値』は構成銘柄の価格から客観的に算出されるため、適切であると考える」とコメントしています。
続いて、(1+公表日(2019年5月24日)前の平均乖離率-公表日(2019年5月24日)後の平均乖離率)についてですが、この部分は「最終決済価格」が2019年5月24日(金)の前後2週間の平均乖離率で調整されることを意味します。
このことについて東京金融取引所は「実質無期限であった商品性が有期限に変更」されるため、「この変更の影響を調整した価格で最終決済することが適切と考えて」いるようです。
そして、東京金融取引所は2019年6月14日(金)、2019年5月24日(金)の前後2週間の平均乖離率が以下のようになったと発表しました。
上のとおり、2019年5月24日(金)の前後2週間の平均乖離率が決まったため、くりっく株365の現行商品の「最終決済価格」は以下のように算出されることになったのでした。
先ほど、「最終決済価格」は2019年5月24日(金)の前後2週間の平均乖離率によって調整されると書きましたが、その調整部分が各銘柄とも「1」に限りなく近い数値となっています。
つまり、「最終決済価格」は株価指数先物取引の「最終清算数値」とほぼ同じ数値、ということになったわけです。
さて、東京金融取引所の今回の決定により、取引所CFDであるくりっく株365は最長で1年強の期限付き商品となり…
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