■米中首脳会談開催へ。為替市場はリスクオン!
先週(6月17日~)の為替市場では、18日(火)にドラギECB(欧州中央銀行)総裁が講演で「ユーロ圏の見通しが改善せずインフレ圧力が強まらない場合は、追加緩和が必要」と発言したことで、ユーロが軟調に推移しました。
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その直後に、トランプ大統領が「マリオ・ドラギ総裁は、さらなる緩和策が実施される可能性があると発言し、ユーロを下落させ、米国との競争を不公正に簡単にしている」と、ツイッターで批判しました。
講演で追加緩和の可能性を示唆したドラギECB総裁。トランプ大統領はこの発言に対する不満を即座にツイッターでつぶやいたが… (C)Bloomberg/Getty Images
ただ、このつぶやきに対する相場の影響は軽微でした。
その後にトランプ大統領は、「習近平・中国国家主席と電話会談を行った」、「G20で習主席と会うだろう」と、6月28日(金)~29日(土)に開催されるG20(20カ国・地域)大阪サミットで、米中首脳会談が開催される可能性があると発言しました。
Had a very good telephone conversation with President Xi of China. We will be having an extended meeting next week at the G-20 in Japan. Our respective teams will begin talks prior to our meeting.
— Donald J. Trump (@realDonaldTrump) 2019年6月18日
これを受けてリスクオンとなり、特に、株式市場は堅調に推移しました。
■ハト派FOMCで米ドル安。7月に利下げ実施か
6月18日(火)~19日(水)は、FOMC(米連邦公開市場委員会)が開催されました。市場は、年内の利下げを2~3回、織り込んでいたこともあって、非常に注目されたFOMCでした。
声明文には、「忍耐強く」の表現が削除され、「景気拡大の維持に向けて適切に行動する」という文言が追加されました。
【参考記事】
●FOMC後の米ドル安は一時的!? 米ドル/円107円割れは回避か。注目は米中会談へ!(6月20日、今井雅人)
FOMCメンバーの金利予測を示したドットチャートは、前回(3月)までは先行きの利下げを予想する人数はゼロでしたが、今回は、17人のメンバーのうち、1人が1回、7人が2回の年内利下げを示唆しました。
(出所:FRB)
残りの8人は据え置き、1人は利上げを示唆していますが、前回から比較するとハト派となっており、それを受けて米ドル安へ。
米ドル/円は107.04円まで下がり、ユーロ/米ドルは1.1400ドルまで上昇してきました(※)。
(※編集部注:本記事の寄稿後、6月25日(火)の東京時間に米ドル/円は一時、107.03円付近まで下落、ユーロ/米ドルは一時、1.1410ドル付近まで上昇した)
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市場の予想どおり、来月(7月)に利下げをすれば、FRB(米連邦準備制度理事会)は金融政策を転換したことになります。
【参考記事】
●ハト派FOMCとリスク回避で米ドル/円は買われる状況にない! 上がったら売りで(6月18日、バカラ村)
●ユーロは積極的に買える状況ではない。でも、上昇余地があると考える理由は…?(6月11日、バカラ村)
■方向性を握るG20と米中首脳会談
FRB、ECB、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])が緩和に向かっていることもあって、株式市場にとっては良い状況となっています。米中首脳会談が開催されることもあって、米国株は高値圏まで上昇してきています。
(出所:Bloomberg)
各国が緩和姿勢のため、「このままリスクオンが続き、為替市場では米ドル安が続く」と考えたいところですが、1番、重要なイベントであるG20、そして、米中首脳会談の行方によって、大きく方向性が変わることになります。
【参考記事】
●ハト派なFOMCで上昇したNYダウは岐路に! G20で米中合意!? ドル/円108円台で戻り売り(6月24日、西原宏一&大橋ひろこ)
米中首脳会談で、通商協議が合意するのか、決裂するのか、歩み寄りがあるのか、どれがあっても不思議ではない状況です。
可能性として高いと思われるのは、「ある程度の歩み寄り」ではないかと思います。ロス米商務長官も、「合意はできるだろうが、G20の間ではないだろう」と発言しています。
合意までは、まだ時間が必要だと思いますので、今回は、協議は継続という形で終わるのではないかと思います。
■交渉決裂なら米ドル/円は105円!?
トランプ大統領は、関税第4弾も即時に発動すると発言していましたが、これも延期されるか、発動されたとしても、軽微なものになるのではないかと思います。
公聴会でも、関税第4弾の発動に対する経済界からの反発は強く、トランプ大統領でも、安易に発動するのは難しいのではないかと思います。
そうなると、ややリスクオンの状況が続くのではないかと思います。
可能性としては、かなり低いと思いますが、米中が合意したような場合は、リスクオンの動きが強まり、株式市場は上昇、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)も上昇することになります。
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そうなると、来月(7月)のFOMCで利下げが実施される可能性は低下することになり、その面からは、リスクオンの動きは弱くなりますが、合意の方を市場は好感すると思いますので、クロス円は上昇しやすいのではないかと思います。
交渉が決裂するような場合は、リスク回避から株式市場は下落、クロス円も下落することになり、米ドル/円も下落が再開することになると思います。
そのときは、105円を目指す動きも出てくると思います。
(出所:TradingView)
■イベント終えるまでは様子見戦略で
今週(6月24日~)は、パウエルFRB議長の講演や米耐久財受注などの重要経済指標の発表もありますが、G20と米中首脳会談が最大の注目で、他のイベントは相場の動きに影響しないと思います。
今週の注目イベントは、なんと言ってもG20と米中首脳会談。それ以外の材料は相場の動きに影響しないというのが、バカラ村氏の考え (C)Bloomberg/Getty Images
米中首脳会談次第で、為替市場はどちらにも動く可能性があるため、このイベントが終わるまで、トレードは控える方が良いのではないかと考えています。
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