■2週連続のギャップダウン。リスク回避傾向は継続か
為替市場の注目材料は、米中の貿易戦争と英国のEU(欧州連合)離脱問題です。他にも、香港のデモやイタリアの政局などもありますが、市場を大きく動かすほどの材料は、上記の2つになります。
先週(8月26日~)は、トランプ大統領が中国に対して追加関税の税率を引き上げたこともあって、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)はギャップダウンで始まりましたが、今週(9月2日~)もギャップダウンから始まっています。
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週末の9月1日(日)に関税第4弾が発動され、その影響でギャップを開けて始まりました。
関税の対象に消費財が含まれていることから、景気への影響が大きいこともあって、一部の発動は12月15日(日)へ先延ばしにされていますが、今後は景気減速懸念で、リスク回避になりやすい状況が続くものと思います。
【参考記事】
●投機筋の円買いはまだ積み上がる余地あり! 米ドル/円は106円台後半にかけて戻り売りか(8月27日、バカラ村)
■トランプ大統領の発言は株価次第!?
米中の対立は長期化が予想されることから、トレンドにはなりにくくなっていますが、トランプ大統領の発言には反応する動きが続きます。
トランプ大統領は、株価が下がっているときは楽観的な発言を行い、それが落ち着いてくると、中国への圧力を強める発言が出てリスク回避になる。そんな動きが続いています。
(出所:Bloomberg)
■離脱期限まであと2カ月! 英ポンドのボラティリティ上昇へ
米中の問題は長期化が予想されますが、それに対して英国のブレグジット(EU離脱)問題は、あと2カ月で決着がつく可能性があります。
そのため、ここからしばらくは、英ポンドのボラティリティが上がってくることが予想されます。
【参考記事】
●いつ売っていつ買うか?これから英ポンドのトレードがおもしろくなりそうな理由とは?(8月20日、バカラ村)
基本的には、ポジションは抑えめにする方が良い、ということになりますが、ここがチャンスと見るなら、ボラティリティが高いことから、収益も大きくなる可能性はあります。
英議会は9月3日(火)に開会されますが、9月12日(木)からは約1カ月間、また閉会されることになります。
ジョンソン英首相が、野党による合意なき離脱の阻止を防ぐために、議会を閉会するという方法をとり、その影響もあって、英ポンドは軟調な展開が続いています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:英ポンド/米ドル 4時間足)
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■総選挙や合意があれば、英ポンドは上昇だが…
議会は10月14日(月)から再開されますが、EU首脳会議が10月17日(木)~18日(金)に開催されるので、議論する時間はほとんどないということになります。そうなると、合意なき離脱の可能性は高まることになります。
与党勢力と野党には1議席しか差がなく、与党勢力から造反が出ると、不信任案可決からの解散総選挙という可能性も出てきます。
それを防ぐためにジョンソン首相は、造反した議員を保守党から除名処分にすることを示唆しています。
EU離脱期限の10月末まで残り2カ月弱。ジョンソン首相は合意なき離脱阻止に向けた動きを封じ込めるために議会の休会を決定し、造反した議員は除名処分にする方針を示唆している (C)Justin Sullivan/Getty Images
総選挙が行われる可能性は高いようですが、もし総選挙となれば、英ポンドは上昇することになると思います。
ジョンソン首相は合意なき離脱も辞さず、の構えで交渉に挑んでいることから、英ポンドは下がってきていましたが、総選挙となれば、ジョンソン首相が選ばれない可能性も出てきます。そうなると、英ポンドには売られ過ぎていた分の買い戻しが出ると思いますので、英ポンドは上昇することになると思うのです。
そして、可能性は低いと思いますが、EU側と合意することになれば、英ポンドは上昇します。
ただ、これまで数年かかっても、合意することができなったので、あと1~2カ月で合意できるとは思えず、合意の可能性は低いのではないかと思います。ですが、もし合意するようなことがあれば、そのときの水準にもよりますが、英ポンド/米ドルは、500~800pipsぐらい上昇しても良いのではないかと考えています。
■英ポンド/米ドルは1.15ドルを目指した動きも
現在、金融機関は合意なき離脱の確率を40~50%としているところが多いようですが、10月17日(木)~18日(金)のEU首脳会議に向けて、この確率も上昇して行くのではないかと思います。
ジョンソン首相は離脱期限の延期を否定していることから、時間との勝負となっており、時間の経過とともに、合意なき離脱の確率は上昇していくのではないかと思うのです。そうなると、英ポンドも、まだ下がる可能性が出てきます。
英ポンド/米ドルは、現在は、まだ1.20ドルがサポートされていますが、今後は合意なき離脱の確率が高まることから、1.20ドルを下抜ければ1.18ドル、さらにその下は1.15ドルを目指す動きになってくるのではないかと思います。
(出所:TradingView)
ヘッドラインで乱高下しやすい状況ですが、まだ英ポンドは下がる可能性はあるのではないかと考えています。
■米ドル/円はしばらくレンジで膠着か
米ドル/円は104.50~107円で膠着しており、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、下がれば買い、上がればヘッジで売っている、と言われています。
以前にも、GPIFが、上がったところで売っていると言われていた時期がありましたが、そのときは3円幅ぐらいのレンジで数カ月、横ばいが続きました。
今回はまだ、レンジになって1カ月ほどしか経っていないことから、以前と同じように、まだしばらく米ドル/円は膠着した推移が続くのではないかと考えています。
【参考記事】
●投機筋の円買いはまだ積み上がる余地あり! 米ドル/円は106円台後半にかけて戻り売りか(8月27日、バカラ村)
●米中当局間で展開されるライアーゲーム!? ドル/円は中期的に101円台へ向けて続落か(8月29日、西原宏一)
●円高になりやすいのは自明の理。ドル/円の106円台半ばあたりは、良い売りレベルか(8月29日、今井雅人)
(出所:TradingView)
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