■トルコ政府が発表した新経済計画の中身とは?
トルコ政府は9月30日(月)に新しい経済計画を発表しました。新計画の2020年の目標を簡単に要約しますと、以下の通りです。
(※筆者提供のデータを基にザイFX!編集部が作成)
目標達成のための具体的な政策が示されていないので、詳しい分析はできませんが、第一印象として、これらは相当強気な目標と言わざるを得ません。
特に、GDP成長率目標の5%は、グローバル経済が減速している中で達成は非常に難しいです。
トルコ経済は2019年4-6月期でマイナス1.5%のGDP成長率でしたから、今年(2019年)通期でプラス成長を達成できるかどうかも危ういです。
(出所:Bloomberg)
来年(2020年)、5%のGDP成長率を達成するためには、大規模な景気対策と金融緩和が必要です。しかし、それを実行するために必要な財源が、トルコにありません。
また、百歩譲って財源を確保した場合でも、経常赤字とインフレ率を縮小させる目標と高いGDP成長率を同時に達成するのは極めて難しいです。
トルコの経済成長モデルは内需主導型であり、高いGDP成長率は経常赤字の拡大を意味します。この構造は1980年代から続いていて、本格的な構造改革をしない限り変わりません。
また、トルコの経常赤字の中身は、ほぼエネルギーであり、原油価格の動向に大きく影響されます。中東情勢が悪化し、原油価格が高騰した場合、経常赤字は、今よりも拡大します。
【参考記事】
●3.25%の利下げ…だけどトルコリラ上昇!? 原油急騰によるトルコリラへの影響は?(9月18日、エミン・ユルマズ)
(出所:Bloomberg)
■強気のGDP成長率目標の背景に、IMF支援獲得の憶測も
一方で、インフレ率と財政赤字の目標は、財政規律を守り、大幅な金融緩和をしない限り達成できるかもしれません。ただし、トルコ政府は財政赤字を付加価値税の引き上げによって縮小させると考えているようです。
付加価値税の引き上げは、国民の購買力を低減させてしまいますので、景気悪化を加速させるリスクがあります。来年(2020年)、5%のGDP成長率を目指しているのであれば、付加価値税の引き上げは逆効果です。
トルコ政府の強気な目標を見て、一部のトルコメディアで、政府はすでに、IMF(国際通貨基金)の経済支援を獲得したのではないかとの憶測が出ております。
トルコ政府がIMFと交渉しているとのウワサは以前からありますが、秘密の合意というのは、あまり信ぴょう性がありません。
しかし、9月30日(月)の発表でひとつだけ気になったのは、公務員の昇給に関する項目でした。
トルコ政府は今後、公務員の給与は実現したインフレ率ではなく、目標とされるインフレ率にあわせて昇給しようと考えているようです。これは確かにIMFが言い出しそうなことです。
■冬にかけてインフレ率上昇とともに、トルコリラは下落か
今週(9月30日~)のトルコリラですが、新経済計画の発表後に上昇し、対円で19円を超える場面がありましたが、米国の9月ISM景況感指数の予想以上の悪化を受け、再び19円を割る格好となりました。
(出所:Bloomberg)
トルコリラは短期的に18円から19円のレンジで推移する可能性が高いですが、冬にかけてインフレ率の上昇とともに18円を割り込んでくるのではないかと予想しています。
(出所:Bloomberg)
長期的には、トルコ政府の新経済計画の達成と、トルコリラの運命を決めるのは、やはりグローバル経済の行方になるでしょう。
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