■トルコ中銀の利下げはほぼ確実! 利下げ幅は…
今週(9月9日~)の注目イベントは、間違いなく12日(木)に予定されているトルコ中銀の政策会合でしょう。
エルドアン大統領は9月7日(土)に行った演説で、トルコ中銀の政策会合について言及し「政策金利が下げられると信じている」と発言しました。
トルコ中銀の政策会合を前に、エルドアン大統領は「政策金利が下げられると信じている」と発言した (C)Anadolu Agency/Getty Images
エルドアン大統領によれば、「トルコの景気回復は力強く、政策金利の引き下げはインフレの下落ももたらす」とのことです。大統領はここまで強く発言しているので政策金利の引き下げはほぼ確実ということになります。
問題はどれくらいの利下げが行われるかということですが、個人的には2~4%の幅があると考えます。エルドアン政権寄りの一部のトルコメディアは、トルコ中銀が5%の利下げを検討していると報道していますが、そこまでの利下げはトルコリラの急落を招く恐れもあり、無難に3.5%以下に抑える可能性が高いと考えます。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
■トルコと米国との関係が再び悪化したワケは?
ウィルバー・ロス米商務長官は、今週(9月9日~)トルコを訪れていて、アルバイラク財務相やエルドアン大統領と会談をしました。
エルドアン大統領は会談後に、米国とトルコのEPA(経済連携協定)締結に向けた交渉を始めたいと発言していて、米国の投資家をトルコに招待しています。
一方で米国に、シリアにあるクルド勢力を支援しないよう、再び要請しました。ロス長官の前に米軍関係者もトルコを訪問していて、米国はエルドアン大統領のロシア訪問後の状況を把握しようとしている可能性があります。
G20大阪サミットでのエルドアン・トランプ首脳会談後、トルコと米国の関係は改善していましたが、エルドアン大統領のロシア訪問後に再び悪化しています。
【参考記事】
●米国との関係改善でトルコリラは底堅い! 解散総選挙と追加利下げがリスク要因に…(8月14日、エミン・ユルマズ)
●米国と関係改善で、次の懸念はロシア…。トルコリラが大幅下落している理由とは?(8月21日、エミン・ユルマズ)
写真は2019年6月に開催されたG20大阪サミットで握手をするエルドアン大統領とトランプ大統領。首脳会談後、トルコと米国の関係は改善していたが、エルドアン大統領のロシア訪問後に再び悪化している (C)Anadolu Agency/Getty Images
ムニューシン米財務長官は、9月9日(月)にトルコのS-400購入に関して、米国がトルコに制裁を科すことを検討していると話しています。つまり、G20サミットの首脳会談後に解決したはずの制裁問題が再熱したということになります。
【参考記事】
●トルコ中銀総裁解任の本当の理由とは? S-400問題で米国の制裁はほぼ確実!(7月10日、エミン・ユルマズ)
状況を簡単に要約しますと、トルコ政府が米国に接近しようとしたら、ロシアがシリア北部の空爆をはじめ、大量の難民がトルコに流れ込む危険性が表れました。
これを受け、トルコは再びロシアに接近。エルドアン大統領はロシアを訪問し、ロシア製戦闘機の購入にまで言及しました。これに対して米国は、再び制裁というカードを見せ始めたということになります。
【参考記事】
●インフレ率低下でトルコ中銀は2~4%の追加利下げも!? トルコリラの下値余地は?(9月4日、エミン・ユルマズ)
■トルコリラの中長期的な展望は弱気維持
今週(9月9日~)のトルコリラは、トルコ中銀の利下げ幅で大きく動く可能性がありますので要注意です。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 日足)
個人的には5%の利下げはないと考えているので、下落するにしても下落幅は大きくないと考えます。
一方で、トルコリラの中長期的な展望については、弱気の見通しを維持しています。トルコ外交の行き詰まりは大きなリスク要因であり、解散総選挙という国内政治の不安要素も、今後、顕在化してくると予想しています。
【参考記事】
●米国との関係改善でトルコリラは底堅い! 解散総選挙と追加利下げがリスク要因に…(8月14日、エミン・ユルマズ)
したがって、年末までに米ドル/トルコリラの6.4リラまでの上昇と、トルコリラ/円の17円までの下落余地があると考えます。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
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