■喜捨祭(犠牲祭)で、経済的な動きは少ないが…
今週(8月12日~)は、本日(8月14日)まで喜捨祭(犠牲祭)なのでトルコでは市場がお休みになっています。
【参考記事】
●米中貿易戦争激化でトルコリラ/円下落! 米国との関係改善が20円台回復の鍵に!?(8月7日、エミン・ユルマズ)
8月14日まで喜捨祭(犠牲祭)のため、トルコ市場はお休みで経済的な動きは少ない。上の写真はトルコと同じイスラム教国、パキスタン・イスラム共和国(通称・パキスタン)での犠牲祭の様子 (C)Anadolu Agency/Getty Images
したがって、経済的な動きは少ないですが、外交面では重要な動きがありました。
実は、直近1カ月でトルコ軍の大規模な部隊がシリア国境に配備されてきました。これはシリア北部のクルド勢力に対する軍事作戦の準備でした。
エルドアン政権は、ユーフラテス川の東側からクルド勢力を掃討すると宣言していましたので、シリアへの軍事介入は時間の問題とされていました。
トルコ政府の目標はクルド勢力を排除することだけではなく、シリアの北部に安全地帯を設けて、トルコにいる300万人を超えるシリア難民の一部を、この安全地帯に移住させることです。
【参考記事】
●シリア問題が引き続き大きな懸念材料に…。でも、トルコリラのセンチメントは改善中!(1月30日、エミン・ユルマズ)
トルコの景気後退とともに失業率が上昇し、トルコ国民のシリア難民に対する態度も変わってきました。エルドアン政権の統一地方選での敗北の原因のひとつは、難民を大量に受け入れたことだと指摘されています。
【参考記事】
●トルコ地方選挙は三大都市で与党敗北!? トルコリラ反発も、次は対米外交が火種に…(4月3日、エミン・ユルマズ)
(出所:Bloomberg)
■エルドアン政権がシリアへの軍事介入を準備したワケは?
エルドアン政権がシリアへの軍事介入の準備を始めたもうひとつの理由は、クルドへの軍事作戦は米国に対する交渉カードのひとつであるからです。
シリアのクルド勢力は、現地における米国の最大の同盟勢力であり、ISIS(イラク・シリア・イスラム国)との戦いにおいて重要な役割を果たしています。
【参考記事】
●トルコ人エミン氏がズバリ直言。シリアよ、落ち着け!その時トルコリラは逆に動き出す
米国は当然、クルド勢力を守りたくて必死です。トルコはS-400購入によって米国から厳しい制裁を受ける可能性があったため、米国との交渉カードとして、この軍事作戦を利用しました。
この戦略は、見事に成功したと言えるでしょう。トルコ政府の軍事介入の可能性が本格化したことを懸念した米国は、トルコの安全地帯設置に合意しました。
米国は安全地帯の設置に合意しただけではなく、S-400購入に対する制裁も見送りました。少なくとも米国とトルコの交渉期間は、1年間延長されました。
これは、エルドアン政権にとって、大きな外交勝利と言えるでしょう。
■トルコリラに底堅さも、解散総選挙と追加利下げがリスクに
今週(8月12日~)のトルコリラですが、円高の進行を受け、対円で19円割れの水準まで下がりましたが、米国の対中追加関税が一部見送られたことを受け、再び19円を超えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:トルコリラ/円 4時間足)
一方で、対米ドルでは現地の市場が休みであることも影響し、大きな動きはありません。
どちらかといえば最近は、トルコリラよりも円の動きが激しくなっています。トルコリラに関しては、マクロ指標の改善と外交面での米国との関係改善が大きなポジティブ要因なので、底堅い動きは継続すると考えます。
※通常は「米ドル/トルコリラ」ですが、トルコリラの上昇と下落をわかりやすくするため「トルコリラ/米ドル」のチャートを掲載しています。
(出所:Bloomberg)
一方で、解散総選挙と追加利下げは大きなリスクとして残っています。
特に利下げについては、年内に5~6%の追加利下げの可能性が指摘されています。エルドアン大統領は、年内に政策金利を15%まで下げる目標を掲げています。
先週(8月5日~)、チェティンカヤ元総裁の時代にポストに任命された中銀幹部は全員解任されました。
これによって、トルコ中銀におけるエルドアン大統領の支配は完全なものになりました。
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