■米国の景況感悪化で米ドル安に!
先週(9月30日~)は、米国の経済指標で動いた週となりました。
10月1日(火)に発表されたISM製造業景況指数は47.8と、景気判断の分かれ目とされる50を2カ月連続で下回る、悪い数字が出ました。
それを受けて米ドル安となり、米ドル/円は108.46円から下落。ユーロ/米ドルも1.0879ドルまで下がっていましたが、下降チャネルの下限に届かず、上昇しました。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルにテクニカル的な下落余地。10月の英ポンドは乱高下しやすい!?(10月1日、バカラ村)
10月3日(木)に発表されたISM非製造業景況指数も52.6と、50は上回っていますが3年ぶりの低水準となり、これを受けて、さらに米ドル安へ推移。
【FX初心者のための基礎知識入門】
●ISM製造業景気指数とは? 米国の景気を占う先行指標!? 非製造業部門にも注目!
(出所:Bloomberg)
米ドル/円は106.48円まで下落し、ユーロ/米ドルは1.0999ドルまで上昇しました。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
■今後は米経済指標に一喜一憂の展開へ
ここまで、経済指標に悪い数字が続いていましたが、10月4日(金)の米雇用統計では、失業率が3.5%と、50年ぶりの低水準となり、米ドル安の推移もいったん止まりました。
(出所:Bloomberg)
悪い数字と良い数字が混在しているため、ここからは、米国経済が減速しているのかを見極めるために、経済指標に注目が集まり、一喜一憂するような推移になりやすいと考えています。
■買える通貨は円だけになったが…
ユーロ圏は景況感が悪く、ECB(欧州中央銀行)は追加緩和を予定しており、オーストラリアも景況感が悪く、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])も利下げを続けてきています。また、RBNZ(ニュージーランド準備銀行[ニュージーランドの中央銀行])も大幅利下げをして、NZドル高を防いでいます。
主要通貨のほとんどが、ファンダメンタルズ的には売り方向となっており、米ドルが一強となっていたところで、ISMの悪さのために、米ドルも買いにくい通貨となりました。
このため、買う通貨で残ったのは円となりますが、リスク回避の動きにならないと円高にもなりにくいと考えています。
リスク選好の間は、買い方向の通貨がないため、為替市場は動きのない時期となりますが、リスク回避となれば、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)の下げが期待できる状態だと考えています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:世界の通貨VS円 日足)
■ニトリの為替予約が米ドル/円を支えた!?
ニトリホールディングスの似鳥会長は、8月に来年(2020年)2月までの下期分の米ドル買い為替予約を、105.53円で締結したことを示しました。
ニトリホールディングスは、日本の輸入企業の中では大手の、株式会社ニトリなどを展開する持株会社です。為替予想にも定評があることから、他の輸入業者も参考にしているようで、米ドル/円の買い支えにもなったと思います。
その似鳥会長は、年末に向けての米ドル/円は100~105円で推移するのではないかと予想しています。
■米ドル/円には下がるための燃料がない
気になる点としては季節性が挙げられ、10~12月の米ドル/円は、上昇しやすい時期となります。
昨年(2018年)に関しては下がっており、一昨年(2017年)は横ばいでしたが、それより前は上昇している年が多くあります。
(出所:TradingView)
昨年(2018年)と一昨年(2017年)は、IMM(国際通貨先物市場)における投機筋の米ドルに対する円のポジションが、10万枚ほどの円売り越しに偏っていたこともあって、米ドル/円が下がりやすい状態にあり、そこに年末のポジション調整も重なって、軟調な展開となりました。
しかし、今のIMMにおける投機筋の米ドルに対するポジションは、円買い越しになっていることもあって、米ドル/円が下がるための燃料がない状態になります。
※CFTCのデータをもとにザイFX!が作成
■英国発の金融ショックが起こる可能性は?
ただ、10月末にはブレグジット(英国のEU離脱)の期限が来るため、ここで合意なき離脱となるようなことになれば、金融ショックが起き、米ドル/円も急落することになります。
可能性としては低いと考えていますが、もし、合意なき離脱となった場合、英国の企業もまだ、準備が整っていないところが多数あり、物流が滞って金融ショックへつながる可能性は、十分にあるかと考えています。
【参考記事】
●ユーロ/米ドルにテクニカル的な下落余地。10月の英ポンドは乱高下しやすい!?(10月1日、バカラ村)
●10月は重要イベントが目白押し! 米ドル/円の108円台超えは考えにくい(10月3日、今井雅人)
●混迷のブレグジット…。短期再開となった英議会でボリス首相が喫した6連敗とは?(9月12日、松崎美子)
●英ポンドは買いか? 売りか? 「合意なき離脱」の可能性は本当にない!?(9月13日、松崎美子)
■豪ドル/円や加ドル/円の売りを検討
今週(10月7日~)に関しては、10日(木)~11日(金)に米中閣僚級協議が開催されます。
ここで一部でも合意するようなことになれば、リスク選好の動きになると思います。ただ、まだ合意するには難しいと考えています。
そうなると、米ドル/円を戻り売りすることになりますが、米長期金利が一時、1.50%台まで低下していることもあって、ここからの低下はあまり期待できないため、米ドル/円よりもクロス円での売りで考えています。
(出所:Bloomberg)
豪ドル/円や加ドル/円などが上がれば、売ってみることを考えています。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
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