■トルコ軍事作戦「平和の泉」とは何なのか?
トルコが10月9日(水)に「平和の泉」という名の軍事作戦を開始してから、世界の注目はシリアに集まりました。
【参考記事】
●EU主要国と米国がトルコ制裁を実施! でも、トルコリラ/円が暴落しないワケは?(10月16日、エミン・ユルマズ)
●シリア北部から米軍撤収で戦争リスク警戒! トルコリラ/円は18円台前半へ下落…(10月9日、エミン・ユルマズ)
日本の投資家にとっては非常にわかりづらいと思いますので、簡単に要約しますと、軍事作戦の目的はトルコとシリアの国境沿いからクルド勢力を掃討し、安全地帯を設置することです。
トルコ政府は作戦開始以来、2200キロ平方のエリアが解放され、35万人のシリア難民は地域に戻ったと主張しています。トルコは、最終的にトルコ国内いる300万人のシリア難民をこの安全地帯に移住させたいとの考えでした。
■ロシアとの合意はトルコ有利に見えるが、落とし穴も…
一方で、トルコの軍事作戦は国際社会から強い批判にあいました。シリアから米軍撤退を決め、トルコにゴーサインを出したのはトランプ政権でしたが、そのトランプ政権に対する批判も強かったため、トランプ大統領はトルコに対して軽い制裁を公表しました。
しかし、米議会はそれに満足せず、重い内容の制裁案を準備したため、ペンス副大統領とポンペオ長官は直接トルコを訪問し、10月17日(木)にエルドアン大統領と会談しました。結果的に、トルコ政府と米国は軍事作戦の5日間の停止に合意したわけです。
これでトルコは制裁を回避できたわけですが、この5日間でクルド勢力はトルコが主張している安全地帯から撤退しなければならないというのが条件でした。
そして、その期限はトルコ時間の昨夜(10月22日)22時に終了しました。シリア情勢が緊迫しているため、エルドアン大統領は日本訪問を中止し、昨日(10月22日)、ロシアのソチを訪問していて、プーチン大統領と会談を行いました。
米軍の撤退を受け、現在、シリアでもっとも影響力がある大国はロシアであり、トルコの安全地帯設置作戦もロシアの協力なしでは成功できなかったからです。最終的に、トルコはロシアとも合意に達しました。

エルドアン大統領は、シリア情勢が緊迫しているため日本訪問を中止。米国のペンス副大統領、ロシアのプーチン大統領とそれぞれ会談し、クルド勢力の掃討作戦「平和の泉」を停止することを決めた (C)Anadolu Agency/Getty Images
簡単にまとめると、クルド勢力は北部から撤退し、トルコ軍が現在、駐在している地域を除く国境地帯は、トルコとロシアが共同でパトロールするという内容です。クルド勢力の撤退には、さらに150時間の期間が設けられました。
一見、トルコにとって有利に見える合意ですが、実は大きな落とし穴もあります。
この合意によれば、トルコ国内のシリア難民は自ら希望しない限り北部に移住させられないとなりました。つまり、300万人を超えるシリア難民のほとんどは、そのまま永遠にトルコに残ることになりました。
●FX会社徹底比較!:トルコリラ/円が取引できるFX会社はここだ!
トルコ軍事作戦の停止発表直後に…
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)