■英国とEUによる離脱合意が成立したが…
みなさん、こんにちは。
10月17日(木)、ついにユンケル欧州委員長が「英国とEU(欧州連合)で離脱合意が成立した」と発表。
振り返ってみれば、10月31日(木)にブレグジットを実現すると主張していたボリス・ジョンソン首相(以下、ジョンソン首相)ですが、戦時内閣(ウォーキャビネット)を組閣してから連敗続き。
【参考記事】
●英ポンド大混乱か。合意なき離脱の高まりがEU離脱取り止めの可能性を高める!?(8月22日、西原宏一)

戦時内閣(ウォーキャビネット)を組閣してから連敗続きのジョンソン首相(左)だが、EUとの間で離脱合意を成立させた。写真は首相就任時、首相官邸に到着したときのもの (C)WPA Pool/Getty Images News
ジョンソン首相も、政治的に徐々に追い詰められている状況でした。
ただ、ロンドンの友人は、「ボリスは交渉上手だから、まだ何が起きるかわからない」と言っていました。
その言葉どおり、大方の予想を覆して、ジョンソン首相が「英国とEUで離脱合意を成立させた」ことにマーケットは騒然。
英ポンド/米ドルは、一気に1.29ドル台後半まで急騰しました。

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■英国議会は難航し、10月末のEU離脱はほぼ不可能に
ただ、その後、英国議会において事態は難航します。
注目を集めていた英議会ですが、新たなEU離脱案の採決は先送りという結果に。
EU離脱に必要な関連法が成立するまで採決を留保するよう求める超党派議員の修正動議(レトウィン案)(※)が可決されたためです。
(※レトウィン案とは、サー・オリヴァー・レトウィン議員が提出した修正案のことで、「離脱協定法案(WAB)」が可決するまで、下院による離脱協定案承認を棚上げするという内容。これに対し、ジョンソン首相は今週(10月21日~)にも、その「関連法案」を提出し、議決することで、あくまでも10月31日のEU離脱を目指している)
そして、日本時間10月23日(水)未明、英下院はEU離脱協定法案を第2読会(※)で可決。
(※編集部注:英国では議案の審議を慎重にするために読会制が設けられている。第1読会で議案の上程と趣旨説明、第2読会で総括審議が行われ、さらに委員会で詳細に審議を行ったうえで、第3読会で最終的な採決が実施されることになっている)
これにより、英ポンド/米ドルは、一時1.30ドル台まで急騰。
しかし、英議会下院は離脱関連法案を早期に成立させるために提出した「短期日程」を否決。これにより、10月末のブレグジットは、ほぼ不可能に。
英ポンド/米ドルは一気に反転し、一時1.2841ドルまで急落しました。

(出所:Bloomberg)
■合意なきEU離脱リスク消滅で、ブレグジットは新局面へ
今回の英ポンドの急騰は、10月10日(木)にジョンソン首相とアイルランドのバラッカー首相が行ったミーティングから始まっています。
【参考記事】
●大きなヤマ場を迎えるブレグジット問題!「合意あるEU離脱」期待で英ポンド上昇(10月17日、西原宏一)
このわずか10日程度の営業日で、英ポンド/米ドルは1.2200ドル水準から1.3000ドル台へと約800pips、英ポンド/円は131円台から141.50円水準へと約10円急騰しています。

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マーケットでは、ジョンソン首相が目指した10月末のブレグジットが、ほぼ不可能となり、10月10日(木)から始まった英ポンドの急騰は、いったん沈静化。
しかし、マーケットの懸念であった合意なきEU離脱の可能性も、ほぼ消滅していることから、英ポンド/米ドルのダウンサイドリスクも限定的で、中期では、英ポンドの上値余地は、まだ拡大していると想定しています。
日足ベースでのデマーク(※)インディケーターなどは、英ポンドの買われ過ぎを示唆していることから、本日(10月23日)からは、これまでと違い、ていねいに押し目を待ちたいところですが、英ポンドの上昇基調は変わらず。
(※編集部注:「デマーク」とはTDシーケンシャルなどのテクニカル指標を開発したトーマス・R・デマーク氏のこと)
ジョンソン首相の凄腕で「合意なきEU離脱の可能性は、ほぼ消滅」。
結果、合意なきEU離脱による英ポンド/米ドルの暴落に怯える相場も終わり、ブレグジットは新たな局面に入ったといえます。
新たな局面に入ったブレグジットと英ポンド/米ドルの行方に注目です。
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