■FRBの隠れQEでバブルへGO!?
米中通商協議では中国側から「関税の段階的撤廃で合意」との報道が出ましたが、トランプ米大統領が否定。それにしては米国株は下げませんでした。これまでだと、もっと崩れていたニュースだと思いますが……。
(出所:Bloomberg)
トランプサイクルでは、株価が史上最高値付近にあると強気な発言が出て急落するのが今までのパターン。これにマーケットも慣れてきた、ということかもしれません。
FRB(米連邦準備制度理事会)が「隠れQE(量的緩和策)」を始めたことも影響したのかもしれないですね。
FRBのバランスシートは再び拡大し始めていますし、ECB(欧州中央銀行)も11月から資産買い入れを再開。世界的に金融緩和ですから「バブルへGO!」だと見る人もいます。
■米ドル/円は109.50円&110円、2段構えのバリアに注目!
一方、米長期金利は2%近くまで上昇。2%を超えてくるようだと株式市場にネガティブな影響が出てくる可能性もあります。
(出所:Bloomberg)
1年前には、米長期金利が3%台に達してから米国株が崩れました。それと比べれば、まだ水準としては低いですよね。
先週(11月4日~)末、米長期金利が1.97%まで上昇したことで逆イールドの懸念が低下し、順イールドに戻りました。この点はポジティブですが、2%を超えてくるようだと株にプラスではありません。
史上最高値を更新したNYダウですが、前回高値2万7398ドルを割りこむようだとブルトラップとなり、何度も繰り返してきたパターンになります。
【参考記事】
●米国債に逆イールド発生で米景気後退か? NYダウは800ドル安! 米ドル/円は…!?(8月15日、西原宏一)
米金利上昇とともに、きれいな逆相関を描いて崩れたのが金(ゴールド)。まだレンジ内ではありますが、パウエルFRB議長が示唆したように、予防的利下げが打ち止めとなり、米金利上昇が続くなら、200日移動平均線あたりまで調整するのかもしれません。
(出所:Bloomberg)
米ドル/円は、109.50円にバリアオプションがあるようです。そのためか、先週(11月4日~)の高値はバリアオプション目前の109.49円。109.50円を抜けても110円にもバリアオプションがあり、2段構えとなっているため、上がりにくくなっています。
(出所:TradingView)
■NZ利下げは完全に織り込まれていない
今週(11月4日~)、13日(水)はNZの政策金利発表。今年(2019年)は2回利下げしたものの、前回9月は据え置き。今回はいかがですか?
利下げの織り込み度は59%。据え置きの可能性も残されており、利下げが完全に織り込まれた状況ではありません。
株が強いため、NZドル/円や豪ドル/円は短期筋のポジションがロングに傾いているようでもあり、利下げするなら要注意ですね。
(出所:TradingView)
■香港デモ深刻化すれば、リスクオフ要因になる可能性
気になるのが香港デモ。先週(11月4日~)、初めての死者が出てしまい、また今日(11月11日)には、香港警察が実弾を発砲し、1人が重体。不幸な事態が続いています。
これを受けてなのか、今朝(11月11日)の中国株市場は軟調です。さらに事態が悪化するようだと、リスクオフ要因となるのかもしれません。
(出所:Bloomberg)
■イランの大規模油田発見がオイルマネーを弱める?
原油市場では、イランが大規模油田を発見したとのニュースが出てきました。事実なら長期的に原油の上値を抑えることになるでしょうし、オイルマネーの力が弱まっていくのかもしれません。
(出所:Bloomberg)
世界の株式市場は強いのに、サウジアラビア株式市場のタダウル指数はこの半年、右肩下がりです。
(出所:Bloomberg)
NYダウや日経平均がこれだけ上がっているのに、サウジアラビアだけが蚊帳の外ですね。
12月にはOPEC(石油輸出国機構)総会が控えています。ここで協調減産に合意できるかどうか、注目されそうです。
ただ、OPECからは、今年(2019年)1月にカタールが脱退し、来年(2020年)1月にはエクアドルも抜ける予定。
OPECの価格支配力は徐々に低下しており、中東のパワーバランスが変わってくるのかもしれません。
いずれにせよ、今週(11月11日~)の注目は米ドル/円。109.50円と110円のバリアオプションが抜けないと仮定するなら、手前での戻り売りがいいでしょう。
ストップロスをタイトに置けるため、リスクリワード(1回の取引における利益と損失の割合)のいいトレードになるかもしれません。
(構成/ミドルマン・高城泰)
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