■株価堅調。でも、為替相場は膠着
今週(11月4日~)、米国の株式市場では、代表的な株価指数が史上最高値を更新し続けています。

(出所:Bloomberg)

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しかし、一方で為替相場を見ると、今年(2019年)は、どの通貨ペアも年間の変動幅が小さくなっています。このまま、こうした膠着相場が続くのでしょうか?

(出所:TradingView)
■膠着の理由はディスインフレと低金利
結論から言うと、おそらくこうした膠着相場が、年内は続いてしまいそうです。
私は、その原因は世界的なディスインフレ(※)と、低金利のせいではないかと考えています。
(※編集部注:「ディスインフレ」とは、デフレとまではいかないがインフレでもない状態。一般的にはインフレの状況下、中央銀行の緩和的な金融政策などによって、インフレではなくなったが、デフレにもなっていない状況を指すことが多い)
ここ2~3年、米国が金利の正常化を目指して、テーパリング(※)、そして政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)レート誘導目標レンジの引き上げを実施してきました。
(※編集部注:「テーパリング」とは、量的緩和政策により、進められてきた資産買い取りを徐々に減少し、最終的に購入額をゼロにしていこうとすること)
しかし、今年(2019年)に入ってから、世界経済全体が低迷傾向となり、さらに米中貿易摩擦などへの懸念もあって、FRB(米連邦準備制度理事会)は金利の引き下げに転じました。そして、3会合連続で政策金利を引き下げています。

※フェデラル・ファンドレートの誘導目標レンジ上限を掲載
※FRBのデータをもとにザイFX!が作成
それと歩調を合わせるように、先進国は各国で、さらなる金融緩和を検討し始めています。
■為替相場は通貨同士の綱引き状態に
金融緩和状態になると、当然、お金が市中に溢れるわけですから、そのお金はどこかに向かいます。一番向かいやすいところは、不動産と株式市場です。ですから、株価は非常に堅調に推移することになります。
現在、米国の株価指数が史上最高値を更新し続けているのも、日経平均が2万3000円を超えてきているのも、それが原因だと思います。

(出所:Bloomberg)
一方、為替相場ですが、どの国も歩調を合わせて金融緩和をしているわけですから、通貨同士は綱引き状態になってしまい、その結果として、相場が膠着してしまうということです。
【参考記事】
●NYダウ史上最高値に迫るもバブル懸念…。もしバーストすれば、ドル/円105円割れへ(11月4日、西原宏一&大橋ひろこ)
●米国株の本格的なバブルはこれからだ! 米ドル/円の反落はスピード調整にすぎない(11月1日、陳満咲杜)
■株高・円安の相関が鈍くなったワケ
かつて、日本だけが低金利だったときに、株が上昇すると、キャリートレード(※)である「円売り・外貨買い」という取引が活発になるという流れで、株高・円安という相関ができあがり、そのイメージが今も続いているので、株高になると円安になるという傾向は、現在も残っています。
(※編集部注:「キャリートレード」とは一般に金利が非常に低い通貨で資金を調達し、それを相対的に金利の高い通貨に替えて運用する手法のことをいう)
しかし、実際は当時と違って、日本以外の国も低金利となっています。ユーロにいたってはマイナス金利で、日本の金利よりも低い状況です。
ですから、通貨間の金利差を利用したキャリートレードというのは、現在はファッション(流行)ではありません。
株高になると円安になりそうですが、背景にキャリートレードが存在していないために、その動きはどうしても鈍くなってしまいます。
■今年はこのまま膠着状態が続きそう…
今年(2019年)は、米中貿易摩擦やブレグジット(英国のEU離脱)で、相場が荒れる局面もありましたが、この問題も長期化して、市場も反応が鈍くなっています。
そういうことを考えると、12月12日(木)に英国で総選挙があるので、少し、それに振り回されることがあるかもしれませんが、それ以外に相場を動かすようなものが見つかりません。

写真は英国のジョンソン首相(保守党党首)。英国では12月12日の総選挙に向け、5週間の選挙戦がスタートした。今井氏は総選挙に振り回されることがあるかもしれないものの、それ以外に相場を動かすようなものが見つからないと指摘している (C)Justin Sullivan/Getty Images
そうであれば、今年(2019年)はこのまま、膠着状態が続くのだと思います。
【参考記事】
●12月の英総選挙は事実上の再国民投票!? 合意ある離脱なら英ポンドは1.40ドル台へ(10月31日、西原宏一)
■レンジを想定した米ドル/円・クロス円の押し目買いで
そのうえで、トレード戦略を考えると、やや円安気味のレンジ相場という想定で、米ドル/円やクロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)でのレンジトレード、入りは買いからということで、押し目買いを基本戦略としたいと思います。
米ドル/円は108円台前半、ユーロ/円は120円近辺を、買いのメドと考えています。
【参考記事】
●株価堅調推移で円売りに妙味! 米ドル/円よりユーロ/円がおもしろそうなワケは?(10月31日、今井雅人)
●米ドル/円の下げは限定的か。リスクオン継続の中、豪ドル/米ドルの200日線に注目!(11月5日、バカラ村)

(出所:TradingView)

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