■アフガニスタン電撃訪問と、米大手誌記者の解雇
サンクスギビングデー(感謝祭)が終わり、欧米勢にとっては、実質的に新年入りともいえる時期になりました。
香港人権法案にトランプ米大統領が署名したのは、感謝祭直前のタイミング。市場への影響が懸念されていましたから、株式市場の急落を回避するトランプ流の深謀遠慮だったのかもしれません。
中国からの報復も出ていませんね。
署名にあたってのコメントで、中国や香港への敬意を表してメンツを保ちましたから、中国側の反応も「アメリカが独断専行をやめなければ中国は必ず報復措置をとる」と、今後については警告しても、署名までは問題視しませんでした。
米中の次の焦点は12月15日(日)に発動される予定の追加関税。現在の相場は、発動の延期、あるいは撤廃を前提に動いています。
決断が注目されるトランプ大統領ですが、米ニューズウィーク誌によれば「トランプはサンクスギビングの休暇をどう過ごすか? ツイートとゴルフだ」とのことでした。
ところが、実際には、アフガニスタンを電撃訪問。駐留米軍を慰問し、タリバンとの和平協議再開を表明しました。フェイクニュースを配信してしまったニューズウィークの記者はすでに解雇されています。
サンクスギビングの休暇中、トランプ大統領はアフガニスタンを電撃訪問。米ニューズウィーク誌はトランプ大統領のサンクスギビングの休暇は「ツイートとゴルフ」だと報じていたのだが… (C)Mark Wilson/Getty Images
■香港デモが広東省にも飛び火か
中国では、香港と隣接する広東省で住民と警察が衝突しています。香港デモが飛び火したのかもしれません。
中国は情報を統制したいのでしょうが、隠し通せる時代でもありませんし、その他の地域に拡大すると影響は大きそう。今すぐ相場を動かす材料になるとは思いませんが、気にしておきたいニュースですね。
さまざまなヘッドラインは出るのですが、株式市場は相変わらず強い。弾劾が話題にのぼっても、香港デモで死者が出ても、トランプが香港人権法案に署名しても、「何があっても株買い」。
リスクオフ要因とは無関係に上がっていくのは、「隠れQE(量的緩和策)」によるバブル相場の始まりが意識されているからでしょう。
(出所:Bloomberg)
■NYダウと日経平均は、200日線程度まで調整も
アメリカのMMF(マネー・マーケット・ファンド)は3.5兆ドルの残高があるそうです。
リスクをとれる380兆円のお金が控えている、ということですね。ただ、今の株式市場は、あまりにリスクに対して鈍感なように思えます。
NYダウ、日経平均ともに200日移動平均線との乖離が大きくなっています。200日移動平均線程度までの調整は充分、考えられますね。
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(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
12月15日(日)の、米国の中国に対する追加関税の延期を前提に動いている相場なので、発動や報復といったニュースが出ると、グラっとくる可能性はあるでしょう。
■ロシアの減産延長反対で原油は急落
原油市場は先週(11月25日~)末、大きく崩れました。材料視されたのは、アメリカが70年ぶりに原油の純輸出国となったこと、今週(12月2日~)開催されるOPEC(石油輸出国機構)総会、OPECプラスでの減産延長にロシアが疑問を呈したことの2つです。
崩れたといってもまだレンジ内ですが、さらに下落するようだと株式市場への波及に警戒ですね。ただ事前にネガティブなニュースで下げましたから、産油国が減産延長で合意できれば上がりやすい状況にはなりました。
(出所:Bloomberg)
■英ポンド/米ドルは総選挙に向けて1.30ドルへ
今週(12月2日~)は、その他にも米雇用統計やRBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])理事会が控えています。RBAは政策金利据え置きの見通し。市場の織り込みを見ると、次回、利下げは、来年(2020年)4月以降というのがコンセンサスです。
大きなテーマとしては、やはり来週(12月9日~)の2大イベント。12日(木)の英総選挙、そして15日(日)の米国の中国に対する追加関税発動の有無が注目ですね
それまでリスクオン的な相場が続くのかどうか。米ドル/円は110円にバリア・オプションが設定されているようです。110円に向かう可能性はありますが、バリアを一度で破るのは難しいでしょう。
今週(12月2日~)の戦略としては、英ポンド/米ドルの押し目買いを継続です。保守党勝利の織り込みが進むにつれて、1.30ドルを目指していくのではないかと思います。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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