■今年の米ドル/円は狭いレンジで越年へ…
先週のコラムでは、モルガン・スタンレーの2020年の注目通貨ペアが英ポンド/米ドルやNZドル/米ドルのロングということをご紹介させていただきました。
【参考記事】
●トランプ大統領が吠えて徐々に米ドル安へ… 2020年は総じて米ドル安との見方も!(11月21日、西原宏一)
では、そこで取り上げられなかった通貨ペアである米ドル/円は来年(2020年)どうなるのか?
まず、今年(2019年)の米ドル/円を振り返ってみます。
2019年の米ドル/円は、多くの円安予想とは裏腹に、1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュにより、104.87円への暴落からスタート。
【参考記事】
●フラッシュ・クラッシュで米ドル/円が暴落! 株の下落を伴えば、100円割れの可能性も!?(1月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
その後、本邦機関投資家の円売り需要に支えられ、4月に112.40円台まで戻すも、5月のゴールデンウイーク明けの米中貿易戦争の緊張から、再び104.46円まで下落。
今年(2019年)後半にかけて持ち直し、本稿執筆時点では109円台ミドルで推移しています。結局、8円にも満たない狭いレンジで今年(2019年)を終えそうです。
(出所:TradingView)
■ファンディング通貨としての地位を失った円
理由はいくつか挙げられますが、ファンディング通貨の筆頭に挙げられていた円が、その地位を失ったことが大きいのではないかとの見方が増えています。
リーマンショック以前から、低金利といえば「日本円」。
そのため、ファンディング通貨として円が広範に使われており、安く調達してきた円を売り、他通貨に換えて投資に回すという手法が使われていました。
いわゆる「円キャリートレード」です。
そのため、リスクオフ局面になると、一気に円の買い戻しが起きて、米ドル/円、クロス円(米ドル以外の通貨と円との通貨ペア)などが急落するという傾向がありました。
ところが、今年(2019年)、1月3日(木)のフラッシュ・クラッシュ時は、投機筋がシナリオどおりに円買いをするも、肝心の円キャリートレードによる買い戻しは起きませんでした。
そのため、一度、円高に振れた後は、じわじわと投機筋の円の売り戻しが起き、結局、元のレベル戻るという傾向が見られました。
(出所:TradingView)
これは、円に関して重要な変化です。
ゴルディロックス(居心地がいい状態)時の円は、円キャリートレードにより、他通貨に対して緩やかに円安に推移します。そしてリスクオフ局面、つまり株が急落する局面では、一気に円の買い戻しが起き、円が急騰します。
しかし、仮に円がキャリートレードにあまり使われないのであれば、リスクオフ局面での円買いも起きません。
この流れが続くのであれば、テーマを失って方向性を失った米ドル/円は、来年(2020年)も大きな動きは期待できないのかもしれません。
■新たにファンディング通貨になったのは…!?
では、円の代わりに何がキャリートレードに使われているのでしょうか?
ファンディング通貨としての地位を円から奪ったのが、ユーロ。
欧州の景気悪化により、歴史的な低金利にあるユーロが調達通貨として使われることが多くなっているようです。
そのため、今年(2019年)のユーロ/米ドルは、大きな反発もなく、緩やかなユーロ安を演じてきました。
(出所:TradingView)
これの意味するところは、仮に株の暴落があれば、ユーロの急速な買い戻しが起き、ユーロ/米ドルが急騰することになります。
逆に、今月(11月)のようにグローバルに株が堅調に推移すれば、ユーロ/米ドルは決して急落はしませんが、緩やかに下落することになります。
しかし、来年(2020年)、欧州経済は回復して、こうしたユーロのキャリートレードは沈静化。2020年のユーロ/米ドルは、反発するというのが大手米銀の見方のようです。
(出所:TradingView)
ただ、年末年始は…
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