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移動平均線とは
テクニカル指標の中で、もっともポピュラーなものとして活用されているのが「移動平均線」です。英語の「Moving Average」の頭文字をとって「MA」と呼ばれます。移動平均線をもとに開発されたテクニカル指標がたくさんあることからも、重要度がわかる指標です。

(出所:サクソバンク証券)
移動平均線は、1920年ごろに米国で開発され、日本でも「からみ足」と呼んで利用されていたと伝わっています。1960年に米国のジョゼフ・E・グランビルが紹介した「グランビルの法則」によって、一気に注目されるようになりました。
移動平均線は、ほぼすべてのトレーダーが何らかの形で活用していると言い切ってもいいぐらい、非常に認知度の高いテクニカル指標です。
移動平均線の求め方
移動平均線は、移動平均と呼ばれる過去一定期間の終値の平均値をつなげた線です。求め方は、いたってシンプルです。ここでは、5日移動平均線を例にします。下の図のように、当日を含む5日間の終値すべてを足して求められた値を5で割って、それぞれの日で5日移動平均を求めます。5日移動平均をつなげたものが、5日移動平均線になります。

上の図のような計算で描いた移動平均線は「単純移動平均線」、英語では「Simple Moving Average」と言います。英語名の頭文字を取って「SMA」と呼ぶのが一般的です。5日単純移動平均線なら「5日SMA」と表記します。
移動平均線にはこのほかにも、後述するようないくつかの種類が存在しますが、SMAは多くの日本人トレーダーが活用する、もっともオーソドックスな移動平均線です。
移動平均線の基本的な見方
移動平均線のもっとも大きな役割は、相場のトレンドをつかみやすくすることです。ローソク足だけでも、相場のトレンドを判断することは可能ですが、ローソク足は日々、ジグザクと上下しますし、上ヒゲや下ヒゲが存在することで、一時的にトレンドを見定めづらくなることがあります。価格よりも滑らかな動きになる移動平均線を使うと、大局的なトレンドが把握しやすくなります。
以下のチャートは、米ドル/円の日足チャートに、5日SMAを重ねて表示したものです。

(出所:サクソバンク証券)
移動平均線が上向き(上昇)で推移しているときは、一定期間の過去の平均値が切り上がっているので、買い方にとって有利な相場が続いている。反対に、移動平均線が下向き(低下)で推移しているときは、売り方にとって有利な相場が続いていると判断できます。
移動平均線と価格の位置関係
移動平均線と価格の位置関係で、そのときの市場参加者の心理が、どのような状況にあるかも推測できます。
5日移動平均は、当日を含めた5日間の終値の平均値です。これは、直近5日間の間にポジションを建てた市場参加者の、暫定的な建値とみなされます。
当日の価格が5日移動平均線を上回って推移しているときは、直近5日の間に買いポジションを建てた市場参加者には、平均的に含み益が出ていることになります。反対に、直近5日の間に売りポジションを建てた市場参加者には、平均的に含み損が出ていると判断できます(あくまでも平均的にです)。
移動平均線と価格の交差
価格が移動平均線を上から下へ突き抜けると、買い方の平均的なポジションは含み損に、売り方の平均的なポジションは含み益に転じます。反対に、価格が移動平均線を下から上へ突き抜けると、売り方の平均的なポジションは含み損に、買い方の平均的なポジションは含み益に転じます。価格と移動平均線が交差したポイントは、買い方と売り方の勢力が逆転するところと捉えることができます。

(出所:サクソバンク証券)
価格と移動平均線が交わることを「クロス」と言います。価格が移動平均線を下から上に突き抜けたときを「ゴールデンクロス(GC)」、価格が移動平均線を上から下へ割り込んだときを「デッドクロス(DC)」と呼び、クロスした局面を売買シグナルの発生とみなすのが、移動平均線のもっとも基本的な活用方法になります(クロスをシグナルの発生と見なすためには、ほかにも必要な条件があります)。
そのほかの活用方法
ほかにも、価格と移動平均線の距離が徐々に縮まってくれば、今後、買い方と売り方の勢力が逆転する可能性がありそうだと、事前に予測することもできます。
移動平均線の傾きが緩やかになってくれば、トレンドの勢いが弱まっていることがわかりますし、価格が移動平均線から一時的に大きくかい離しているようなところは、平均値と比較して相場が買われすぎや売られすぎの状態にあるとも判断できます。
また、多くの市場参加者が移動平均線を意識しながらトレードしているため、移動平均線自体が、サポートラインやレジスタンスラインとして機能することが多いという特徴もあります。
移動平均線の適切な期間
移動平均線は、求める期間によって傾きの角度が変わります。
下のチャートは、米ドル/円の日足に5日、50日、100日、200日のSMAを同時に表示したものです。

(出所:サクソバンク証券)
期間が短い移動平均線ほど動きは細かく、期間が長い移動平均線ほど緩やかで滑らかな動きになっているのがわかると思います。1日分の価格の変動が移動平均に与える影響が、期間によって異なるからです。
では、実際のトレードでは、どの期間の移動平均線を活用するのが良いのでしょうか?
期間が短いと、短期的なトレンドは把握しやすくなりますが、その分、価格と移動平均線が絡みつくように推移することが多く、クロスが頻繁に訪れてダマシも増えます。反対に期間が長すぎると、大きなトレンドは把握できますが、クロスの回数は減り、短期や中期のトレードチャンスを取りこぼす可能性があります。
移動平均線をメジャーな存在に押し上げたグランビルの法則には、200日移動平均線が用いられています。また、株式を対象にした日足の分析では、短期線に25日、中期線に75日、長期線に200日を使うのが一般的だと言われています。あるいは、短期線に5日、中期線に25日を使用するやり方もあると聞きます。しかし、明確な答えや決まりはありません。
特にFXでは、分析に最適な移動平均線の期間は、通貨ペアによって異なる場合が多いと聞きます。ほとんどのFX会社のチャートツールには、期間を任意に変更できる機能が備わっています。さまざまな期間の移動平均線をチャート上に表示させてみて、最適な期間を見つけ出すことが、有効に活用できる方法になると思います。
指標の値を算出するために用いる期間などの変数を、「パラメータ」と言います。移動平均線に限らず、パラメータを変更することで最適化を図れるテクニカル指標はほかにもあります。テクニカル分析の精度を高めていくためには、通貨ペアの特徴などに応じて、パラメータの値を変更する必要があることも覚えておきましょう。
移動平均線の弱点
移動平均線は、大局的なトレンドを把握するのには優れていますが、相場自体のトレンドには遅れる傾向があります。期間が長くなるほど、その傾向は強まります。相場が暴落や急騰をしても、移動平均線の傾きは、それほど急激には変化しません。
この傾向は、特にSMA(単純移動平均線)で顕著に現れます。相場自体のトレンドはすでに転換しているのに、SMAがトレンド転換のシグナルを発するまでに、時間がかかることがよくあります。移動平均線の「遅効性」と呼ばれるもので、弱点の1つです。

(出所:サクソバンク証券)
SMAには、ほかにも弱点と言える特徴があります。それは、期間中の価格をすべて平等に扱っていることです。相場は日々、新たな材料や市場参加者の心理を織り込みながら価格を形成しています。当日の価格と過去の価格、たとえば200日移動平均線なら、今日の終値と199日前の終値では、今の相場に対するウェイト(重要度)は違うんじゃない?という考え方です。
WMA(加重移動平均線)
SMAの弱点とされる遅効性やウェイトの問題を軽減させるものとして、海外のトレーダーを中心に活用されているのが「WMA (Weighted Moving Average)」という移動平均線です。日本では、「加重移動平均線」という名称で知られています。
WMAは、直近の価格にウェイトを置いた移動平均線です。5日WMAなら当日の価格が5倍、前日の価格が4倍…と、過去の価格になるほどウェイトを軽くすることで、直近の値動きが平均値に与える影響を大きくしています。

以下は、米ドル/円の日足チャートに期間50日のSMAとWMAの両方を表示したものです。WMAの方が価格のトレンドに早く反応しています。また、トレンドが発生しているときは、SMAよりもWMAの方が、価格に近い水準で推移していることが多いのもわかると思います。

(出所:サクソバンク証券)
ただ、WMAも万能ではありません。直近の価格にウェイトを置いているということは、直近の値動きが極端に少なかったり、一時的に動きすぎたときは、その動きを反映しすぎてしまって、かえって相場の状況を見定めにくくさせてしまうこともあります。WMAは比較的、緩やかに相場のトレンドが形成されている場面において、効果を発揮しやすいと考えられています。
WMAにも、フォローしきれていない問題点があります。いくら直近の価格にウェイトを置いた方が有効と考えられているとはいえ、採用期間の過ぎた価格をバッサリと切り捨ててしまって良いのか?という点です。
たとえば、今からちょうど99日前に、ものすごい相場の急変があったとします。その値動きは、今日までは100日SMAでは平等に、100日WMAではウェイトは低くなるものの一応考慮されます。でも明日になれば100日前の終値となり、SMAとWMAの算出期間からは外れます。明日からは、移動平均にまったく影響を及ぼさないということです。
EMA(指数平滑移動平均線)
WMAの問題点を補ったのが「EMA(Exponential Moving Average)」、日本語で「指数平滑移動平均線」と呼ばれる移動平均線です。WMAのように直近の価格にウェイトを置きつつも、採用期間が過ぎた価格のウェイトも完全にはゼロにせず、ある程度の影響を残す方法で算出されます。
以下は、米ドル/円の日足に、50日のSMA、WMA、EMAを重ねて表示したものです。それぞれ、動きに違いがあるのがわかります。

(出所:サクソバンク証券)
EMAは、SMAよりも相場のトレンドに早く反応していて、比較的、WMAよりも動きが滑らかなため、売買シグナルにダマシが少ないと考えられています。
トレードに適したMAはどれ?
移動平均は系列データを平滑化する手法として、金融だけなく、さまざまな分野で用いられています。一部の分野からは、算出期間を過ぎた価格を考慮するEMAは、移動平均ではないとの主張もあります。しかし、金融の世界ではEMAは非常によく知られた存在で、特に海外のトレーダーから高い注目を集めています。海外では、200日移動平均線を使った分析には、SMAよりもEMAが多用されているようです。
では、EMAがもっとも優秀な移動平均線なのかと問われれば、必ずしもそうではないという答えになります。移動平均線だけを使って売買ポイントを探るときは、日本のトレーダーにおなじみのSMAの方が、結果として有効だったということも少なくないようです。
基本的な分析にはSMAを活用して問題ないと思います。そして、WMAとEMAの特徴も理解して、通貨ペアや相場の状況に応じて有効と思えるものを選択できるようになれば、一段と強力な武器として活躍してくれることになるでしょう。
(最終更新日:2021年4月1日)
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