■トルコ東部でマグニチュード6.8の地震発生
1月24日(日本時間の25日未明)に、トルコ東部のエラズー県でマグニチュード6.8の地震が発生しました。
この地震によって87棟の建物が崩壊し、現時点で41名の死亡が確認され、1600人以上の人が負傷しました。地震後の救助活動で建物の下敷きになっていた45人が救出されましたが、1月29日(水)現在では、現地の救助活動も、ほぼ終わっているようです。
トルコは日本同様に地震大国で、1999年にイスタンブールから近い西部の都市イズミットでもマグニチュード7.6の大地震が発生し、約1万8000人が亡くなり、5万人以上が負傷しました。
当時大学生だった私は、日本からボランティア活動のために一時帰国し、1カ月近く被災地暮らしをした経験があります。
トルコの建物は耐震性を有しておらず、1999年の地震以降、建築基準が大きく変更されましたが、まだまだ古い建物がたくさんあります。
■地震によるGDPへのマイナスインパクトはなさそう
1999年と今回の地震を比較しますと、地震の大きさはもちろんのことですが、発生した地域に大きな差があります。
1999年の地震は、トルコの産業が集中していて、人口密度の高い西にあるマルマラ地方で発生。地震の被害を受けた地域は、トルコの人口の30%が住んでいて、GDPの約4割を産出していました。
地震による物理的な被害額も、当時、トルコのGDPの約10%に相当する2兆円近く。地震後の復興にも時間がかかり、トルコ経済が不況に陥りました。
地震後の景気減速は、2001年に起きたトルコ銀行危機の引き金になり、トルコ経済は本格的な景気後退に直面したのです。
【参考記事】
●大暴落と安定。約30年間のトルコリラ相場を振り返る。エルドアン政権の功罪とは?
エルドアン政権が誕生した理由も、実は、この大地震だと言われています。地震後の景気後退が現存の政党の支持率を著しく低下させ、2003年の総選挙で新政党だったAKP(公正発展党)に勝利をもたらしました。
1999年の大地震後の景気後退が、2003年の総選挙で、当時、新政党だったエルドアン氏率いるAKP(公正発展党)に勝利をもたらしたという (C)Anadolu Agency/Getty Images
今回、地震が起きた地域が、人口密度の低い東部であることは不幸中の幸いであり、被災者の数は限られています。
経済的にも、トルコのGDPに大きなマイナスインパクトはないと予想しています。
(出所:Bloomberg)
■新型コロナウイルスにより、トルコリラ/円は下落
今週(1月27日~)のトルコリラは、対米ドルでほとんど動きませんでしたが、対円では18.20円台まで下がる場面がありました。
(出所:Trading View)
新型コロナウイルス感染拡大のニュースで、円高が進んだからです。新型コロナウイルス感染はどこまで拡大するのか、エピデミック(※)になるのか、それともパンデミックになるのか、現時点では予想不可能です。
(※編集部注:「エピデミック」とは、流行の規模を示す用語で、規模の小さい順に「エンデミック」、「エピデミック」、「パンデミック」となっている)
しかし、個人的には、過度な円高にはならないと考えています。今回のケースで参考になるのは、2002年~2003年に発生したSARSエピデミックです。
■SARSと同じなら、米ドル/円は約5%下落を想定
SARSは、2002年の11月に中国の広東省で初めて報告されましたが、世界の注目を集めたのは、翌年(2003年)2月。
まさに、今回の新型コロナウイルスと同じパターンです。エピデミックが始まった時、米ドル/円は122円近辺でしたが、WHO(世界保健機関)が勝利宣言した2003年7月までに、116円程度まで下がる場面がありました。
(出所:Bloomberg)
つまり、最大で約5%の下落でした。
今回も、米ドル/円は105円程度までの円高の可能性はあると考えますが、それ以上の円高は想定していません。その場合、トルコリラ/円の下値も17.50円程度となるでしょう。
(出所:Trading View)
(出所:Trading View)
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