■豪ドルは新型コロナウイルスの悪影響を織り込む
ただ、為替市場では、中長期に渡る新型コロナウイルスの悪影響を織り込む動きが活発化しています。筆頭は、豪ドル。
新型コロナウイルスの感染拡大による中国経済失速の影響を受けるのは、アジア。
【参考記事】
●インフレ懸念も、トルコ経済は回復継続へ。新型コロナによる中国経済の減速も追い風!?(2月12日、エミン・ユルマズ)
その中で、中国経済との関係が極めて深いと言われる主要国といえば、やはり豪州です。
豪州は、昨年(2019年)末からの大規模森林火災、シドニーの洪水と困難な状況が続いていました。
それに加えて、コロナショックで観光、そして、貿易が低迷するとの懸念が拡大。
結果、年初から1月末までの豪ドルは、主要国でもっとも値を下げた通貨になっています。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
そして、2月に入り、新型コロナウイルスの感染拡大報道は、さらに加速。
呼応して、豪ドルはさらに大きく値を下げるはずですが、逆に底堅さを増しています。
本稿執筆時点(2月12日)までの豪ドルは、一転して、主要国でもっとも値を上げた通貨になっています。
その要因のひとつは、RBA(オーストラリア準備銀行[豪州の中央銀行])。
マーケット参加者の一部は、コロナショックの影響を考慮し、2月4日(火)の金融政策決定会合でRBAが0.25%利下げをするのではないか? と期待していました。
しかし、RBAの判断は据え置き。
これは、RBAが「コロナショックによる悪影響は、豪ドルにプライスイン、つまり織り込まれた」と考えており、今後の経済への悪影響は限定的だと想定していることになります。
結果、今後の豪ドルは、経済の回復を織り込む形で底堅く推移していく可能性が高まります。
(出所:Trading View)
■ドイツの政局混乱とコロナショックでユーロが下落
一方、欧州通貨は下落基調が鮮明。
ユーロ/米ドルは、節目の1.0900ドルを割り込む展開。
(出所:Trading View)
この要因にはまず、ドイツの政局の混乱が挙げられます。メルケル首相公認の次期首相候補であるクランプカレンバウアー党首が辞任し、政局不安が拡大しているのです。
メルケル独首相の出身母体であるキリスト教民主同盟(CDU)では、クランプカレンバウアー党首が10日、年内に辞任すると発表。
予想外の辞意表明で、将来の首相の座を巡るレースは一気に予測不能になり、メルケル氏はCDUの次期首相候補選びに自ら関与する意向を示した。
出所:Bloomberg
それに加え、コロナショック。
中国経済との関係が極めて深いと言われる主要国といえば、豪州に次いでドイツです。ドイツにとって、中国は極めて重要な輸出相手国。
ロイターの記事によれば、「過去30年間、欧州最大の経済大国であるドイツにとって、自国製の自動車、機械、エンジニアリングツールに対する中国の旺盛な需要は、成長の安定した原動力として、歴代のドイツ政権もその恩恵をありがたく享受してきた」とあります。
その中国の旺盛な需要が、コロナショックにより、急激に後退する懸念が拡大しています。
そして、豪ドルは中国の景気減速を織り込んでいる状態ですが、ユーロは中国の需要後退をこれから織り込む展開。
これが、ユーロを4カ月ぶりの安値圏内に下落させた要因です。
繰り返しになりますが、豪ドル/米ドルはコロナショックをすでに織り込んでおり、現時点では、豪州経済の回復を織り込む段階で底堅く推移。
結果、新型コロナウイルス報道で値を下げているユーロと反発に転じている豪ドルという構図になり、ユーロ/豪ドルは続落。
このユーロと豪ドルの流れは当面の間持続し、ユーロ/豪ドルは1.55豪ドル方向へ続落するのではないかと考えています。
(出所:Trading View)
新型コロナウイルス感染拡大報道で値を下げているユーロとすでに反発に転じている豪ドルにより、下落基調が鮮明となったユーロ/豪ドルの行方に注目です。
【ザイFX!編集部からのお知らせ】
ザイFX!で人気の西原宏一さんと、ザイFX!編集部がお届けする有料メルマガ、それが「トレード戦略指令!(月額:6600円・税込)」です。
「トレード戦略指令!」は10日間の無料体験期間がありますので、初心者にもわかりやすいタイムリーな為替予想をはじめ、実践的な売買アドバイスやチャートによる相場分析などを、ぜひ体験してください。
株主:株式会社ダイヤモンド社(100%)
加入協会:一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(JCBA)