■原油価格暴落で、逆オイルショックに揺れる
世界市場は、原油価格の暴落による逆オイルショックに揺れています。
新型コロナウイルスによる需要の急減で、原油の貯蔵スペースがなくなり、米国産原油を表しているWTI(Western Texas Intermediate)の5月限はマイナス40ドルまで下がるという前代未聞の出来事が発生しました。
(出所:Bloomberg)
同じく、6月限も昨日(4月21日)、15ドルを下回っていて、原油の需要が6月まで回復しないだろうとの見方が広がっています。
(出所:Bloomberg)
トルコにとって大事なブレント原油の価格も、今週(4月20日~)、大きく下がり、20ドルを割ってしまいました。
(出所:Bloomberg)
■原油下落はトルコリラの追い風にならず…
本来、原油価格の下落は、トルコにとって経常赤字の縮小を意味し、トルコリラには追い風になるのですが、今回は、そうなっていません。
その理由は、トルコリラの向こう3カ月間におけるインプライドボラティリティの急上昇です。これによって、トルコリラの乱高下をヘッジするためのコストが暴騰しています。
(編集部注:「インプライドボラティリティ」とは、原資産価格の将来の変動率を予測したもので、予想変動率とも呼ばれている)
(出所:Bloomberg)
ヘッジコストは現時点で、トルコリラの過去20年間の平均に比べ、11%も高くなっています。これは、トルコ中銀の外貨準備高が歴史的に低い水準にあることに対する市場の懸念を表していると考えます。
また、トルコの新型コロナウイルス感染者数が、世界で7位に上昇したことも原因のひとつです。
トルコの新型コロナウイルスの感染者数は、4月21日(火)時点で9万5591人に、死者の数は2259人に達しています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
感染拡大は鈍化傾向があったものの、先々週(4月6日~)の外出禁止令パニックのせいで再び増加に転じた模様です。
【参考記事】
●トルコの新型コロナ感染拡大は鈍化傾向。トルコリラ/円は15.50円前後で下げ止まるか(4月15日、エミン・ユルマズ)
感染者数は多いものの、死亡者数は人口100万人当たり27名で、米国と欧州主要国に比べ少ないです。死亡者数については、「政府が本当の数字を公表していないのでは?」という陰謀説から「トルコも日本同様にBCG(結核予防ワクチン)の予防接種をしたから」というBCG説まで、さまざまな見方が飛び交っています。
トルコ政府は平日のロックダウン(都市封鎖)を行わず、週末だけに限定しています。一方で、すべての学校が休校で、20歳以下と65歳以上の国民に関しては外出禁止令が出されています。
■トルコリラは下落トレンドが継続
今週(4月20日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円で下げトレンドが止まらず、米ドル/トルコリラは、一時6.99リラ水準まで上昇。トルコリラ/円は、15.40円水準まで下がってしまいました。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
前回のコラムで、IMF(国際通貨基金)関連のポジティブニュースが出ない場合、米ドル/トルコリラが7.00リラを超える可能性が高いことを指摘しました。
【参考記事】
●トルコの新型コロナ感染拡大は鈍化傾向。トルコリラ/円は15.50円前後で下げ止まるか(4月15日、エミン・ユルマズ)
トルコ中銀は米ドル/トルコリラにおいて、7.00リラを越させないよう為替介入を続けていますが、これは新型コロナショック前の6.00リラを越させないための努力といっしょで、ある程度の効果はあるものの、トルコ中銀の外貨準備高が底をついている現状では、あまり期待できないことが明らかです。
トルコ中銀の資金ニーズは高く、各国の中銀とのスワップ協定の締結を急いでいます。支払い期限が今年(2020年)中に来るトルコの対外債務は約1700億ドルで、トルコ中銀はFRB(米連邦準備制度理事会)に加え、BOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])とも、スワップ協定を新たに結ぼうとしています。
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