■市場は過度なリスクオフから秩序あるリスクオフへ
新型コロナウイルスによる世界経済の混乱が継続していますが、市場は、一時期のパニック状態から脱したように見えます。
リスクオフ自体は継続しているものの、過度なリスクオフから秩序あるリスクオフに移行したと言えるでしょう。
一方で、先行きについての不透明感が強く、パンデミックの収束時期がわからないので、足元のマクロ指標も解釈しにくいのが現状です。現時点でもっとも意味のある指標は、各国の感染者数の推移と感染拡大が天井を打ったかどうかだと考えます。
トルコも例外ではありません。トルコのコロナウイルスの感染者数は、4月7日(火)時点で3万4109人、死者数は725人に達しました。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
感染者の数は1週間で約5倍に、死者の数は約3倍になっていますが、先々週(3月23日~)から先週(3月30日~)にかけて、これらの増加ペースが10倍と5倍だったことを考えると、感染拡大の勢いが少し鈍化しているように見えます。
【参考記事】
●トルコが感染拡大でもロックダウンできない理由は? トルコリラ/円は15.50円まで下落か(4月1日、エミン・ユルマズ)
■トルコ政府は200万世帯を対象にした社会支援計画を発表
トルコでは65歳以上に加え、20歳以下の住民の外出も禁止されました。これは自粛要請ではなく、外出しているのが見つかったら、その場で警察に拘束されるか、罰金を払わされるかレベルの強制力を持った措置です。
外出禁止令が発令されたことを受け、トルコ政府は200万世帯を対象にした社会支援計画を発表しました。1世帯あたり、1000リラの直接援助が行われるとのことです。
また、トルコ政府は4月5日(日)に、外出禁止令の対象となっていない20歳から64歳までの市民に対して、1人当たり週5枚のマスクを配布すると公表しています。無料で配布されている、これらのマスクの転売も固く禁じられています。
エルドアン大統領は、4月6日(月)に行った国民に向けた演説で、交通機関やその他の公共の場でマスク着用が義務付けられることを発表しました。
トルコ政府は200万世帯を対象にした社会支援計画を発表。1世帯あたり1000リラの直接援助が行われるという。エルドアン大統領は国民に向けた演説で、交通機関やその他の公共の場でマスク着用が義務付けられることを発表した (C)Anadolu Agency/Getty Images
■トルコリラ相場は6-7月の感染収束がカギに
今週(4月6日~)のトルコリラですが、対米ドルでの下げトレンドが継続し、米ドル/トルコリラは一時、6.80リラに迫る水準に達しました。
(出所:IG証券)
一方で、今週(4月6日~)、円安が進んだことが貢献し、トルコリラは対円では、まだ16円台を維持しています。
(出所:IG証券)
感染の勢いが鈍化しているとはいえ、トルコの感染者数が世界全体で第9位になってしまっていることが、トルコリラの売り材料になっています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
■ゴールドマン・サックスがトルコのGDP予想を大幅下方修正
ゴールドマン・サックスは、今週(4月6日~)出したレポートで、トルコの2020年におけるGDP成長率予想をマイナス0.2%からマイナス5.0%に大きく下方修正しました。
ちなみにゴールドマン・サックスは、トルコの最大の貿易相手であるユーロエリアではマイナス9.0%のGDP縮小を予想しているようです。
トルコリラの今後の動きは、6-7月までに感染が収束するかどうかにかかっていると考えます。夏は観光シーズンであり、トルコが外貨を稼ぐ時期でもあります。
パンデミックが長引いて、観光収入が、今年(2020年)、まったく期待できないような状況になれば、トルコは流動性危機に陥る可能性があると考えます。
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