■突然の外出禁止令発表で、トルコ国民はパニックに
トルコの政治情勢は、先週(4月6日~)から大きく動いています。
新型コロナウイルス感染拡大を止めるために、トルコ政府は4月10日(金)に、週末(4月11日と12日のみ)の外出禁止令を出しました。
しかし、外出禁止令が国民に知らされたのは4月10日(金)の22時。つまり、開始わずか2時間前でしたので、パニックになった国民が一斉に食料の買い出しに走り、街がカオス状態になりました。
パン屋やスーパーの前に長蛇の列ができ、人が密集しすぎたため、新型コロナウイルスの感染がさらに拡大するのではないかとの懸念で、政府が大きな批判にさらされることになりました。
政策の失敗の責任をとって、ソイル内務大臣が辞任を表明しましたが、エルドアン大統領はこれを受け入れず、ソイル大臣は続投となりました。
■トルコの新型コロナ感染ペースは鈍化傾向
トルコの新型コロナウイルスの感染者数は、4月14日(火)時点で6万5111人に、死者の数は1403人に達しています。
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
(出所:Worldometerのデータを基にザイFX!編集部にて作成)
感染者と死者の数は、先週(4月6日~)に比べ約2倍になっていますが、新型コロナウイルスの感染確認をするための検査を行った住民の数も44万人まで増えていますので、感染拡大のペースは鈍化してきています。
トルコ政府は今週(4月13日~)、感染リスクの高まりを考慮し、約9万人の受刑者の釈放を決めました。釈放された受刑者には、殺人犯やテロ犯に加え、政治犯は含まれていません。
ジャーナリストを含む政治犯が釈放されなかったことは、国内外から大きな批判を浴びています。
■IMFとの緊急支援交渉不調のウワサでトルコリラ下落
今週(4月13日~)のトルコリラですが、対米ドルと対円で大きく値を崩しています。米ドル/トルコリラは6.81リラを超え、トルコリラ/円は15.70円近辺まで下がっています。
トルコ政府は、緊急支援を受けたくてIMF(国際通貨基金)と交渉しているとのウワサでトルコリラが上昇する場面もありましたが、今週(4月13日~)に入ってからIMFとの交渉がうまくいっていないとのウワサが広がり、売りが加速しました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
■トルコリラ/円は15.50円前後で下げ止まる可能性も
トルコリラは3月、主要新興国通貨に比べ、底堅い動きを見せていましたが、それがトルコ中銀の為替介入のおかげであったことが、最近、明らかになってきています。
【参考記事】
●トルコ中銀が直接介入でリラを下支え!? イラン情勢より重要なリビア内戦を解説(1月15日、エミン・ユルマズ)
スワップ協定分を含むトルコの純外貨準備高は、現時点で270億ドルまで下がっています。スワップ協定分を除くとマイナスに陥っています。
トルコの資金ニーズが高いのは明らかで、IMFのウワサがどこまで正しいのかはわかりませんが、IMF関連でポジティブなニュースがあれば、トルコリラは反発すると考えます。
一方で、何もなければ、このまま米ドル/トルコリラは7.00リラを超える可能性が高いと考えます。
(出所:IG証券)
トルコメディアによれば、トルコ政府は、米ドル/トルコリラが7.00リラを超えたら、米ドル建て預金を持っているトルコ人の多くが、米ドルをトルコリラに換えると考えているようです。
楽観的な見方ではありますが、確かに、2018年のトルコリラショックの時に米ドル/トルコリラの天井付近で米ドルを買って、まだ含み損を抱えているトルコ人が多いので、政府の考えは一理あります。
米ドル/トルコリラが7.00リラまで上昇すれば、トルコリラ/円は15.50円前後まで下落していると考えるので、ここまで来たら下げトレンドは、いったん止まる可能性があります。
(出所:IG証券)
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