■パウエルFRB議長、マイナス金利導入に否定的
先週(5月11日~)の金融市場での重要イベントは、13日(水)のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長の講演になります。
講演前に、トランプ大統領がマイナス金利の導入を支持する発言をしていたことで、パウエル議長の発言が、これに沿ったものになるのかが注目されていました。
トランプ大統領からマイナス金利導入の圧力をかけられているFRBのパウエル議長。5月13日の講演内容が注目された (C)Bloomberg/Getty Images News
しかし、パウエル議長はこれまで同様、マイナス金利の導入を現時点では否定し、NYダウなどは下がりました。
【参考記事】
●米マイナス金利導入の可能性は低いが、仮にマイナス金利導入でも米ドルは買われる!(5月15日、陳満咲杜)
●状況次第で米国でもマイナス金利導入か。ドル/円レンジは106~108円。逆張り継続!(5月14日、今井雅人)
●マイナス金利導入も? 注目は主要中銀の金融政策。豪ドルは押し目買いの好機(5月14日、西原宏一)
●現実とマーケットの違いに猛烈な違和感。米マイナス金利導入なら米ドル大暴落も…(5月13日、志摩力男)
(出所:TradingView)
■トランプ大統領が米ドル高を容認した理由は?
5月14日(木)には、トランプ大統領が、「今は米ドル高が良い時期だ」と発言したことで、一時的に米ドル高に推移しました。
これまでは、米ドル安を容認する発言を繰り返していましたが、コロナショック後からは、米ドル高を容認する発言に切り替わっています。
「今は米ドル高が良い時期だ」と発言したトランプ大統領。バカラ村氏は、コロナショック後から、トランプ大統領は米ドル高容認に切り替わっていると指摘 (C) Chip Somodevilla/Getty Images News
新型コロナウイルスの影響で、1930年以来の景気後退に陥っており、各国の需要も落ちていることから、米国からの輸出も期待できません。米ドル安のメリットが少なくなっていることもあって、米ドル高容認へと発言が変わってきています。
【参考記事】
●トランプの米ドル高発言は神予想の再来!? 米ドル/円、106円台ミドルは買ってもいいか(5月18日、西原宏一&大橋ひろこ)
これまでの外需主導から、内需主導にシフトしているとも言えます。
■いつ、リスク回避の材料が顕在化しても不思議ではない
5月15日(金)には、米商務省が中国通信機器大手ファーウェイへの規制強化を発表しました。中国に対して、新型コロナウイルス関連の制裁を始めているのではないかと思います。
オーストラリアも中国に対して、新型コロナウイルス発生源の調査を求めていましたが、これに対して中国は、オーストラリアからの食肉製品の輸入停止や、大麦に制裁関税をかけることを発表。中国とオーストラリアの関係も悪化してきています。
株式市場は、財政政策や金融政策もあって、まだ底堅い推移をしていますが、いつ、リスク回避の材料が顕在化してきても不思議ではない状態となっています。
■リスク選好も、上昇トレンドとの判断は早い!
ただ、昨日(5月18日)に関しては、米バイオ医薬ベンチャーのモデルナ社が、新型コロナウイルスワクチンの第1段階の臨床試験で、良い結果が得られたと発表したことで、リスク選好の動きとなっています。
株式市場だけでなく、為替市場もレンジ下限に位置していたこともあって、この報道に反応し、上昇しています。
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ただ、レンジ相場のときは、レンジ下限では好材料に反応しやすく、レンジ上限では悪い材料に反応しやすいため、ワクチンの報道で上昇トレンドになると判断するには、まだ早いようにも思います。
【参考記事】
●楽観的になりきらないうちは、株は底堅い。ユーロ/米ドルは1.07割れ見据えた戻り売り(5月12日、バカラ村)
■英ポンド/米ドルは4月安値を下抜け
為替市場において、主要通貨ペアの多くはレンジ相場が続いていますが、英ポンド/米ドルは、4月の安値を下抜けてきました。
(出所:TradingView)
英国は、12月末にEU(欧州連合)から離脱することになります。もともと、EU側との交渉期間は短かったのですが、新型コロナウイルスで交渉どころではなくなり、ジョンソン英首相も一時的に体調を崩していたこともあって、交渉がまだ、ほとんど進んでいません。
もし、12月末の離脱期限を延期するのであれば、そのことを6月末までに決めなければいけませんが、ジョンソン英首相は延期を否定しており、そのため、英ポンドが軟調に推移しています。
■6月末に向けて、英ポンドの上値は重くなりそう
ただ、英国側もEU側もチキンレースをしているだけであり、どこかで折り合いがつくものと思います。
市場参加者も、そのように見ていると思いますので、サポートを下抜けたからといって、英ポンドを積極的に売るほどの状況でもないと考えています。
ただ、もしものときのために、ヘッジをしなければいけない市場参加者もいるため、6月末が近づくにつれて、英ポンドの上値は重くなると考えています。
(出所:TradingView)
英ポンド/米ドルは、1.26ドル台でダブルトップをつけていることもあり、戻り売りで良いのではないかと考えていますが、全体的には主要通貨ペアでレンジ相場が続いていることもありますので、他の通貨ペアがレンジ上限付近にくるまでは、英ポンド/米ドルも上昇するのではないかと思います。
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