■トルコの外貨準備高は年初から500億ドルの大幅減
コロナ・パンデミックは、新興国から大量の資金流出を招き、新興国経済を悪化させました。その結果、主要新興国の米ドル建て対外債務が膨らみ、外貨ニーズが高まっています。
トルコも例外ではなく、外貨ニーズがもっとも高い新興国のひとつです。
IMF(国際通貨基金)が直近で公表した報告書によると、トルコ中銀の外貨準備高は、トルコの短期対外債務の80%まで下がっています。IMFは適正水準を短期債務の100%としていますので、トルコは赤信号を点灯していることになります。
先週(6月29日~)、トルコメディアでも米国の格付け会社フィッチの報告書が話題になりました。フィッチによれば、トルコ中銀の6月末の外貨準備高はスワップ協定などで獲得しているぶんを除けば、マイナス276億ドルとなっているそうです。年初の220億ドルから、およそ500億ドルも減ったということになります。
日本円に換算すると5兆円を超えるこの外貨準備高の多くは、トルコリラの為替レートを安定させるために使われたと推定されています。
(出所:IG証券)
■トルコ中銀の為替介入でトルコリラのメルトダウン阻止
トルコ中銀は、連日の為替介入で米ドル/トルコリラの頭を押さえ、トルコリラのメルトダウンを阻止しました。
(出所:IG証券)
一方で、トルコは年内に償還を迎える債務が約1650億ドルあり、トルコの外貨ニーズが最大限に達しています。
本来、もっとも外貨を獲得しやすいセクターである観光業も、パンデミックの影響で大打撃を受けている状況です。
【参考記事】
●リビア内戦がトルコとエジプトの戦争に!? 新観光政策の効果がリラの運命を決める!(6月24日、エミン・ユルマズ)
たとえばドイツでは、トルコを訪問した人が帰国した際には、2週間の強制隔離措置をとっています。トルコ政府は、ドイツ政府にこの措置を撤廃するよう呼び掛けていますが、まだ撤廃されていません。
トルコ政府はドイツ政府に強制隔離措置の撤廃を呼び掛けているが…。写真はエルドアン大統領が2018年の国連総会後にドイツのメルケル首相を訪問したときのもの (C)Bloomberg/Getty Images
■クルバン祭り(犠牲祭)がトルコリラ上昇の追い風に
今週(7月6日~)のトルコリラですが、対米ドルと対円でほとんど変わらず、米ドル/トルコリラは6.85リラ前後、トルコリラ/円も15.60円前後の狭いレンジで動いています。
7月31日(金)から8月3日(月)まで、トルコはクルバン祭り(犠牲祭)となります。ラマダン祭りと並ぶイスラム教の2大祭りのひとつで、その前に買い物需要が増えるので、7月後半からトルコリラが上昇する要因になると予想しています。
【参考記事】
●FX会社が警戒するトルコの「犠牲祭」とは? 日本発のトルコリラショック再開はある!?
トルコ国民は、米ドル建て預金や金(ゴールド)を売ってトルコリラを買うので、トルコリラが上昇に転じやすい(買われやすい)です。
(出所:IG証券)
また、外国人観光客がほぼゼロになったので、観光業にとってもクルバン祭り(犠牲祭)が救いになる可能性があります。すでにトルコ南部のホテルは、国内観光客向けの割安パッケージの販売を始めています。
写真はトルコと同じイスラム教国、パキスタン・イスラム共和国(通称・パキスタン)でのクルバン祭り(犠牲祭)の様子。エミンさんによると、クルバン祭りの前は買い物需要が増えるので、7月後半からトルコリラが上昇する要因になると予想しているそうだ (C)Anadolu Agency/Getty Images
■年末までにトルコリラ/円は14.50円までの下値想定
トルコリラに関しては、9月までは大きな動きはなく堅調に推移すると予想していますが、9月以降は、やはり外貨ニーズの高まりから下落トレンドに入る可能性が高いと考えます。
年末までに、トルコリラ/円で14.50円までの下値を想定したおいた方が無難です。
(出所:IG証券)
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