■トルコがS-400発射実験を実施か。失敗だったようだが…
トルコは10月16日(金)に、ロシアから購入した地対空ミサイルS-400の発射実験を行いました。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2019年2月27日、エミン・ユルマズ)
トルコ政府は事前に、北部にあるシノップ空港の航空交通を10月16日(金)まで停止すると発表していましたが、同日、ミサイルの発射実験を行ったことが報道されています。
トルコ政府はS-400発射実験を実施した報じられたが、ロシアメディアは実験は失敗したことを報じている。写真はエルドアン大統領 (C)Anadolu Agency/Getty Images
また、10月20日(火)にロシアメディアは、発射実験が失敗したことを報道しています。
トルコ政府から発射実験について正式発表がなかったことを考えると、実験は、ロシアメディアの報道どおり失敗した可能性が高いと考えます。成功していた場合、エルドアン寄りのメディアは大々的に報道していたでしょう。
【参考記事】
●米大統領選の結果はトルコリラにも影響大!バイデン優勢でトルコと米国の関係悪化!?(10月14日、エミン・ユルマズ)
■米国はS-400発射実験を批判。制裁を科すべきとの主張も
米国防省の報道官は、発射実験後に「S-400を稼働させることは米国の同盟国、そしてNATO(北大西洋条約機構)加盟国として、あるまじき行為である!」とトルコ政府を非難しました。
また、米上院外交委員会の会長である共和党のジム・リッシュ上院議員は、トルコの発射実験は「同盟国の行動として受け入れることができない」と発言。
同じく外交委員会の民主党メンバーであるボブ・メネンデス上院議員は、トランプ政権がエルドアン政権に甘すぎると批判し、即座にトルコに制裁を科すべきと主張しました。
■バイデン政権誕生なら、制裁発動リスクでトルコリラを圧迫
S-400問題については、共和党よりも、やはり民主党の方がトルコに対して厳しい態度を望んでいることがわかります。
米国では、選挙まであと2週間となりましたが、共和党は大統領だけではなく、上院の過半数を失う可能性も指摘されています。そのシナリオが実現した場合、トルコのエルドアン政権にとって大きな打撃となるでしょう。
バイデン氏が当選した場合、大統領に就任するのは来年(2021年)の1月になるので、すぐに対トルコ制裁が打ち出されることはありませんが、バイデン政権誕生によるCAATSA(敵対者に対する制裁措置法)の発動という大きなリスクが、トルコリラを圧迫することは避けられないでしょう。
【参考記事】
●米大統領選の結果はトルコリラにも影響大! バイデン優勢でトルコと米国の関係悪化!?(10月14日、エミン・ユルマズ)
バイデン政権誕生によるCAATSA(敵対者に対する制裁措置法)発動という大きなリスクがトルコリラを圧迫することは避けられないというのが、エミンさんの見方 (C)Scott Olson/Getty Images News
■引き締め継続なら、短期的にトルコリラ/円は14円まで上昇か
今週(10月19日~)のトルコリラは、大きな動きはなく、対米ドルで7.90リラ前後、対円では13円台前半の狭いレンジで推移しています。
投資家の注目は10月22日(木)に行われるトルコ中銀の政策会合ですが、前回と違って市場では利上げ期待が高まっています。
【参考記事】
●米大統領選の結果はトルコリラにも影響大! バイデン優勢でトルコと米国の関係悪化!?(10月14日、エミン・ユルマズ)
少なくとも、2%程度の利上げが市場関係者の間でコンセンサスになっています。
私は、2%の利上げだけでトルコリラの下落トレンドが止まって、大きく上昇に転じるとは思いませんが、トルコ中銀が引き締め姿勢を今後も続けるというシグナルを出せば、見通しは変わってきます。
その場合、短期的に対米ドルで7.50リラ、対円では14円までの上昇を見込んでいます。
(出所:IG証券)
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