■10月トルコ中銀政策会合での利上げ期待高まるが…
トルコ中銀は、先週(10月5日~)金曜日(10月9日)に、トルコリラのスワップレートを10.25%から11.75%に1.50%引き上げました。
これを受けて、7.95リラまで上昇していた米ドル/トルコリラが、いったん7.80リラ台半ばまで下がりましたが、その後、再び上昇に転じました。
(出所:IG証券)
スワップレートの引き上げを受け、市場では10月22日(木)に行われるトルコ中銀の政策会合で、再び、政策金利の引き上げが行われるのではないかとの期待が上がっています。
政策金利引き上げの可能性は、確かに高まっていますが、問題はその程度です。1.50~2.00%程度の引き上げでは市場が満足せず、トルコリラの下落トレンドを止めることは難しいと考えます。
(出所:Bloombergのデータを基にザイFX!編集部が作成)
■パンデミックリスク後退で、経済はきれいなV字回復?
IMF(国際通貨基金)の予想によると、トルコ経済は2020年に5%縮小し、2021年に5%成長します。つまり、トルコ経済は、きれいなV字回復を描くということです。
IMFは、世界の主要国についても同様のV字回復を予想していて、新型コロナウイルスのワクチン配布開始に伴ったパンデミックリスクの後退をメインシナリオにしていると思われます。
一方で、トルコに関して、1人当たりのGDPは、米ドルベースで今年(2020年)は7715ドルとなり、来年(2021年)は7659ドルに下がると予想しています。その理由は、トルコリラ安です。
■米ドル/トルコリラは、8.00リラの攻防。政策会合次第か
今週(10月12日~)のトルコリラですが、対米ドルでは、再び7.90リラを超え、対円では13円台前半で推移しています。
米ドル/トルコリラは、8.00リラの攻防が始まっていますので、8.00を超えるどうか、来週(10月19日~)のトルコ中銀の政策会合次第ということになります。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
■アルメニアとアゼルバイジャンの戦闘は停戦合意
アルメニアとアゼルバイジャンの戦闘ではポジティブな動きがありました。ロシアの仲介によって、両国は10月10日(土)に停戦合意に達しています。停戦後も小規模の衝突が続いているものの、大規模な戦争リスクが減ったと考えます。
【参考記事】
●トルコ中銀、利上げでもトルコリラ/円は13.50円割れ。覇権争いでまた代理戦争!?(9月30日、エミン・ユルマズ)
これは、トルコリラ買いの材料となりましたが、トルコがS-400ミサイルのテストを始めるとの報道が売り材料にされました。
【参考記事】
●トルコリラはスワップ金利狙うには好環境!? トルコが抱えるリスク、S-400問題とは…?(2019年2月27日、エミン・ユルマズ)
トルコ政府は、北部にあるシノップ空港の航空交通を10月16日(金)まで停止し、ミサイルの実験を行うことを発表しました。
これを受け、米外務省は懸念を表明し、トルコにS-400の使用をやめるように要求しています。
■バイデン候補優勢でトルコと米国の関係悪化?
米国とトルコの関係は改善傾向にあったものの、エルドアン政権に批判的なバイデン候補の当選確率が高まったことで、再び悪化し始めていると思います。
米国とトルコの関係は改善傾向にあったが、米大統領選挙におけるバイデン氏の当選確率が高まったことで再び悪化し始めているという。写真は2019年6月に開催されたG20大阪サミットで会談するエルドアン大統領とトランプ大統領 (C)Anadolu Agency/Getty Images
直近では、エルドアン寄りのトルコメディアによるアンチ・バイデン報道が活発になっていることから、エルドアン政権が、バイデン氏の当選を本気で懸念していることがわかります。
エルドアン政権寄りのメディアのアンチ・バイデン報道が活発になっていることから、エルドアン政権がバイデン氏の当選を本気で懸念していることがわかるという (C)Scott Olson/Getty Images News
S-400を使わないという暗黙の合意の元に、トランプ政権は「CAATSA(敵対者に対する制裁措置法)」による対トルコ制裁を実施しませんでした。
トルコが再びS-400を使おうとしていることは、これを新政権との交渉ネタにする狙いだと思います。
米大統領選挙の結果は、トルコリラにも大きな影響を与えることになりそうです。
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