■年末に向けて消費者物価指数の上昇圧力が強まるか
トルコ統計局は、10月5日(月)に9月のCPI(消費者物価指数)を公表しました。
CPIは、前月比でプラス0.97%、前年比では11.75%となりました。市場予想は12.33%でしたので、事前予想よりポジティブな結果です。
項目別で見た時に、通信、衣料品、教育は物価上昇が少ないのに対して、食品・飲料とサービスセクターにおいては物価上昇が大きいです。
(出所:Bloomberg)
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一方で、同じ日(10月5日)に公表されたPPI(生産者物価指数)は、前年比で14.33%に上昇し、市場予想である13.20%を上回りました。
(出所:Bloomberg)
PPIが上昇したおもな要因は、トルコリラの下落による輸入コストの増加です。
生産者は、数カ月以内にコストの増加を最終価格に反映させるでしょうから、年末に向けてCPIの上昇圧力が強まると予想しています。
■トルコ国民が感じるインフレ率は30%近いとの見方も…
そもそもトルコが公表しているインフレ率の数字は、信頼できるのでしょうか?
トルコのインフレ率を計算して公表しているのはTUIK(トルコ統計局)ですが、近年公表されている数字の信憑性を問う声も多くなっています。
国民が肌で感じるインフレ率は、前年比で30%に近いとの見方があります。この数字は、トルコリラの年間下落率にも近いので、個人的に違和感がない水準です。
その観点で考えると、直近の利上げはポジティブでありながら、実質インフレを大きく下げているため、投資家を満足させ、トルコリラの下落を止めるほどの効果は期待できないことがわかります。
■外貨購入税引き下げで、トルコリラ急落リスクは低下
今週(10月5日~)のトルコリラですが、対米ドル、対円で下落がいったん止まって、米ドル/トルコリラは7.80リラ水準、トルコリラ/円は13.50円台で取引されています。
(出所:Bloomberg)
(出所:Bloomberg)
外貨購入税の引き下げで、先週(9月28日~)後半に米ドルの利確売りが入り、トルコリラは上昇に転じました。
トルコ政府は、今年(2020年)の5月に0.2%から1%に引き上げた外貨購入税を、先週(9月28日~)再び0.2%に戻しました。
【参考記事】
●トルコ政府が外貨購入税を1%へ引き上げ! トルコリラは中期的に売り込まれる可能性も(5月27日、エミン・ユルマズ)
当初、外貨購入税を引き上げることで、トルコ国民の米ドル買いに歯止めがかかると期待されていました。しかし、実際は米ドル買いの勢いは止まらず、外貨購入税が高いため、米ドルを保有している国民は、米ドル/トルコリラが上昇しても売らないという現象が起きてしまいました。
外貨購入税が下がったことで米ドル/トルコリラの流動性が増え、こまめな利確売りも入るため、トルコリラの急落リスクは少なくなったと考えます。
(出所:Bloomberg)
■アルメニアとアゼルバイジャンの戦闘が激化
前回のコラムで解説した、アルメニアとアゼルバイジャンの戦闘は激化しています。
【参考記事】
●トルコ中銀、利上げでもトルコリラ/円は13.50円割れ。覇権争いでまた代理戦争!?(9月30日、エミン・ユルマズ)
軍事衝突は領土問題になっている地域だけではなく、両国全土に広がるステージにきています。週末に、アゼルバイジャンで人口が2番目に多い都市ギャンジャが、アルメニアのミサイル攻撃を受け、民間人にも犠牲が出ました。
アルメニアは、トルコがアゼルバイジャンに武器と兵士を提供しているとして痛烈に批判していますが、トルコ政府は、これらの主張を否定しています。
アルメニアが、直接、トルコに軍事攻撃を行う可能性は低いですが、そうなった場合、トルコは報復する可能性が高く、予断を許さない状況です。
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