■過去最悪の米財政赤字で静かに米ドル安が進行
米大統領選挙が注目を集める中、中期においては、静かに米ドル安が進行するのではないかと考えている参加者も多数いるようです。
こうした参加者が注目している材料のひとつが、「過去最悪」となった米国の財政赤字。
アメリカ「過去最悪」財政赤字が他の先進国より気になる理由。IMF「財政報告」が示すドルの行く先
筆者はこの「ドルの過剰感」(=財政出動などでドルが市場に過剰供給されている状況)こそが為替相場の潮流を規定しているとみており、足もとには米連邦準備制度理事会(FRB)が政策的に金利上昇を抑え込む状況もあることから、ドルは買えない通貨だと考えてきた。その基本認識は当面変わりそうにない。
出所:Business Insider
これは、みずほ銀行の唐鎌大輔さんの記事を一部抜粋したものですが、個人的にも同感。
米国の財政赤字が「過去最悪」となり、リーマンショック時の2倍に膨らんでいるわけですので、トランプ氏、バイデン氏のどちらが大統領になっても、現在の金融緩和が長期化することは避けられない。大きな流れは、米ドル安で変わらないと想定しています。
(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 週足)
■米ドル/円は104円決壊すれば、100円に向けた動きに
前回のコラムでは、米ドル安の対象通貨ペアとしてユーロ/米ドルを挙げましたが、今回は米ドル/円をピックアップしたいと思います。
【参考記事】
●米大統領選挙後も、ドル安継続の可能性。ユーロ/米ドルは中期的に1.30ドル予測も(10月22日、西原宏一)
米ドル/円の注目レベルは、マジノ線である104.00円。
米ドル/円の104.00円は、極めて強固なサポートです。そのマジノ線が今年(2020年)3月9日(月)に決壊すると、一気に101.19円まで急落。
ところが、米ドル需給の圧迫により、わずか1日で米ドル/円は104円台を回復し、一気に111円台まで暴力的に急騰しています。その後、7カ月間、一度も104.00円を割り込んでいません。
(出所:IG証券)
特に強烈な動きを見せたのが、9月21日(月)。
米ドル/円は久しぶりに104.00円の安値に到達するも、欧州時間になると本邦からまとまった米ドル買いが投入され、あっという間に104円台後半へ反発。
その後の米ドル/円は、104.00~106.00円の狭いレンジに封じ込められています。
本稿執筆時点でも、104.00円には本邦機関投資家がまとまった米ドル買いを置いていると言われており、104円台ミドルで下げ渋っている状況です。
一方、他通貨に目を向けると、3月以降、豪ドルを筆頭に主要通貨では粛々と米ドル安が進行しています。
(出所:IG証券)
そのため、米ドル/円のみが米ドル安を封じこめるのは難しく、本邦勢も米大統領選挙を挟んでまで、執拗に米ドル買い注文を出し続けることは考えにくいことから、米大統領選挙後、米ドル/円でも米ドル安が進みやすくなるのではないかと想定しています。
米国の「過去最悪の財政赤字」により、米大統領選挙の結果に関わらず米ドル安が続く可能性が高まっています。米ドル/円の104.00円が決壊すれば、100円へと米ドル安が進行する可能性が濃厚。
(出所:IG証券)
米大統領選挙を挟んでボラティリティの高まりが指摘されている米ドル/円の行方に注目です。
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