■トリプルブルーでリスクオンという考え方は本当か?
みなさん、こんにちは。
本稿を執筆しているのが、10月29日(木)。
つまり、1週間後(11月5日)に当コラムを公開するときは、今年(2020年)最大のイベントである米大統領選挙の結果が出ているということになります。
そこで、今回はもう一度、米大統領選挙の結果によってマーケットがどう動くのかを考察します。
まず、10月初旬ごろから拡大してきた「トリプルブルーで、リスクオンの株高になる」という考え方。
(※「トリプルブルー」とは、バイデン氏が大統領選挙で勝利し、上下両院とも民主党が制すること。民主党のシンボルカラーがブルーのため、トリプルブルーと呼ばれている)
基本的には、減税公約のトランプ氏と増税公約のバイデン氏を比較すると、トランプ氏勝利でリスクオン、バイデン氏勝利でリスクオフとなるのは当然です。
しかし、バイデン氏が勝利し、上下両院とも民主党が勝利すれば、民主党案の大規模追加経済対策への期待が高まります。
そこで、トリプルブルーでも株高という考え方が増えてきている――というか、そういう考え方を浸透させようとしているメディアの報道が増えてきました。

バイデン氏が勝利し、かつ上下院を民主党が取って「トリプルブルー」になった場合でも、株高になるという考え方を浸透させようとしているメディアの報道が増えてきたという (C)Scott Olson/Getty Images News
これは、米大統領選挙に向けての新しいコンセンサスであり、今月(10月)に入ってからというもの、こうした考え方が拡大してきました。
■トリプルブルーなら基本中立、トランプ再選で株高に
ただ、個人的に、この考え方は釈然としませんでした。
なぜなら、今月(10月)初旬までは、トランプ大統領が「新型コロナウイルスに感染」という報道で株は下落。そして、トランプ大統領が退院、大統領選挙の選挙戦に復帰という報道で株が買い戻されたばかり。
つまり、新しい考え方に当てはめると、トランプ氏、バイデン氏のどちらが勝利しても株高ということになります。
もしくは、トランプ氏の敗北で株売りということにもなり、これまでの考え方とは真逆になってしまうわけです。
そこで、何人かのマーケット参加者とミーティングをしたところ、メディアでは「トリプルブルー」の考え方が拡大しているような印象を受けるが、トランプ勝利で株高という考え方をしている参加者も多数いるとのこと。
たとえば、下記はJPモルガン・チェースのストラテジストの意見。
トランプ氏再選の場合、S&P500種は3900まで上昇も-JPモルガン
米大統領・議会選挙まで約1週間となった現在でも、投票結果に株式市場がどう反応するかを予測するのはほぼ不可能だが、JPモルガン・チェースのチーフ米株式ストラテジスト、ドゥブラフコ・ラコス・ブハス氏はトランプ大統領が再選を果たした場合、米国株式相場は2桁台の上昇率となる可能性があると予測する。
出所:Bloomberg
さらに同記事では「『ブルースウィープ(民主党の圧勝)』シナリオがもたらす影響は短期的にはおおむね中立だろう」とも報じられています。なぜなら、大型の景気対策やインフラ投資といった前向きな材料はあるものの、法人税の引き上げなどのネガティブな材料もあるためです。
この意見に、私もほぼ同感。
トリプルブルーであれば、基本中立。そして、先月(9月)までのコンセンサスどおり、トランプ再選であれば、米国株買いでリスクオンという流れになるのではないでしょうか?
■選挙結果は、トリプルレッド?パープル?トリプルブルー?
米大統領選挙に関する報道が加熱する中、同日(11月3日)に行われる連邦議会選挙の動向にも注目が集まっています。
米大統領選挙と連邦議会選挙の結果の組み合わせ(トリプルブルー、パープル、トリプルレッド)については、以下のとおりです。

この件については、「ザイ投資戦略TV」で公開中の動画でも紹介していいるので、こちらも参考に。詳しくは、以下のバナーをクリック(またはタップ)してください。
■過去最悪の米財政赤字で静かに米ドル安が進行
米大統領選挙が注目を集める中、中期においては、静かに米ドル安が進行するのではないかと考えている参加者も多数いるようです。
こうした参加者が注目している材料のひとつが、「過去最悪」となった米国の財政赤字。
アメリカ「過去最悪」財政赤字が他の先進国より気になる理由。IMF「財政報告」が示すドルの行く先
筆者はこの「ドルの過剰感」(=財政出動などでドルが市場に過剰供給されている状況)こそが為替相場の潮流を規定しているとみており、足もとには米連邦準備制度理事会(FRB)が政策的に金利上昇を抑え込む状況もあることから、ドルは買えない通貨だと考えてきた。その基本認識は当面変わりそうにない。
出所:Business Insider
これは、みずほ銀行の唐鎌大輔さんの記事を一部抜粋したものですが、個人的にも同感。
米国の財政赤字が「過去最悪」となり、リーマンショック時の2倍に膨らんでいるわけですので、トランプ氏、バイデン氏のどちらが大統領になっても、現在の金融緩和が長期化することは避けられない。大きな流れは、米ドル安で変わらないと想定しています。

(リアルタイムチャートはこちら → FXチャート&レート:米ドルVS世界の通貨 週足)
■米ドル/円は104円決壊すれば、100円に向けた動きに
前回のコラムでは、米ドル安の対象通貨ペアとしてユーロ/米ドルを挙げましたが、今回は米ドル/円をピックアップしたいと思います。
【参考記事】
●米大統領選挙後も、ドル安継続の可能性。ユーロ/米ドルは中期的に1.30ドル予測も(10月22日、西原宏一)
米ドル/円の注目レベルは、マジノ線である104.00円。
米ドル/円の104.00円は、極めて強固なサポートです。そのマジノ線が今年(2020年)3月9日(月)に決壊すると、一気に101.19円まで急落。
ところが、米ドル需給の圧迫により、わずか1日で米ドル/円は104円台を回復し、一気に111円台まで暴力的に急騰しています。その後、7カ月間、一度も104.00円を割り込んでいません。

(出所:IG証券)
特に強烈な動きを見せたのが、9月21日(月)。
米ドル/円は久しぶりに104.00円の安値に到達するも、欧州時間になると本邦からまとまった米ドル買いが投入され、あっという間に104円台後半へ反発。
その後の米ドル/円は、104.00~106.00円の狭いレンジに封じ込められています。
本稿執筆時点でも、104.00円には本邦機関投資家がまとまった米ドル買いを置いていると言われており、104円台ミドルで下げ渋っている状況です。
一方、他通貨に目を向けると、3月以降、豪ドルを筆頭に主要通貨では粛々と米ドル安が進行しています。

(出所:IG証券)
そのため、米ドル/円のみが米ドル安を封じこめるのは難しく、本邦勢も米大統領選挙を挟んでまで、執拗に米ドル買い注文を出し続けることは考えにくいことから、米大統領選挙後、米ドル/円でも米ドル安が進みやすくなるのではないかと想定しています。
米国の「過去最悪の財政赤字」により、米大統領選挙の結果に関わらず米ドル安が続く可能性が高まっています。米ドル/円の104.00円が決壊すれば、100円へと米ドル安が進行する可能性が濃厚。

(出所:IG証券)
米大統領選挙を挟んでボラティリティの高まりが指摘されている米ドル/円の行方に注目です。
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