■リスク選好で米ドル安。ユーロ/米ドルは1.2177ドルへ
新型コロナウイルスのワクチンの実用化が近いことや、米国で9080億ドル規模の追加経済対策案が議会超党派から出たとの報道もあり、リスク選好となって株式は上昇。為替市場では、米ドル安へ推移しました。
【参考記事】
●じわじわとした推移で長期的に米ドル安へ。年末に向けたリスク選好の動きにも期待!(11月10日、バカラ村)
(出所:TradingView)
ユーロ/米ドルも、1.20ドルのレジスタンスを超えて、1.2177ドルまで上昇しました。
【参考記事】
●ユーロ/米ドル、1.1600ドルで底をつけた! まず1.20ドル、長期的には1.24ドルも期待(11月17日、バカラ村)
(出所:TradingView)
■ラガルド総裁、ユーロ高を牽制するか?
今週(12月7日~)は、欧州を中心に重要イベントが多くあります。
10日(木)にECB(欧州中央銀行)理事会があり、10日(木)~11日(金)にはEU(欧州連合)首脳会議があります。そして、ブレグジット(英国のEU離脱)交渉も大詰めを迎えています。
【参考記事】
●今週は、米ドル高が進む可能性もありそう。EUサミットやECB理事会は見逃せない(12月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
●ブレグジット=英国のEU離脱とは? 欧州連合離脱の経緯、離脱までの過程を解説
まず、ECB理事会では、政策金利の変更はないと考えていますが、PEPP(パンデミック緊急購入プログラム)の1年延長や、5000億ユーロの購入枠増額などが予想されています。
そして、ラガルドECB総裁の会見も重要となります。ユーロ/米ドルが、9月に1.20ドルをつけたとき、ECB高官からユーロ高けん制発言が出ていたこともあって、今回、ラガルドECB総裁から、けん制発言が出るのか注目されるところです。
(出所:TradingView)
質疑応答のときに、今のユーロの水準に関しての質問が出てくると思いますので、そこで懸念を示せば、ユーロは調整の動きになると思います。
ラガルドECB総裁が現在のユーロの水準に懸念を示せば、ユーロは調整の動きになりそうだとバカラ村氏は予想している。ラガルドECB総裁の記者会見は、日本時間12月10日(木)22時30分から予定されている (C)Visual China Group/Getty Images
■移行期間の延期はなし。合意・合意なしの二択か
ただ、今週(12月7日~)の最大の注目は、ブレグジット交渉だと思います。離脱後の移行期間終了が今月(12月)末となるため、最終局面に入っています。
【参考記事】
●注目はブレグジット交渉! FTAの協議合意なら英ポンド/米ドルは1.34ドル台到達か(10月13日、バカラ村)
メイ前英首相のときに離脱期限の延期がありましたが、今回は、移行期間の延期はないと思いますので、合意、もしくは合意なしのどちらかになると思います。
協議の期限に関しては、何度も延びてきています。当初、ジョンソン英首相が決めた交渉期限は10月でしたが、それが11月となり、今は12月10日(木)のEU首脳会議まで、となっています。
当初、交渉期限を10月としていたジョンソン英首相。現在ではEU首脳会議が開催される12月10日(木)がタイムリミットとみられている (C)Justin Sullivan/Getty Images
そして、現在も協議が毎日、続いています。ただ、物別れとはならず、今も協議を続けている、ということは、英国側もEU側も合意にたどりつきたいのだと思います。
英国側からは、合意がないまま移行期間が終了してもいいという発言が何度も出てきていますが、それでも協議を継続しているということは、できることなら合意したいという意思の表れではないかと思います。
合意したいが、少しでも良い条件を引き出すために要求を主張し、それが平行線となり、チキンレースが続いている、という状態だと思います。
■12月下旬まで協議延長の可能性も
多くの項目では合意されていますが、平等な競争条件とガバナンスと漁業権の3分野では溝が埋まらず、この部分の歩み寄りがないため、いつまで経っても協議が続いています。
今は、協議の期限はEU首脳会議の12月10日(木)まで、と言われていますが、何度も延びてきていることもあって、今月(12月)下旬ぐらいまで延長される可能性もあるかもしれません。
そのときは、年末の移行期間終了が近くなることもあって、時間が経つにつれて合意がないまま移行期間が終了する懸念が高くなり、英ポンドは下落してくることになります。
■ブレグジット交渉が金融市場全体に影響を与えそう
合意する可能性の方が高いと思いますので、英ポンドは上昇すると思いますが、市場予想も合意するという予想が多いこともあり、実際に合意したとしても、上昇はあまり続かないように思います。
(出所:TradingView)
反対に、合意がないまま移行期間が終了となれば、市場予想と違うため、英ポンドの下げは大きく、英ポンド/円では131円のサポート辺りまで下がるのではないかと思います。
(出所:TradingView)
そして、その後も長期的に、英ポンドは下げが続く可能性があると思います。
目先の市場の材料としては、米追加経済対策、ECB理事会、EU首脳会議、FOMC(米連邦公開市場委員会)などがありますが、4年間続いたブレグジット交渉が大詰めを迎えていることもあり、この協議の結果が金融市場全体に影響を与えるのではないかと思います。
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