■トランプ大統領の言動に、金融市場は右往左往
トランプ大統領の行動や発言によって、金融市場は動いています。
10月2日(金)は、トランプ大統領が新型コロナウイルスに感染したことでリスク回避へと推移しました。その後、6日(火)にはトランプ大統領が、「民主党との追加経済対策の協議を、米大統領選後まで停止する」としたことで、またリスク回避に推移し、株安・米ドル高へ。
ユーロ/米ドルは、1.1725ドルまで下がり、豪ドル/米ドルも、0.7096ドルまで下がりました。
(出所:TradingView)
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そして、7日(水)にはトランプ大統領が、「航空企業や中小企業への給与支援をすぐに承認すべき」と発言したことで、リスク選好へ推移しています。
【参考記事】
●米大統領選とは? 制度のしくみや特徴、米ドルなどの為替相場や株価への影響を解説
■経済対策期待やトリプルブルーの可能性でリスクオン
経済対策案では、家計への1200ドルの給付金も期待されており、それが株式市場へ流れるとの期待もあって、NYダウなどは堅調に推移しています。
(出所:TradingView)
また、米大統領選でバイデン氏が優勢ということや、トリプルブルー(※)の可能性があるということも、リスク選好の材料となっています。
(※編集部注:「トリプルブルー」とは、民主党の米大統領が就任し、民主党が上院、下院の議席の過半数を占める状態のこと。民主党のシンボルカラーがブルー(青)のため、このように呼ばれる。2020年11月3日の米大統領選一般投票で民主党候補のバイデン氏が勝利し、同日に行われる上院選で民主党が過半数の議席を獲得すれば、すでに過半数の議席を占めている下院とあわせて、トリプルブルーとなる)
■乱高下しながらも、流れとしてはリスク選好か
米大統領選まで、あと3週間となり、トランプ大統領の発言などが出てきやすく、金融市場は乱高下しやすい状況です。
ただ、10月15日(木)に予定されていた、大統領候補者による第2回目のテレビ討論会は、中止となっています。
米大統領選までは、リスクを取りにくい状況が続くかと考えていましたが、市場参加者は、バイデン氏が勝利しても株高だと考え始めていることもあって、まだ、しばらくは乱高下しながらも、流れとしてはリスク選好の動きとなるように思います。
【参考記事】
●米大統領選が終われば、リスク選好に期待できる! 今の米ドル高は短期的な動きに(9月29日、バカラ村)
●米大統領選、トリプルブルーなら増税を掲げるバイデン氏勝利でも株高・円安に!(10月8日、西原宏一)
●米大統領選で「増税」掲げるバイデン氏が当選しても、中長期では株価にポジティブか(10月8日、志摩力男)
市場参加者は増税を公約に掲げるバイデン民主党候補が勝利しても、株高だと考えはじめていることもあり、流れとしてはリスク選好の動きになるとバカラ村氏は予想している (C)Scott Olson/Getty Images News
■英国とEUの交渉、合意する可能性の方が高い
今週(10月12日~)は、15日(木)に、ジョンソン英首相が決めた、EU(欧州連合)とのFTA(自由貿易協定)などに関する協議の妥結期限がきます。
ジョンソン英首相は、それ以降は交渉をしないとしていますが、EU側は、それまでに交渉が終わるとは考えておらず、今月末も交渉が続くとしています。
英国もEUも、新型コロナウイルスの影響で景気が悪く、ここで合意なしとなれば、さらに景気が悪くなるため、合意する可能性の方が高いのではないかと思います。
今週、10月15日に、ジョンソン英首相が決めた協議の妥結期限が到来する。バカラ村氏は、合意がなければさらに景気が悪くなるため、合意する可能性の方が高いと予想 (C)Justin Sullivan/Getty Images
第3四半期(7月~9月)の経済指標は、予想よりも良いものが多くありましたが、ロックダウン(=都市封鎖)を解除した反動で良かった部分もあり、今後、発表される第4四半期(10月~12月)の経済指標では、悪いものが出てきやすいのではないかと思います。
■市場は楽観的。英ポンド/米ドルはレジスタンス超え
英タイムズ紙が、10月15日(木)までにFTAの協議が合意できなかったとしても、ミニ合意を目指し、11月以降も協議を続けると報じていることもあって、何らかの合意はするのではないかと思います。
協議が不調になっているとの報道も出てきていますが、英ポンド/米ドルは、1.3000ドルにレジスタンスがあったものの、それも超えてきています。
(出所:TradingView)
市場参加者も、楽観的に考え始めているように思います。
【参考記事】
●英ポンドは、どう動く!? ブレグジット移行期間終了に向けた予想シナリオとは?(9月23日、志摩力男)
■ユーロ/米ドルは、買う状況でも売る状況でもない
ユーロ/米ドルは、IMM(国際通貨先物市場)のポジション動向では、投機筋の米ドルに対するユーロのポジションが、まだ買い越しに偏った状態が続いていますが、1.1830ドルまで上昇しました。
【参考記事】
●ユーロ/米ドル、1.18ドル台に定着するかが注目。短い時間足が崩れれば売り増しで!(10月6日、バカラ村)
(詳しくはこちら → 経済指標/金利:シカゴIMM通貨先物ポジションの推移)
ユーロ高懸念の発言が、ECB(欧州中央銀行)関係者から出てきているため、ユーロ/米ドルが1.20ドルを超えるのは、まだ難しいと考えていますが、リスク選好の動きから米ドル安となっているため、想定したよりも強い推移をしています。
(出所:TradingView)
買うような状況ではないと考えていますが、米ドルも弱いため、ユーロ/米ドルを売るような状況でもないと考えています。
■英ポンド/米ドル、合意なら1.34ドル台到達も
市場の注目材料としては、追加経済対策を含めた米大統領選と、英国のブレグジット(英国のEU離脱)交渉になります。
【参考記事】
●ブレグジット=英国のEU離脱とは? 欧州連合離脱の経緯、離脱までの過程を解説
英ポンドの方向性は、ジョンソン英首相の交渉次第になります。
英ポンド/米ドルは、ニュースヘッドラインで100~200pipsほど簡単に急落しますが、安値を切り上げてきていることもあり、ニュースヘッドラインで下がったところを買ってみるのも、おもしろいのではないかと思います。
(出所:TradingView)
市場は、楽観的になりつつあるため、もし、合意できないとなれば、英ポンドは急落することになりますが、チャートは強くなってきていることもあり、合意できれば1.34ドル台のレジスタンスにも、到達するのではないかと思います。
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