■トルコCPIは、予想を大きく上回る結果に
先週(11月30日~)発表されたトルコの11月のCPI(消費者物価指数)は、プラス14.03%(前年比)となりました。市場予想はプラス12.70%でしたので、市場の予想をかなり上回った結果です。CPIは前月比でもプラス2.3%となり、赤信号を出しています。
(出所:各種データを基にザイFX!編集部にて作成)
(出所:各種データを基にザイFX!編集部にて作成)
特に、食料品価格が前年比でプラス21.08%となっているのは、国民生活が、かなり苦しくなっていることを示しています。
■8月以降のトルコリラ急落でインフレ率上昇が加速
8月以降のトルコリラの急落によって、インフレ率の上昇が加速したようです。足元で原油価格も上昇していて、トルコの高インフレ率トレンドは、今後も続く可能性が高いと考えます。
(出所:IG証券)
トルコ中銀は、直近で2020年末のインフレ率予想を8.9%から12.1%に引き上げていますが、トルコ統計局のインフレ率計算は相当控え目であり、実質インフレ率は30%近くではないかと指摘されています。
■EUサミットでトルコに対する経済制裁が発動される!?
マクロ指標の悪化が続いている一方で、トルコリラにとってもっとも重要なイベントは、今週(12月7日~)行われるEU(欧州連合)首脳会議です。
東地中海におけるトルコの油田調査をめぐって、EU加盟国のギリシャやフランスは大反発していて、今週(12月7日~)のサミットでトルコに対する経済制裁が発動されるのではないかと懸念されています。特にフランスは、トルコとリビアでも対立していて、対トルコ制裁を強く望んでいます。
【参考記事】
●トルコ中銀は次の会合で利上げに踏み切る必要あり! 米大統領選がリラ相場に影響!?(9月2日、エミン・ユルマズ)
トルコへの経済制裁は、今までも度々話題に上がりましたが、ドイツの努力で制裁の実施が回避されてきました。
写真はエルドアン大統領とメルケル首相。トルコへの経済制裁はドイツの努力で回避されてきたが… (C)Bloomberg/Getty Images
しかし、そのドイツもメルケル首相は残り9カ月で任期を終えることが決まっていて、メルケル首相もさすがに、今回ばかりはトルコを庇うことが難しいかもしれません。
エルドアン大統領との良好な関係を維持していた米国のトランプ政権が1月になくなって、代わりにエルドアン政権に批判的なバイデン政権が誕生することもトルコの立場を弱体化させています。
写真はG20大阪サミットで会談するエルドアン大統領とトランプ大統領。1月にトランプ政権が終わり、バイデン政権が誕生することもトルコの立場を弱体化させているという (C)Bloomberg/Getty Images
直近で欧米に対して対話を呼びかける演説が多くなっているのは、エルドアン大統領が、このような政治的な背景をよく理解しているからだと思います。
■新型コロナワクチン期待で、トルコリラも落ち着いた動きに
今週(12月7日~)のトルコリラですが、対米ドル・対円で大きな動きはなく、安定しています。
米ドル/トルコリラは7.80リラ台前半、トルコリラ/円は13.30円前後で小さな動きをしています。
新型コロナウイルスのワクチン期待で、新興国資産に対するグローバル投資家の買いが続いているので、トルコリラの動きも安定してきました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
トルコ政府は、中国科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)社製のワクチンを購入することを決めていますが、このワクチンはすでにトルコとブラジルで最終段階の治験が進行していて、有効性に関する中間結果が12月半ばまでに判明する見通しです。
一方で、トルコ国内で中国ワクチンに対する懸念の声も多く、ワクチン接種がすんなり進まない可能性もあります。
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