■エルドアン大統領がトルコ中銀総裁を更迭
エルドアン大統領は、11月6日(金)にトルコ中銀のウイサル総裁を更迭しました。更迭の理由は、はっきりわかりませんが、ウイサル総裁はトルコリラの連日の下落を止めるため、大幅な利上げをする準備があると示唆したばかりでした。
利上げを示唆してから間もなく更迭されていることから、ウイサル総裁は、利上げに否定的なエルドアン大統領の怒りを買った可能性が高いと考えます。
エルドアン大統領はトルコ中銀のウイサル総裁を更迭。理由ははっきりわからないが、大幅利上げを示唆してから間もなく更迭されているので、エルドアン大統領の怒りを買った可能性が高いか。写真はエルドアン大統領 (C)Anadolu Agency/Getty Images
前任のチェティンカヤ元総裁も同じく利上げを強く望んでいたことが原因で更迭されているからです。後任には、アーバル前財務相が任命されました。
【参考記事】
●トルコ中銀総裁解任の本当の理由とは? S-400問題で米国の制裁はほぼ確実!(2019年7月10日、エミン・ユルマズ)
■アルバイラク財務相が突然辞任…その理由とは?
これだけでもすごい出来事ですが、もっとすごいことが週末に発生しました。エルドアン大統領の娘婿であるアルバイラク財務相が、11月8日(日)、突然、自身のインスタグラムで辞任を発表しました。
辞任の理由は健康問題とのことですが、詳細については書かれておらず、アルバイラク氏自身も、そのツイッターとインスタグラムのアカウントを削除。マスメディアにも姿を見せていません。
トルコメディアは、政府の確認が取れなかったため、当初、このニュースをほぼ無視していましたが、週が明けてから辞任が間違いではないことが確認され、後任にはエルバン元副首相が任命されました。
トルコメディアによると、アルバイラク財務相が突然辞任したのは、エルドアン大統領が、彼に相談しないでトルコ中銀の総裁を代えたことです。
ウイサル総裁の後任であるアーバル氏とアルバイラク氏は不仲であることから、この説は正しいと考えます。
後任のエルバン氏は、特に経済畑の出身ではありませんが、大学院の時に米国のバイデン氏と同じデラウェア大学に通っていたのが、後任に任命された最大の理由とされています。バイデン氏の当選が確実になったことを受け、トルコ政治も大きく動いたと言えます。
写真は米大統領選挙で勝利したバイデン氏。アルバイラク財務相の後任であるエルバン氏は大学院の時にバイデン氏と同じ大学に通っていて、これが任命の決め手になったようだ (C)Scott Olson/Getty Images News
■トルコリラは反発。財務相辞任で利上げ期待が高まる
今週(11月9日~)のトルコリラですが、アルバイラク財務相の辞任を受け、トルコリラは対米ドル・対円で急騰しました。
米ドル/トルコリラは、8.00リラ付近までいったん下がった後に再び反発して、8.20リラまで戻しています。対円でも13円付近まで値を戻しました。
(出所:IG証券)
(出所:IG証券)
前回のコラムで、米国大統領選挙後という今年(2020年)最大の政治イベントを通過すれば、トルコリラは、いったんリバウンドする可能性が高いことを指摘しています。
【参考記事】
●米大統領選通過と利上げでリラは反発か。トルコリラ/円は13.50円までの戻りを予想(11月4日、エミン・ユルマズ)
さらに、ここでトルコ中銀が利上げに踏み切れば、トルコリラ/円は、一気に13.50円を超えると考えます。中銀総裁の更迭で利上げ期待が遠のいてしまいましたが、アルバイラク財務相の辞任を受け、再び期待が高まっています。
エルドアン大統領は、新しい財務相と中銀総裁の信用力を高めるため、限定的な利上げに賛成しているとトルコメディアが報じています。
(出所:IG証券)
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