■モルガン・スタンレーは「ノーディール予想」へ転換
年末にはブレグジットの移行期間が終了するのですが、英国とEU(欧州連合)との協議は、いまだ合意していません。
週末に交渉継続で合意したことを受けて、今週(12月14日~)の英ポンドは上窓を開けて始まりました。
今年(2020年)も残り3週間。決着がつくのでしょうか?
(出所:TradingView)
何らかの合意をした上で来年(2021年)も交渉を継続するという見方と、年末ギリギリまで交渉して誠意を見せた上でノーディール(合意なし)にしようとしているのだという見方と、2つありますね。
ノーディール・ブレグジット(合意なき離脱)を織り込むなら、英ポンドはもっと売られると思うのですが、大きく崩れてはいません。
合意期待は、まだ根強いんでしょうね。
シティバンクやゴールドマン・サックスは「合意する」という予想を変えていませんが、モルガン・スタンレーはノーディールへと予想を変えてきました。
合意とノーディール、どちらがより反応するかというとノーディール。
国民投票時のような動きとまではいきませんが、対米ドルで1.25ドルくらいまでの下落はあるのかもしれません。
【参考記事】
●ブレグジット最終局面! 英ポンド/ドルは合意ありで1.40、合意なしで1.20ドル方向か(12月9日、志摩力男)
(出所:TradingView)
■米追加経済対策が決まらないと株式市場の重しに
ブレグジット交渉は迷走していますが、株式市場は強いですね。
手口を見ると「外国人投資家が買って、日本人が売る」という構図です。
日経平均は、11月下旬から高値圏でのもみ合いが続いています。
先週(12月7日~)のSQ(※)まではJPモルガンが2万7000円をつけさせまいとしていたようですが、SQを通過した今は抜ける可能性も出てきました。
(※編集部注:「SQ」とは日経225先物などの株価指数先物や株価指数オプションといった取引の最終決済を行なうための価格のこと)
(出所:TradingView)
市場が期待する米国の追加経済対策は、いまだ決まりません。
民主党のペロシ下院議長は、協議がクリスマスまで長引く可能性を示唆しています。
今週(12月14日~)も、まだ決まりそうもありません。
【参考記事】
●今週は、米ドル高が進む可能性もありそう。EUサミットやECB理事会は見逃せない(12月7日、西原宏一&大橋ひろこ)
米国の友人は、当分決まらないとの意見ですが、これが決着しないと株式市場の重しとなりますね。
■テスラのS&P500採用が「ターニングデー」になるか
来週月曜日(12月21日)には、テスラがS&P500に組み入れられます。
大きなイベントです。
この日が「ターニングデー」となって株式市場の調整が始まる可能性もありそうです。
【参考記事】
●株式市場の調整は、月末の今日にも始まる!? ワクチン接種開始でセル・ザ・ファクトか(11月30日、西原宏一&大橋ひろこ)
●爆上げテスラに異変!? 外国株は空売り可能? CFDなら上がっても下がってもチャンス!
●爆上げ中のテスラ株はバブルか? 本物か? CFDなら売り買い自在にテスラを取引可能!
●イーロン・マスクCEOに大麻騒動!? 株価は10%下落。テスラ株をカラ売りする方法は?
12月21日(月)、イーロン・マスク氏率いるテスラがS&P500に組み入れられる。この日が「ターニングデー」となって株式市場の調整が始まる可能性もありそうと西原氏は指摘 (C)Getty Images
インデックスファンドなどはテスラ株を購入するため、他の銘柄を売らないといけません。
そうした資金捻出売りは、今週(12月14日~)にも始まる可能性があります。要注意ですね。
今日(12月14日)からは、米国でコロナワクチンの接種が始まる予定です。
即、材料になるわけではありませんが、副作用などのニュースが出ないかどうか、いちおう頭に入れておきたいですね。
■FOMC、日銀、BOE、相次ぐ中銀会合
今週(12月14日~)は12月16日(水)にFOMC(米連邦公開市場委員会)、12月17日(木)にBOE(イングランド銀行[英国の中央銀行])のMPC(英金融政策委員会)、12月18日(金)に日銀金融政策決定会合と政策発表が続きます。
最大の注目は、FOMCでフォワードガイダンスの変更があるのかどうか。
追加経済対策が決まらない中で、動きにくいのはたしかですね。
FOMCの直前には米小売売上高が発表され、マイナスになるとの予想も出ています。
個人消費の弱さが意識されると、追加経済対策への催促で米金利が上昇、株が売られる一方、金利につられて米ドルが買われる、なんてことがあるかも。
BOEのMPCはブレグジットが決まらない中、動けないでしょうし、日銀会合も大きな変更はないでしょう。
日銀会合では、コロナ対策として導入した企業の資金繰り支援が来年(2021年)3月に期限切れとなるため、延長するようですが、市場への影響はなさそうですね。
■鉄鉱石の暴騰、背景に中国の戦争準備!?
コモディティ市場では、WTI原油が47ドル台へ上昇し、また、鉄鉱石は暴騰しており、先週末まで12営業日連続の上昇です。
(出所:TradingView)
(出所:TradingView)
原油もワクチン相場。需要回復への期待が価格を支えています。
先週(12月7日~)は原油在庫が大きく増加していたにもかかわらず、下げませんでした。
注目は中国。コロナショックで原油が暴落して以降、中国からの買いが旺盛です。
鉄鉱石についても「オーストラリアでサイクロンがあり供給不安が広がった」と解説されていますが、実際には中国の爆買いなのでしょう。
中国共産党結党100周年を来年(2021年)に控え、インフラ投資を活発化させているとの指摘もありますし、資源の大量購入は戦争の準備ではないか、との指摘も…。
実際に戦争をしなくとも、交渉のカードとしてファイティングポーズを示したいのかもしれません。
いずれにせよ、以前から指摘しているように鉄鉱石は豪ドルと相関性が強い。
鉄鉱石の高騰とともに、豪ドルも上昇しています。
豪ドルは、引き続き、押し目買いスタンスでいいのでしょう。
【参考記事】
●ドル/円は年内100円割れでもおかしくない。株価反落で、あっさり下落するイメージ(7月13日、西原宏一&大橋ひろこ)
(出所:TradingView)
■妙味がありそうな英ポンド。リスク・リワード的に面白そう
その他の通貨は、いかがですか?
妙味がありそうなのは、英ポンド。
ノーディールで英ポンド/米ドルが1.25ドルまで落ちるなら、800ポイントの値幅が期待できる。
合意となっても、たいして上がらないでしょうから、リスク・リワード的には面白いかもしれません。
(出所:TradingView)
(構成/ミドルマン・高城泰)
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